薬剤師のスキルアップ 公開日:2025.05.29 薬剤師のスキルアップ

【例文付き】ドラッグストアの志望動機の書き方とは?就職・転職を成功させるポイント

文:篠原奨規(薬剤師)

「ドラッグストアで働いてみたい」という意思はあるものの、いざ志望動機を書くとなるとなかなかよい案が浮かばないものです。ありきたりな志望動機では埋もれてしまう可能性がありますが、だからといって、本音ではないことを書いてしまうのは好ましくありません。ドラッグストアへの就職・転職を成功させるためには、どのような内容の志望動機が望ましいのでしょうか。本記事では、ドラッグストアでの勤務経験やマネジメント経験を持つ現役薬剤師が、ドラッグストアの求人に応募する際の志望動機について、好印象を与えるための履歴書の書き方や面接での答え方を詳しく紹介します。

1.ドラッグストアとは?

ドラッグストアとは、医薬品や化粧品を中心に、日用品や食品など幅広い商品を取り扱う業態の店舗です。健康と美容のサポートを目的とし、セルフメディケーションを推進する場としての役割も担っています。
 
薬剤師が常駐し、一般用医薬品(OTC医薬品)の販売や服薬相談を行うドラッグストアも増えており、医療と生活を支える重要なインフラとなっています。
 
近年、ドラッグストア業界は成長を続けており、商業動態統計調査によると、2022年から2024年の間に毎年5%以上の売上増加が見られました。特に、調剤薬局併設型の店舗が増えていることもあり、調剤医薬品の売上も10%前後の伸びが続いています。
 
また、ドラッグストアは全国規模で展開する企業が多く、店舗ごとに特徴が異なる点も特徴です。調剤業務に特化した店舗、化粧品販売に力を入れている店舗、食品や生活用品の品揃えが充実している店舗などがあります。
 
薬剤師としての専門性を生かしつつ、より広い視野で活躍できる場として、ドラッグストアは今後も注目される業態の一つといえるでしょう。
 
参考:ドラッグストアとは|日本チェーンドラッグストア協会

2.ドラッグストアの仕事内容

ドラッグストアでの仕事内容は、OTC医薬品(一般用医薬品)や健康食品の販売・管理、処方箋調剤、マネジメント業務など多岐にわたります。ここからは、ドラッグストアで従事する薬剤師の仕事内容について解説します。

 

2-1.OTC医薬品(一般用医薬品)や健康食品の販売・健康相談への応対

ドラッグストアでは、OTC医薬品(一般用医薬品)や健康食品の販売と管理を担当します。OTC医薬品とは、処方箋がなくても購入できる市販薬のことです。健康に関して悩みを抱える来店者に対して、症状や持病、現在服用している薬などをヒアリングし、適切な商品を提案します。また、服用方法や使用上の注意点について説明し、安全に服用できるようアドバイスします。
 
特に、第一類医薬品や要指導医薬品は、薬剤師しか販売できません。有効性が高い反面、副作用や健康被害のリスクも比較的高いとされているためです。誤った使用によって、副作用が強く現れるリスクを避けるため、薬剤師が適正使用に関して指導を行う必要があります。

 

2-2.処方箋に基づく調剤業務

調剤併設型のドラッグストアであれば、処方箋に基づく調剤業務に携わることも可能です。医療機関から発行された処方箋に従って医薬品を調剤し、患者さん一人ひとりに適した服薬指導を実施します。また、指導した内容や服薬状況を薬歴(薬剤服用歴)に記録し、次回以降の調剤や服薬指導に役立てます。
 
さらに、在宅医療に積極的に関与する店舗も少なくありません。訪問薬剤管理指導を行い、自宅療養中の患者さんに処方薬を届けるだけでなく、服薬のサポートや生活習慣の指導も行います。ドラッグストアでは介護用品や栄養補助食品などの取り扱いも多いため、在宅医療を受ける患者さんに対し、医薬品の提供にとどまらず、生活全般を支援する提案ができることも特徴です。

 

2-3.マネジメント業務

ドラッグストアや調剤併設型の店舗では、店長や管理薬剤師などの管理職に就くと、マネジメント業務にも携わることになります。管理職としての役割は多岐にわたり、通常の薬剤師業務に加えて、店舗運営やスタッフの教育、医薬品管理、行政対応などを担当する重要なポジションです。
 
