【高橋会長】歯科の院外処方箋が増加~抗菌薬不足、影響広がる 東京都薬剤師会
東京都薬剤師会の高橋正夫会長(写真)は7日の定例会見で、長生堂製薬川内工場での不適切製造問題に言及。「抗菌薬の供給不安は長生堂の問題が起こる前から続いており、薬が入ってきていない」と述べた一方、「処方箋を出していなかった歯科医院が処方箋を外に出すようになった」と指摘。歯科からの院外処方箋が増加している状況を明らかにした。
高橋氏は、「歯科ではセフェム系抗菌薬を使うが、自分のところで薬を出せないので、薬局へとなっているのだと思う。(歯科から薬局への院外処方箋がどの程度増えているかの)データは取れていないが、感覚的にそういうことが起こっている」と語った。
一方で、必要な医薬品を薬局で入手できずに地域を彷徨う“薬難民”になっている患者が続出していることに強い懸念を示した。これまでは出荷制限がかかっている医薬品で在庫がない場合、他の薬局からの小分けにより提供していたが、一部の品目で入手がより厳しくなっていることを背景に、「在庫のある地域内の薬局を探し、患者さんにその薬局まで行ってもらっている状況」と説明した。
さらに、薬剤師が患者からの苦情に対応するカスタマーハラスメントの問題にも触れ、「(供給不足が続く状況で)10月に長期収載品の選定療養がスタートする。薬局でも説明をしないといけないが、厚生労働省が制度を周知してくれないとクレームにつながる」と危惧した。
抗菌薬の安定供給問題は、病院の新規開院にも影響をもたらしている。一瀬信介副会長は「今月に開院予定だった小児科のクリニックが医薬品供給不足のため、7月に延期することになったが、それでも開院できるか分からない。異常な状況だ」と述べた。
リスト化で非会員獲得
地域医薬品提供体制のリスト化をめぐっては、診療報酬改定における地域支援体制加算で要件化された。犬伏洋夫常務理事は「駆け込みで入りたいという非会員が各地区であったが、今月の診療報酬改定にギリギリ間に合った」と述べた。都内の島しょ部で処方箋調剤を行う2薬局についても都薬が手数料を取らずに薬局機能情報をリストに掲載したことも明らかにした。
今後、各地区薬剤師会では情報の追加や変更などリストの更新作業が必要になるが、「自地区でリストを更新できる地区薬剤師会がある一方、業者が間に入っている地区薬剤師会では、更新1回につき更新料がかかったり、更新期間として1週間かかるところもある」と説明。リストの更新に当たっては各地区薬の更新事例を公表し、情報共有を図っていく考えだ。
また、高橋氏は、5月単月の都薬会員数が二桁増に転じたと報告し、「リスト化の締め切りが5月末であったことを考えると影響している。地区薬が非会員に自分たちの取り組みを説明した結果、会員として入ってくれたのではないか。薬剤師会との連携について期待を持って入ってくれており、いい効果だったと思う」と語った。
一部の地区薬剤師会で非会員を対象に高額なリスト掲載料を徴収しているとの指摘に対しては、「地区薬剤師会の会費との見合いだと思っている。活動が多いところほど会費が高い傾向にあり、その差も掲載料に反映されてくる。状況が違う各地区薬に対し、都薬から『この金額でお願いしてほしい』とはさすがに言えない」と述べた。
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出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
東京都薬剤師会の高橋会長が、定例会見で長生堂製薬川内工場での不適切製造問題に言及。歯科からの院外処方箋が増加している一方で、必要な医薬品を薬局で入手できずに地域を彷徨う“薬難民”になっている患者が続出していることに強い懸念を示しました。