「薬剤助手」に業務移管拡大~薬剤師のタスクシフト進む【日本病院薬剤師会】
病院薬剤部の業務を薬剤師以外のスタッフにタスクシフトする取り組みについて、21日に横浜市で開催された日本病院薬剤師会関東ブロック学術大会で議論された。病院薬剤師の増員が難しい中、薬剤師が調剤に最終的な責任を持つことを前提に、薬剤師でなくても行える内服・注射調剤の補助業務などを薬剤助手に移管し、周術期や病棟薬剤師業務など新たな業務展開を図っていることが紹介された。
医師から薬剤師に周術期や病棟における薬学的管理などのタスクシフトが進められる中、薬剤師の労力確保が大きな課題となっている。2018年4月に発出された「0402通知」では、薬剤師以外でも一部業務が可能とする範囲が示され、病院薬剤部でも非薬剤師を活用する検討が進められている。
関東労災病院薬剤部では、薬剤師39人でプロトコルに基づいた疑義照会対応や実施済み処方の代行入力など、医師の業務軽減に向けたタスクシフトに取り組んできた。
医薬品管理業務(SPD)の外部委託や薬剤助手による業務補助により、薬剤師業務の軽減に取り組んできたが、さらなるタスクシフトが必要と判断。昨年6月に障害者雇用を活用し、薬剤助手を2人から5人に増員した。
現在、外部委託しているSPDの6人が医薬品の発注や検品などを実施し、薬剤助手が内服・注射調剤の補助業務や電話対応、配薬カートへの薬剤セット、治験業務補助、化学療法業務補助を行っている。
薬剤助手による処方箋に基づく調剤補助業務の実施状況を処方箋単位で調べたところ、全体の84%に関与していた。薬剤師の満田正樹氏は、「薬剤助手に薬剤師業務をタスクシフトさせる場合は法的な根拠をきちんと確認し、最終責任として薬剤師が実施する体制を構築している」と話す。
実施済み処方の代行入力は、薬剤師から調剤助手へのタスクシフトが難しいため、今年7月からは医師の指示で医師事務作業補助者にタスクシフトすることになった。薬剤助手5人のうち、1人は医師事務作業補助者の資格を取得し、様々な職種がタスクシフトできるよう取り組んでいる。
調剤補助業務以外でも、医師や看護師などと製剤、化学療法、治験、DI業務など各業務でタスクシフトが可能な業務を幅広く検討。これらの取り組みにより薬剤師業務を軽減することができ、癌化学療法患者の外来指導や入院患者の退院時指導充実に取り組むことが可能となったという。
満田氏は「薬剤助手を増やすと薬剤師が増えないとの声もあるが、薬剤助手を増員し、タスクシフトしていく中で薬剤師の必要性が認められれば増員してもらえるのではないか」と話した。
済生会新潟病院薬剤部では、17年10月に薬剤助手を導入し、増員を図ってきた。現在はフルタイムで働く調剤助手リーダー1人と、シフト制で働く薬剤助手9人の計10人体制で発注や在庫管理、内服・注射薬のピッキングなどの業務を行っている。
薬剤師の高橋成博氏は、「薬剤師業務をタスクシフトすることで、外来服薬指導の充実や周術期の薬剤師業務を展開できるようになった」と語った。薬剤助手の増員に対する病院の考え方については、「薬剤師の増員はなかなか認められない中、薬剤部がやりたいことを経営陣にアピールし、薬剤師は難しいけれども薬剤助手を採用した」と説明した。
出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
8月21日に開催された日本病院薬剤師会関東ブロック学術大会で、病院薬剤部の業務を薬剤師以外のスタッフにタスクシフトする取り組みについて議論されました。病院薬剤師の増員が難しい中、薬剤師が調剤に最終的な責任を持つことを前提に、薬剤師でなくても行える内服・注射調剤の補助業務などを薬剤助手に移管し、周術期や病棟薬剤師業務など新たな業務展開を図っている関東労災病院や済生会新潟病院などの事例が紹介されています。