零売薬局の地位確認求める~訴訟初公判で原告が訴え 東京地裁

医薬品医療機器等法で指定された処方箋医薬品以外の医療用医薬品の販売(零売)を厚生労働省通知によって制限するのは違法として、零売薬局事業者3社が原告となり国に地位確認と国家賠償請求を求める訴訟の初公判が16日、東京地方裁判所で開かれた。意見陳述で原告は「零売制度があいまいな通知によって実質的に封じ込められ、薬剤師の職能が奪われている現状を問いたい」などと主張し、やむを得ず販売を行わざるを得ない場合でなくとも零売を行える地位の確認を求めた。また、訴訟代理人弁護士は初公判が訴訟提起から約4カ月間を要し、改正薬機法成立から2日後の開催時期になったことに対し「極めて遺憾」と批判した。
今回の請求では、▽処方箋の交付をされていない者に対し、やむを得ず販売を行わざるを得ない場合でなくとも、医師の受診勧奨を行うことなく、処方箋薬品以外の医療用医薬品の広告を行うことができる地位を確認▽医療用医薬品以外の医薬品の広告を行うことができる地位を確認――などを求めている。
また、国に対しては、原告の長澤薬品に64万9399円、まゆみ薬品に34万3761円、グランドヘルス(金額非開示)への支払いを求めている。
長澤薬品代表取締役の長澤育弘氏は、「零売専門薬局を営んでいたが、行政指導と医薬品卸業者との取引遮断で廃業に追い込まれた」と吐露。「薬剤師は薬を渡すだけでなく、服薬指導を通じて地域医療を支える存在で、零売は病院に行けない人の重要な受け皿。行政通知一つで排除するような動きは国民の不利益につながる」と訴えた。
まゆみ薬局代表取締役の山下吉彦氏も「現行の零売制度の実績が十分に評価されないまま、通知一つで封じ込められている状況は制度と現場の信頼関係を損なうもの」と主張。通知によって零売を制限する不当性を指摘した。
訴訟代理人弁護士の西浦善彦氏は、「薬機法の趣旨を逸脱しており、法令の根拠を欠く行政解釈・通達であることが明らか。広告表現の制限についても薬機法は虚偽・誇大広告等を禁じているに過ぎず、表現内容を細かく規制することは薬機法の規制範囲を超えており、日本国憲法が定める表現の自由を侵害する違憲・違法な規制」と国の対応を厳しく非難した。
第1回口頭弁論が訴訟提起日から約4カ月後と遅れたことに対しては、「訴訟提起後、薬機法改正案が提出され4カ月間のうちに零売規制を盛り込んだ改正薬機法が成立してしまった。国は改正法成立が見込まれる時期を見越して期日の指定を要請したとしか考えざるを得ない」と疑問視。裁判官に迅速な訴訟進行を要請した。
初公判後の記者会見では原告とその弁護団から「国が時間稼ぎをしているのではないか」との声が飛んだ。西浦氏は「訴訟提起から状況が全く変わった。4カ月はさすがに遅すぎる。薬機法が施行されれば請求が却下されかねない。(法が施行されるまでの間の)1年以内で決着を付けたい」と強調。薬機法が施行となった場合でも「憲法違反での主張を継続していく」とした。
第2回公判は7月30日に行われる。
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出典:株式会社薬事日報社
薬+読 編集部からのコメント
薬機法で指定された処方箋医薬品以外の医療用医薬品の販売(零売)を厚生労働省通知によって制限するのは違法として、零売薬局事業者3社が原告となって国に地位確認と国家賠償請求を求める訴訟の初公判が、東京地方裁判所で開かれました。