【宮城県薬、宮城県】「門番役」の薬剤師養成へ~市販薬乱用防止で初研修会
宮城県薬剤師会と宮城県は、青少年による市販薬のオーバードーズ(OD)を防止するゲートキーパー役となる薬剤師の養成に乗り出す。8月29日に仙台市内で薬物乱用防止に関するゲートキーパー養成研修会(写真)を初開催し、学校薬剤師のほか、保健所職員や薬学生など86人が受講した。OD防止に関するゲートキーパー養成を目的とした研修会の実施は県薬として初めて。全国的にも先行した取り組みとなる。今後、学校薬剤師経験者の講演を通じて薬物乱用防止教室の内容に生かし、年1回の頻度で継続する予定だ。研修会では、違法薬物は警察、市販薬は薬剤師と役割分担しながら、連携して乱用防止に取り組む重要性が指摘された。
若年層の市販薬によるODなど薬物乱用が社会問題となる中、今年度から5カ年の第6期宮城県薬物乱用対策推進計画では、薬剤師や行政関係者等で情報共有するため、乱用防止に対するゲートキーパーの担い手育成を基本目標に設定している。
これまで乱用防止教室は、保健相談員や警察OBも行ってきた。宮城県薬の加茂雅行副会長は、「薬物乱用防止分野では学校薬剤師の資質向上等に関する研修会は毎年行っているが、市販薬の乱用に対するゲートキーパーの養成に向けた研修の実施は初めて」と説明した。
その上で、研修会を実施する背景として「乱用する薬物の中心は違法薬物(覚醒剤、大麻等)で、乱用防止教室でも違法薬物を対象に取り上げていたが、市販薬の乱用が増加してきたため、県薬剤師会と県でも市販薬にフォーカスした教育を乱用防止教室で行う必要性を感じていた」との問題認識を示した。
研修会で講演した宮城県薬の佐々木孝雄顧問は、薬物関連精神疾患患者が初めて使用した薬物として市販薬を挙げる人が増加傾向にあるとした一方、乱用防止教室に携わる割合が高い職種である警察官は、覚醒剤や大麻等の違法薬物に詳しい傾向があると指摘。
「若年層の乱用が違法薬物から市販薬に変化していることを薬剤師が認識し、警察官と役割分担しても良いのではないか。学校・保健関係者との情報共有も密にした上で教育を行ってほしい」と述べ、薬剤師と警察が連携した乱用防止の取り組みを訴えた。
乱用防止教室では、「濫用等の恐れのある医薬品」を含む具体的な製品名を生徒・児童に明示することに抵抗を示す保護者や学校職員が少なくないとして、「どのような情報をどこまで、どのように伝えるかは事前に協議し、情報共有と共通認識の形成が必要」との考えを示した。
日本薬剤師会の富永孝治常務理事(薬物乱用防止担当)は、G7各国で日本が薬物の生涯経験率が特に低いことに触れ、「学校薬剤師による乱用防止教室が十分奏功している」と強調。
乱用防止には学校薬剤師が健康教育に関する啓発で一次予防を担い、薬局薬剤師の長年の経験を踏まえた販売時のチェックを行う二次予防の重要性も訴えた。
加茂氏は「学校薬剤師に関する通常の研修よりも受講者が多く、ニーズが高いと受け止めた」と評価し、年1回のペースで今後も継続していく意向を示した。ゲートキーパー役となる薬剤師の養成人数の定量的な目標は「考えていない」とする一方、研修会以外の乱用防止のアプローチについては、「市や町の祭りで薬剤師によるお薬相談をしているが、そこで市販薬乱用防止について呼びかけを行いたい」と意欲を示した。
また、「日薬で市販薬のODに関する研修資料の作成を検討しているので、協力しながらそれらのツールで呼びかけを行っていきたい」と述べた。
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出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
宮城県薬剤師会と宮城県が、薬物乱用防止に関するゲートキーパー養成研修会を初開催。学校薬剤師のほか、保健所職員や薬学生など86人が受講しました。オーバードーズ防止に関する「門番役」の養成を目的とした研修会の実施は、県薬として初めてとなります。