特に、売上管理は管理職の大きな業務の一つであり、販売データを分析し、売れ筋商品や季節に応じた医薬品・健康食品の仕入れを調整する働きが求められます。調剤併設型の店舗であれば、医療機関との連携推進に向けて、近隣のクリニックへの営業活動を行うケースも少なくありません。
 
また、スタッフの育成も管理職の役割の一つです。薬剤師だけでなく、登録販売者や一般スタッフに対して、OTC医薬品の販売知識や接客スキルに関する教育を行います
 
管理職としてのマネジメント業務は、単なる店舗運営にとどまらず、売上・人材・法令遵守など多方面にわたる責任を担う役割を果たさなければなりません。薬剤師としての専門知識だけでなく、リーダーシップや組織運営のスキルも求められるポジションといえるでしょう。

 
🔽 ドラッグストアで働く薬剤師の仕事内容について解説した記事はこちら


3.ドラッグストアの志望動機の書き方

志望動機を書くときは、自分のアピールポイントと接客経験、持っている資格などをうまく盛り込みましょう。また、応募先ならではの理由を明確にすることも大切です。ここからは、ドラッグストアの志望動機の書き方を解説します。

 

3-1.結論を冒頭に書く

志望動機をまとめているうちに、何を伝えたいのか曖昧になってしまうことがあります。読み手が知りたいのは結論です。冒頭に最も伝えたいことを書き、その次に理由や関連する事項を書きます
 
よりしっかりと読み手に印象づけたい場合は、最後にもう一度結論を書くのもよいでしょう。

 

〈例文〉
私が貴社を志望したのは、地域の方が気軽に健康相談できる環境をドラッグストアで作りたいからです。調剤薬局を利用する機会が少ない方も、日用品の購入を目的にドラッグストアに立ち寄られる機会があります。日々の業務の中で、地域の方に寄り添って健康相談ができるドラッグストアなら、いつでも気軽に相談できる場が作れると考えました。

 

3-2.応募先ならではの理由を明確にする

採用担当者に「どこでもいいのでは?」と思われないよう、応募先ならではの理由を記載します。応募先の強みや特徴に触れた具体的な志望動機を書くことで、応募に対する本気度が伝わりやすくなるでしょう。
 
調剤薬局や病院ではなく、なぜドラッグストアなのか、その理由をしっかり書くことが大切です。数あるドラッグストアの中でもなぜその企業、その店舗を選んだのかも欠かせません。

 

〈例文〉
貴社が専門性の高い薬剤師の育成に力を入れている点に魅力を感じ、志望いたしました。OTC医薬品の知識や接客スキルを磨ける研修制度が充実していることに加え、地域連携薬局や専門医療機関連携薬局として、地域医療に深く関わる体制を整えている点に魅力を感じています。私も薬剤師としての専門性を高め、お客さま一人ひとりに適した提案ができるよう成長し、地域社会に貢献したいと考えています。

 

3-3.薬剤師としての経験をアピールする

調剤併設店への転職を希望しているのであれば、これまでの薬剤師としての経験が重視されます。管理薬剤師や一人薬剤師の経験がある、認定薬剤師や専門薬剤師の資格があるなど、アピールできることはしっかりと伝えましょう。
 
OTCを扱うドラッグストアでは、OTCを取り扱ったり売り場を作ったりした経験も重視されることがあります。もし経験がある場合は、売り場作りによって売り上げや粗利率にどのくらい貢献できたかなど、具体的な数字を伝えるとよいでしょう。

 

〈例文〉
OTC販売も行う調剤薬局で勤務し、OTC売り場の作成に力を入れてきました。地域のお客さまから特にニーズの高いOTCをもっと目立つ位置に配置するなどの工夫をした結果、店舗全体の粗利率は2%向上し、売り上げの向上に貢献しました。

 

3-4.接客の経験があれば記入する

ドラッグストアに勤務する薬剤師の大半は、接客業務に携わります。そのため、これまでに接客の経験があるのなら履歴書にしっかりと書いておきましょう。特に近年では、薬剤師の対人業務の重要性が増しており、質の高い薬物治療を提供する上で、お客さんに対するコミュニケーション能力が求められています
 
接客スキルをアピールすることで、単なる調剤業務だけでなく、お客さんの悩みを聞き取り、寄り添える薬剤師としての活躍を期待されるでしょう。

 

