医療

薬局の半数「疑義照会せず」~感冒に抗菌薬処方事例で 大崎市民病院薬剤部

薬+読 編集部からのコメント

宮城県大崎市内の薬局を対象に、感冒に抗菌薬が処方された場合、どのくらいの頻度で疑義照会をしているかを調査した結果、「全く疑義照会しない」との回答が半数以上に上る実態が、大崎市民病院感染管理室・薬剤部の調査で明らかになりました。

感冒に抗菌薬が処方された場合、どのくらいの頻度で疑義照会をしているかについて宮城県大崎市内の薬局を対象に調査した結果、「全く疑義照会しない」との回答が半数以上に上る実態が、大崎市民病院感染管理室・薬剤部の高木宏和氏の調査で明らかになった。自由回答では「感冒に抗菌薬の処方を受けることが多いが、疑義照会できていない」など現場から苦悩の声が聞かれた。外来抗菌薬の適正使用に向けた病院・薬局の連携体制が課題として浮かび上がった格好だ。

 

薬局薬剤師を対象とした抗菌薬適正使用への関与や意識を把握する実態調査は珍しい。外来診療における経口抗菌薬の処方をめぐっては処方医の見解が大きく反映し、病院内の抗菌薬適正使用推進チームのように他職種の意見が入らず、処方が行われてしまう課題がある。

 

今後、地域の薬局薬剤師にも抗菌薬適正使用への関与が求められる中、調査では大崎市内の79薬局に勤務する薬剤師を対象にインターネットで聞き取りを行い、40人から回答を得た。

 

感冒に対する抗菌薬処方にどのくらいの頻度で疑義照会を行っているか尋ねたところ、「全く疑義照会しない」との回答が22人と最も多く、「4人に1人の割合でたまに疑義照会する」が14人と続いた。「必ず疑義照会する」の回答はゼロで、「高頻度で疑義照会する」は3人と、疑義照会が適切に行われていない現状が判明した。

 

AMRアクションプランの認知度では「聞いたことがある」は13人にとどまり、「聞いたことがない」が27人と約7割が知らなかった。

 

一方、抗菌薬の服薬指導をする場合に、飲み切る必要があることをどれくらいの頻度で指導しているかを聞いたところ、「必ず指導する」が36人、「頻繁に指導する」が3人、「指導する時も指導しない時もある」が1人と、患者への服薬指導は高頻度で行われていることが分かった。

 

服薬指導の際に、抗菌薬の飲み切りが困難と感じる患者がどのくらいの割合で存在するかを聞いたところ、「たまに不安を感じる」が28人と7割を占めた。

 

妊婦や授乳婦の特殊患者を除き、抗菌薬を調剤する際に個人的に注意している項目について上位3項目を挙げてもらうと、1番目に注意している項目で多かったのが「腎機能や薬剤の用量について」「抗菌薬に対するアレルギーの有無」だった。2番目・3番目に注意している項目には「薬物相互作用について」が最上位の回答となった。

 

一方で、「感染症の起因菌」「抗菌薬の組織移行性やバイオアベイラビリティ」については重視していなかった。

 

自由回答では「感冒に抗生剤の処方を未だに受けることが多いが、疑義照会できていない」や「感冒には抗生剤の信者が多いので現場から正しい知識を周知できればと思うが、なかなか難しいのが現状」「以前より減ったが、医師も患者も感冒には抗菌薬が効果的だと思っていると感じる」などの意見が聞かれた。

 

高木氏は、「薬局薬剤師として抗菌薬適正使用の関与方法は確立しておらず、適正使用や地域連携を推進するメリットもない」と懸念を示した。抗菌薬適正使用に関する病院・薬局の連携構築を進める場合、薬剤師会に協力を依頼する手法についても、大手ドラッグストアやショッピングセンター内に存在する薬局などが非会員となっている現状から「必ずしも最善とは言えない」との見方を示した。

 

地域での経口抗菌薬適正使用を推進していくためには、大規模病院と門前薬局のみではなく、「門前以外を含む薬局と連携し、抗菌薬適正使用を推進していく手法を検討すべき」との考えを示している。

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出典:薬事日報

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