薬剤師のためのお役立ちコラム 更新日:2024.07.16公開日:2023.11.21 薬剤師のためのお役立ちコラム

頓服薬を飲むタイミングとは?主な種類と効果・副作用や服薬指導のポイントを解説

文:テラヨウコ(薬剤師ライター)

毎日定期的に飲む薬ではなく、症状に合わせて使用する薬を頓服薬と呼びます。しかし、患者さんの中には頓服薬の使い方について勘違いしている人も多く、正しく飲んでもらうためにも、服薬指導では丁寧な説明が必要です。使用方法や副作用への対処法を理解しないまま服用すると、思わぬ副作用が生じたり、十分な効果が得られなかったりする恐れがあります。
 
今回は薬学生や新人薬剤師へ向けて、頓服薬の基本や主な種類、それぞれを飲むタイミング、効果、副作用を解説するとともに、服薬指導時の注意点を紹介します。また、頓服薬の処方箋をチェックする際に気をつけるポイントも確認しておきましょう。

1.頓服薬とは

「頓服(とんぷく)」とは用法の一つであり、症状を和らげたり消失させたりする目的で、症状があらわれたときや症状がひどいときなどに、必要に応じて薬を使用します。その際、頓服として使用する薬が頓服薬です。
 
食後などの毎日決まった時間に飲むのではなく、症状があるときのみ使用します。頓服を処方する際には、どのようなタイミングで服用すべきか医師からの指示が必要です。主な服用時点として発熱時、疼痛時、吐き気があるとき、便秘時、発作時、不眠時などがあります。あくまでも一時的に症状を抑える対症療法のため、頓服薬に向いているのは即効性のある薬剤です。

2.頓服薬の主な種類と飲むタイミング・効果・副作用

頓服薬として使われる薬の種類は幅広く、症状や患者さんの体質に合わせて選択されます。ここでは、頓服薬として処方される機会の多い解熱鎮痛薬や下剤、睡眠薬、狭心症発作時に使う薬を例に挙げて解説します。
 
ただし、紹介している服用のタイミングや追加服用までに空けるべき時間については、あくまでも一般的な目安です。医師の指示がある場合は、その通りに服薬指導を行いましょう。

 

2-1.例①:解熱鎮痛薬

熱を下げる目的で処方される頓服薬には、ロキソニン(ロキソプロフェンナトリウム)やカロナール(アセトアミノフェン)などが挙げられます。発熱時の解熱や、頭痛・腰痛・歯痛などの痛みを和らげる効果を持ちます。
 
解熱目的で使用する場合は通常38.5度以上を目安に服用します。風邪などで生じる高熱は、免疫力を上げるための体の正常な反応のため、むやみに下げるのはよくありませんが、高熱が続くと体力を消耗し十分に食事・睡眠がとれなくなるため、状況に合わせて使用します。そのため、熱が高くても元気がある場合は使用しなくても問題ありません。
 
鎮痛目的で使用する場合は、痛みがある場合のみ服用します。一般的には、痛みが軽いうちに服用する方がより効果的に痛みを緩和することができます。患者さんの中には痛みがあっても我慢してしまう方もいるため、症状があってつらいときは無理せず薬に頼ってもよいことを伝えましょう。
 
解熱・痛み止めのどちらで使用するときも、続けて飲む場合は目安として4時間以上空け、1日の上限回数を守らなくてはなりません。例えば、頭痛を抑える目的で解熱鎮痛剤を連用していると、かえって頭痛の頻度が増すことがあるため適正使用を促しましょう。また、解熱鎮痛剤の中でも非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)は胃腸障害の副作用が起こりやすいため、なるべく空腹を避けて服用するよう指導します。

 

2-2.例②:下剤

便秘時に処方される頓服薬にはラキソベロン(ピコスルファート)やプルゼニド(センノシド)などがあります。これらの刺激性下剤は、便秘時に使用することで腸を刺激して排便を促します。腸まで到達してから作用するため、服用から効果が表れるまでは、ある程度の時間が必要です。
 
一般的には、就寝前に服用して翌朝の便通を促すように処方されます。腸を直接刺激する特性上、効き過ぎると腹痛を感じたり、便がやわらかくなり過ぎたりすることがあります。効き過ぎる場合は、医師の指示があれば用量調節するように伝えましょう。

 

2-3.例③:睡眠薬

眠れないときに使用する薬にはレンドルミン(ブロチゾラム)やマイスリー(ゾルピデム)などがあります。服用することで催眠効果を表しますが、薬の種類によって効果発現時間や作用時間が異なります。睡眠薬で注意すべきことは、自己判断で1回量を増やしたり減らしたりせず、医師の指示通りに服用することです。患者さんによっては、睡眠薬を飲んでもなかなか眠れないからと、自己判断で追加服用してしまう方もいます。
 
また、睡眠薬は翌朝まで眠気やふらつきが残る持ち越し効果が表れる恐れがあるため注意しましょう。服用時刻が遅くなると、翌朝まで効果が残りやすくなるため特に気をつけなければなりません。
 
その他、前向性健忘症の副作用が出る可能性があるため、必ず就寝直前に服用するように指導しましょう。そして、睡眠薬はアルコールとの併用で効果が増大するものが少なくありません。日常的にお酒を飲む習慣がある患者さんには、頓服で睡眠薬を飲む日はお酒を控えるように伝えましょう。

 

