西洋医学とは異なる理論で処方される漢方薬。患者さんから漢方薬について聞かれて、困った経験のある薬剤師さんもいるのでは? このコラムでは、薬剤師・国際中医師である中垣亜希子先生に中医学を基本から解説していただきます。基礎を学んで、漢方に強くなりましょう!
第20回 基本から学ぼう! 中医学を知るおすすめ本~初学者向け~
漢方や薬膳に興味はあるけれど、なにから始めればいいのやら……と悩んでいる方におすすめの中医学の本をご紹介します。中医学は「中医基礎理論→診断学→中薬学→方剤学→中医内科学」の順に学び進めます。ですから、まずは中医基礎理論の本を読んで、土台を作られることがおすすめです。
ということで、中医基礎理論の本から、初学者向けの読みやすい3冊、少し本格派の2冊、手元にあると便利な中医学用語辞典を2冊、それぞれご説明します。今回は初学者向けの3冊です。
<初学者向けの読みやすい3冊>
- ①『中医学ってなんだろう 1 人間のしくみ』東洋学術出版社/小金井信宏 (著)(5,184円+税)
- ②『やさしい中医学入門』東洋学術出版社/関口善太 (著)(2,600円+税)
- ③『オールカラー版 基本としくみがよくわかる東洋医学の教科書』ナツメ社/平馬直樹(監修)・浅川要(監修)・辰巳洋(監修)(1,500円+税)
①②は難しい中医学用語の羅列などがなく、とても読みやすい内容となっています。中医学を学ぶ上で、中医学の専門用語の理解はどうしても避けて通れない道ですが、この2冊は専門用語をきちんとかみ砕いた上でとてもわかりやすく説明してくれます。用語の意味がわかれば、あとは繰り返しその用語を見聞きして話し、ただひたすら慣れるのみ!です。
特に①『中医学ってなんだろう 1 人間のしくみ』は、冒頭に「中医学を学ぶとき、“時代の壁”と“文化の壁”の2つの壁を越えなければならない」と書いてあるように、時代や文化による感覚の違いについてをところどころで教えてくれます。「ちょうど今、それをギモンに思っていた!」という、誰に聞けばいいのか、どう調べればいいのかわからないようなモヤモヤした違和感について、ドンピシャな答えをもらえる本です。
“2つの壁”を意識せずに中医学を勉強し続けてもなかなか身につかないため、初めの段階でこの“2つの壁”を意識することはとても大切です。初学者だけでなく、ひと通り基礎理論を学んだ人にとっても、新しい発見があるでしょう。価格は少し高めですが、ぜひ手に取って読んでみてください。
②『やさしい中医学入門』は図解やまとめの表が入り、シンプルかつわかりやすくまとまった一冊です。繰り返し読んで理解し暗記するのに持ち歩きやすいサイズ。いつもバッグに忍ばせておくのに便利です! ただし陰陽学説や五行学説のような哲学的な部分が抜けていますので、その点については①『中医学ってなんだろう 1 人間のしくみ』や、次の項でお話しする④⑤などの他の本を読む必要がありそうです。
③『オールカラー版 基本としくみがよくわかる東洋医学の教科書』は、どのページもオールカラーのイラストや図で解説されていて、読みやすい本です。基礎理論以外にも診断学・中薬学・方剤学・症例(弁証論治)などが簡単に取り上げられ、さらに中薬・薬膳・鍼灸・推拿・気功など中医学全般にわたって解説されています。コンパクトな本ですが、中医学の全体像がイメージできる一冊です。
中医学は独特の考え方や聞きなれない言葉が多く登場しますが、繰り返し読み込んでいくことで、だんだんと自分のものになっていきます。ぜひ1冊手にとって、時間のあるときに少しずつ読んでみてくださいね。