〈例文〉
学生時代に4年間続けた接客のアルバイトを通じて、相手のニーズを的確に把握し、適切な対応を行うコミュニケーション能力を培ってきました。近年、対人業務の重要性が高まる中で、薬剤師にはお客さま一人ひとりの悩みを丁寧に聞き取り、寄り添う姿勢が求められていると考えています。貴社の環境でOTC販売や健康相談のスキルを磨きながら、お客さまが安心して相談できる薬剤師として貢献していきたいと考えております。

 

3-5.誤字や脱字に注意する

志望動機は履歴書の顔ともいえる大切な項目です。誤字脱字がないようにも注意しましょう。手書きで作成して修正する場合には、基本的に二重線で消したり、修正液を使ったりせずに新しい履歴書に書き直します。
 
また、現在はパソコンで履歴書を提出することも一般的になっていますので(応募先の指定がある場合は除く)、修正の手間を考慮した場合、パソコンでの作成がおすすめです。

4.ドラッグストアの志望動機の例文

ポイントごとに例文を紹介しましたが、それぞれの思いをどうつなげて志望動機にすればよいのか悩むかもしれません。ここでは、特にアピールをしたいポイントごとに、志望動機の具体例を紹介します。
 
ただし、インターネット上に掲載されている例文をそのまま使用するのはNGです。以下の例文を参考に、自分らしく志望動機をまとめてみましょう。
 
また、ここでは一般的なドラッグストアへの志望動機の例文を紹介しますが、正社員やアルバイト・パートといった勤務形態や、応募先のドラッグストアの特徴によって志望動機に盛り込むべきポイントは変わってくることに留意してください。

 

4-1.志望動機の例文① 薬剤師経験をアピール

薬剤師としてどのように貢献できるか、どのような薬剤師を目指すかを中心にアピールする例です。実際に店舗を見に行ったり、応募先が主催しているイベントに参加したりするのもおすすめです。

 

〈例文〉
私は5年間の薬局勤務の知見や経験を生かしながら、個々に合った薬を提案しお客さまの健康を守りたいと思い、貴社を志望しました。お客さまの症状を聞いて、自分で考えて薬を提案できるのはドラッグストアだけだからです。中でも貴社の地域密着型の取り組みや、スタッフの方々が相談しやすい雰囲気を大切にしている点にも共感しました。高齢化が進む中、セルフメディケーションの浸透には、薬剤師が身近な相談役となる環境作りが重要だと考えています。私もお客さまから「あの薬剤師に相談したい」と思っていただけるような存在を目指し、地域の健康を支えていきたいと考えています。

 

4-2.志望動機の例文② 売上への貢献をアピール

売上貢献やお客さま満足度を重視するドラッグストアに応募する場合は、経営改善に関する観点を盛り込むことを意識しましょう。

 

〈例文〉
私は、接客経験を生かしてお客さまを満足させる店舗作りをしたいと思い、貴社を志望しました。お客さまが望んでいることを推察するのは、決して簡単なことではありません。しかし、来店されるお客さまは常に「満足」を期待しています。どのような方でも満足していただけるような接客を通して、ドラッグストアの来客数を増やし、売り上げや粗利率などの目に見える数字で改善していくのが私の目標です。お客さまの役に立ちつつ、貴社の事業成長にも貢献し、地域を活気づけたいと考えています。

 

4-3.志望動機の例文③ 応募先への思いをアピール

応募先に魅力を感じて志望する場合は、どのような点に魅力を感じているか具体的なエピソードを書くと説得力が増します。

 

〈例文〉
私は貴社の地域活動に感銘を受け、一緒に働きたいと思い、志望しました。私は幼いころから○○町で過ごし、さまざまな方に支えられながら生きてきました。しかし、地域の過疎化に伴い人口が減少しているのが実情です。そのような状況の中、貴社はお薬相談室やウォーキング大会などを開催して地域に大きく貢献しています。私の大好きな○○町を活気づけ、ドラッグストアを地域の人々の拠りどころにしていくことが目標です。貴社での業務を通じて地域に貢献し、地元の方を支えていきたいと考えています。

5.ドラッグストアの面接でよく聞かれる志望動機に関する質問

次に、面接で志望動機を聞かれる際の対策を考えてみましょう。面接では履歴書と違い、さまざまな角度から志望動機について質問されることがあります。そのため、より深く自分の志望動機を伝えるチャンスです。
 
質問に対しては、分かりやすく、1分以内を目安に回答できるようにします。どんな角度から質問されても慌てないように、しっかり準備をしておくと安心です。ドラッグストアの志望動機に関するよくある質問としては、以下のようなものが挙げられます。

 

● なぜドラッグストアを志望するのですか?
● なぜ弊社を志望するのですか?
● 入社したらどのような仕事をしたいですか?