2-4.例④:狭心症発作の薬

狭心症発作が疑われる胸痛時に使用するのがニトロペン(ニトログリセリン)やニトロール(硝酸イソソルビド)などです。正しい使用方法を把握していないと、いざというときに症状を緩和できないため、初回お渡しの際は丁寧に服薬指導を行いましょう。
 
狭心症発作の薬はすみやかに吸収・作用させるために舌下で使用します。もし飲み込んでしまった場合は、望んだ効果が得られないため再度服用しなければなりません。一般的には、1~2錠服用すると数分で効果が表れて胸痛が治まってきますが、効果が感じられないときはさらに1~2錠追加します。
 
ただし、薬を使用してもまったく効果がない場合は、心筋梗塞など狭心症以外の症状の恐れがあるため、すみやかにかかりつけ医に連絡して指示にしたがうか、救急車を呼ぶ必要があります。服用する錠数と回数、救急車を呼ぶタイミングについて、あらかじめ主治医と患者さんの間で決めておくように指導しましょう。
 
舌下錠を使用するときに口の中が乾いていると、舌下錠が溶けにくくなってしまいます。口の中が乾いているときは、少し水を含んで舌を濡らしてから使うようにアドバイスしましょう。硝酸薬は急激に血管を拡張するため、めまいや立ちくらみが起こる恐れがあります。転倒事故を防ぐために、座った状態で使用しなければなりません。
 
また、舌がピリピリする感覚、頭痛やほてり、動悸を感じることがありますが、一過性のものであり、時間の経過とともに軽くなることを伝えましょう。その他、湿気に注意して保管するよう指導します。

3.頓服薬の服薬指導のポイント

服薬指導では薬の効果、どのようなタイミングで服用するのかを伝えることが大切です。加えて、どのくらいで効き始めるのか、次の服用までどのくらいの時間を空ければいいのか、そして起こり得る副作用と対処法などを、薬の種類や使用目的に合わせて伝えましょう。
 
過去に渡したことがある薬であっても、頓服薬は毎日使うものではないため、患者さんも慣れていない可能性があります。薬情を渡す他、薬袋やお薬手帳に必要な事項を記載したり、患者用指導箋を渡したりするなど、使用時に患者さんが慌てず正しく飲めるように工夫しましょう。
 
頓服薬を全て使い切らずに余った場合、しばらくたって同じような症状が現れても安易に使わないように指導することも大切です。病気の種類やそのときの本人の体調に合わないと、思わぬ副作用を招きかねません。例えば、解熱鎮痛剤として処方されたボルタレンをインフルエンザの発熱に使用すると、インフルエンザ脳症・脳炎となったときに重症化につながる恐れがあります。また、便秘薬の中には妊婦が原則使用できないものもあるため、以前と自身の体調が変わったときにも注意が必要です。

 
🔽 服薬指導について詳しく解説した記事はこちら

4.頓服薬の処方例と疑義照会のポイント

頓服薬の処方箋は、通常の内服薬とは用法・用量の記載方法が異なります。うっかり疑義照会を忘れたということがないように注意しましょう。具体的な例を挙げ、疑義照会のポイントについても解説します。

 

【毎日服用する内服薬の処方例】
Rp1)【般】ファモチジン口腔内崩壊錠 20mg 2錠
       1日2回 朝夕食後服用 28日分

【頓服薬の処方例】
Rp1)ロキソニン錠60mg 1錠
    腰痛時、頓服   10回分
    (1日2回まで、 4~6時間空ける)

 

内服薬の処方箋には1日分の服用量、1日の服用回数・時点、服用日数を記載します。一方で、頓服薬の処方箋には1回分の服用量、服用時点、投与回数が必要です。例えば、ロキソニン錠60mg 10錠といった処方錠数をまとめた記載や、「用法口授」「医師の指示通り」のように明確な服用時点が書かれていない場合は疑義照会の対象となります。
 
また、投与期間の上限が決められている医薬品について、その上限を超えて投与されている場合も疑義照会が必要です。例えば、他の薬が42日分処方されていても向精神薬であるコンスタン0.4mg錠は、本来であれば30日分しか処方できません。
 
ところが、30日分に加えて頓服12回分が処方されている場合は疑義照会する必要があります。法律的に処方日数が決められていることから、患者さんには薬がなくなる前に受診するよう伝えましょう。

 
🔽 疑義照会について詳しく解説した記事はこちら

5.頓服薬を正しく使ってもらえるように丁寧な服薬指導を

頓服薬は毎日決まったタイミングで飲む薬ではなく、あくまでも症状に合わせて服用する薬です。しかし、国立国語研究所によると、一般の人を対象に行った研究では、頓服という言葉の認知度は高いものの(82.6%)、およそ半数の人が正しく理解できていない(46.9%)という結果が報告されています。
 
中には、頓服薬とは鎮痛剤や解熱剤、包装紙に包んだ薬、症状が出たら何度でも服用してよい薬と誤解している人もいるようです。誤った認識のまま使用すると、思わぬ副作用につながりかねません。正しく頓服薬を使ってもらうためにも、服薬指導では患者さんに頓服薬使用時の注意点をしっかりと説明しましょう。

 
🔽 服薬指導時の接遇マナーについて詳しく解説した記事はこちら


執筆/テラヨウコ

薬剤師。3人兄弟のママ。大学院卒業後、地域密着型の調剤薬局に勤務。大学病院門前をはじめ、内科・婦人科・皮膚科・心療内科・皮膚科門前などで多くの経験を積む。15年の薬剤師歴ののち独立して薬剤師ライターへ。健康や医療、美容に関する記事を執筆。休日は温泉ドライブや着物でのおでかけが楽しみ。