専門・認定資格の取得支援~症例報告や研究スキル教育【京都薬科大学】
京都薬科大学は、専門・認定薬剤師資格の取得を支援する社会人向けの教育に力を入れている。薬局や病院に勤める薬剤師を対象に、症例報告書作成、研究計画や実践等のコースを設けて1年間の教育を行うもので、2月に学内で開かれた今年度最後の演習(写真左)には全履修生10人が参加。1年を振り返り「論文を調べる習慣がついた」「調べた内容を医師に伝えることで、より良い医療を提供できるようになった」などと語った。
専門・認定薬剤師の資格取得には、症例報告書の提出や研究の実施、論文執筆などの要件が求められる。指導者が不足する中小病院や薬局に勤める薬剤師でも資格取得を目指せるように京都薬大は、その教育を行う「レーマンプログラム」を2020年度に開設。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて昨年度は全面オンラインでの実施となったが、対面での教育を再開した。
今年度は症例報告書作成コースを8人(病院2人、薬局6人)、研究計画・実践コースを2人(病院2人)が履修。2月18日に学内の講義室で行われた最終演習で、履修生は1年間学んだ成果として、薬学的視点から介入した症例の報告や、自ら立案して実施した研究の結果を発表。指導教員や他の履修生の質問に応じた。
研究計画・実践コースを履修する村瀬大翔氏(大阪府済生会野江病院薬剤科)は、腎機能障害患者におけるレムデシビルの安全性を評価した研究結果を発表した。同剤に添加物として含まれるスルホブチルエーテルシクロデキストリンナトリウム(SBECD)は尿細管に蓄積し、腎機能障害を増悪させる可能性がある。指導教員から「学会発表時にはSBECDを含む他の薬物も腎機能に影響を及ぼすのかを調べておいた方が良い」などのアドバイスを受けた。
このほか各履修生が1年間学んだ手応えを報告。薬局薬剤師の今堀翔太氏(ふかくさゆう薬局)は「職場でエビデンスを調べることが増えた。学会発表の機会もあり、すごく成長できた」と強調。久留米愛氏(ふくちやまゆう薬局)も「日常業務で疑問を持った時に原著論文を検索する習慣がついた。トレーシングレポート作成時に論文やガイドラインを引用するようになった」と語った。
沢仁美氏(川西市立総合医療センター薬剤部)は「外来化学療法の担当として多くの患者が悩みを抱えていることを知った。悩みの解決方法などを文献で調べて医師に伝えることで、より良い医療を提供できるようになった」と振り返った。
レーマンプログラムには、大学と臨床現場の連携を強化する狙いもある。京都薬大生涯教育センター長の村木優一教授は「卒後の勤務環境が異なる中、アカデミックなスキルを学ぶ場を大学が提供する仕組みを作ることが必要。それによって医療現場と大学のコミュニケーションが密になる」と話す。
「大学は、臨床現場で困った時に相談できる窓口になるべき。臨床薬学、医療薬学の幅は広い。全国の各大学がそのハブとして機能し、薬学部全体で薬剤師を支援する体制ができてほしい。本学がモデルになれれば」としている。
出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
京都薬科大学では薬局や病院に勤める薬剤師を対象に専門・認定薬剤師資格の取得を支援する社会人向けの教育に力を入れています。症例報告書作成、研究計画や実践等のコースを設けて1年間の教育を行うもので、2月に学内で開かれた今年度最後の演習には全履修生10人が参加しました。京都薬大では指導者が不足する中小病院や薬局に勤める薬剤師でも資格取得を目指せるように、2020年度から「レーマンプログラム」を開設しています。