 

それぞれの質問に対する回答のポイントを解説します。

 

5-1.質問① なぜドラッグストアを志望するのですか?

面接においても、ほかの業種ではなくドラッグストアを選んだ理由を聞かれることがあります。
 
履歴書と同様、ドラッグストアでなければならない明確な理由を考えておきましょう。

 

5-2.質問② なぜ弊社を志望するのですか?

ドラッグストアにもさまざまな企業があります。数あるドラッグストアの中で、この企業を選んだ理由はなぜなのかを明確にし、その企業ならではの魅力や志望理由を伝えるようにします。
 
実際にその企業で働いている薬剤師の知人がいれば話を聞いてみたり、直接ドラッグストアに足を運んでみたりして、情報を集めるのもおすすめです。

 

5-3.質問③ 入社したらどのような仕事をしたいですか?

採用担当者は、この質問で入社後にどのように貢献してくれるのかを具体的に確認したいと考えています。「地域の方々が自然と集まる店舗になるよう、接客に力を入れたい」「薬局での経験を生かして、薬の専門家として健康相談に乗っていきたい」「売り上げを伸ばせるようなPOPを作成して、売り場を盛り上げたい」など、具体的な答えを考えておきましょう。
 
また、面接では、なるべくプラスの言葉に置き換えて伝えることが大切です。過去の経歴などを説明する際に、ついネガティブなことばかりを話してしまわないよう注意しましょう。
 
例えば、「なぜ転職したいのですか?」と聞かれたら、「人間関係に馴染めなくて……」「残業が多くて……」などとマイナスな面だけを答えるよりも、「新たな環境にチャレンジして、色々な人と関わりたいから」「勉強時間を確保して、キャリアアップを目指したいから」など前向きな理由も伝えられると、好印象を与えやすくなります。

6.ドラッグストアで重宝される人の特徴は?

前述のようにドラッグストアの業務は接客が中心であるため、コミュニケーションスキルや接客業務の経験は重視されます。また、OTC医薬品を扱う場面が多いため、来店者の症状や健康状態を的確に把握し、判断する力が必要です。
 
例えば、喉の痛みを訴えるお客さんが来店した場合、痛みの程度や発熱の有無、持病の有無などを詳しく聞き取った上で、市販薬の提案が適切か、それとも医療機関を受診すべきかを速やかに判断しなければなりません。
 
さらに、ドラッグストアでは短時間の会話でお客さんの悩みを解決することが求められます。そのため、専門知識を持つだけでなく、それを一般の方にも分かりやすく伝える説明力が必要です。
 
お客さんからの相談に乗るだけでなく、商品の陳列や棚卸し、POPの作成などさまざまな業務を行うため、「状況に合わせて優先順位を判断できるスキル」なども重要です。
 
アルバイトやパートなどの場合は、人手が不足している時間帯にシフトに入れるか、週に何日出勤できるかといった点も重視されるでしょう。

7.ドラッグストアへの就職・転職を成功させよう

履歴書でも面接でも、ドラッグストアへの志望動機をうまく伝えるには、なぜドラッグストアを志望したのか、なぜこの企業を選んだのかを明確にしておくことが大切です。応募先の魅力や自分との接点を振り返ったり、自分のキャリアの棚卸しをしたりするなどして、自分の経験やスキルをどのように生かしていきたいかを考えておきましょう。完成度の高い志望動機は応募先へのアピールになるだけでなく、希望する働き方を叶えることにもつながります。志望動機の内容を整理・検討し、ドラッグストアへの就職・転職を成功させましょう。

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執筆/篠原奨規

2児の父。調剤併設型ドラッグストアで勤務する現役薬剤師。薬剤師歴8年目。面薬局での勤務が長く、幅広い診療科の経験を積む。新入社員のOJT、若手社員への研修、社内薬剤師向けの勉強会にも携わる。音楽鑑賞が趣味で、月1でライブハウスに足を運ぶ。