ブックレビュー 更新日:2021.01.20公開日:2017.09.14 ブックレビュー

薬剤師が検査値を読み解き、業務に活かすために読んでおきたい一冊

【書籍概要】
薬剤師が患者さんの検査値をどのように読み解き、業務に活かしていけばよいかを解説。血算や腎機能検査、尿検査、炎症反応といった代表的な検査について、各検査項目に現れる異常や疑われる病態といった情報が簡潔にまとめられています。症例をもとにした実践的な内容となっており、チーム医療や薬局業務での検査値の活用方法を知りたい人におすすめです。

病院におけるチーム医療では、相互作用のある薬や不要・不適切な薬の変更および中止について、薬剤師が医師とのディスカッションを求められる場面も少なくありません。また、処方箋用紙に検査値を表示する取り組みが全国的に広まりつつあることから、薬局薬剤師が患者の処方について、副作用が出ていないかをモニターする役割を求められるケースも増えています。

 

本書は、そのような医療現場において、薬剤師が検査値について理解し、そこで得た知識をみずからの業務に反映させるためのガイドブックです。

 

代表的な検査項目について、まず、代表的な基準値と検査の目的、検査結果の読み方を提示し、その後、症例から具体的な検査値の活用方法について紹介しています。各症例は、「その検査値から何が読み取れるか」「どのような病態が考えられるか」「チェックするべき症状は何か」「それ以外に考えられる疾患は何か」「現在の処方について、どのような対応をすればよいのか」といった事項が簡潔にまとめられており、さらに症例内で取り上げられている病態についての基礎知識も掲載されているなど、現場で困ったときにもすぐに活用できる構成となっています。

 

 

また、後半では、『チーム医療の一員として必要なコミュニケーション』と題し、患者や他のメディカルスタッフとの関係づくりについての提案が行われています。チーム医療においては、従来のような必要最低限の情報交換だけを行うスタイルではなく、他職種のスタッフ同士がそれぞれの立場から十分な情報交換や意見交換を行い、互いを補完しあって医療を実践する「スキルミックス型チーム医療」が理想であると本書は解きます。

 

さらに、同一患者におおむね5剤以上の処方が行われる「ポリファーマシー」や、複数の薬剤が不適切に処方される「PIMs」について、それらの起こる背景や、問題のあるポリファーマシーを見つけた場合の介入方法も紹介されているなど、薬剤師が日々の業務で直面する問題を解決するヒントが多数盛り込まれています。

 

チーム医療での関わり方に悩んでいるときや、調剤薬局での業務において、処方箋に掲載された検査値を活用していきたいと考えているときに役立つ1冊です。