薬剤師のスキルアップ 公開日:2024.10.31 薬剤師のスキルアップ

小児薬物療法認定薬剤師とは?資格取得・更新の流れや仕事内容を解説

文:秋谷侭美(薬剤師ライター)

小児薬物療法認定薬剤師は、小児科領域に携わる機会の多い薬剤師や、小児科分野の知見を深めたい薬剤師が取得することで業務に役立つ資格です。本記事では、小児薬物療法認定薬剤師の概要や仕事内容をお伝えするとともに、資格取得を目指す方に向け、試験や研修、申し込み方法などについて解説します。

1.小児薬物療法認定薬剤師とは?

小児薬物療法認定薬剤師とは、公益財団法人日本薬剤師研修センターが運営する認定制度のひとつです。小児薬物療法の分野において一定レベル以上の能力と適性を持っていることを証する認定資格で、3年ごとの更新制となっています。
 
医療チームの一員として、小児科領域での薬物治療に参画するための知識やスキル、適性を備えるだけでなく、患児や家族などに対して適切なアドバイスや行動ができることが求められます。
 
小児薬物療法認定薬剤師の認定者一覧は、日本薬剤師研修センターのホームページから確認が可能です。2024年9月30日時点の認定者数は994人で、日本薬剤師研修センターの認定者名簿には希望者のみ氏名が掲載されます。
 
参照:小児薬物療法認定薬剤師の認定者名簿|日本薬剤師研修センター

2.小児薬物療法認定薬剤師の仕事内容

小児薬物療法認定薬剤師の仕事内容は、主に小児科領域の薬物治療へ参画すること、患児や家族をサポートすることです。詳しく見ていきましょう。

 

2-1.小児科領域の薬物治療への参画

小児薬物療法認定薬剤師を取得した薬剤師は、小児科領域の薬物治療へ参画することが期待されています。チーム医療の一員として、薬の専門家という立場から薬物治療に関する評価や検討を行い、医師や看護師などと情報共有することが求められるでしょう。
 
小児の薬物動態の発達変化や経腸栄養剤の特徴、病態や成長に合わせた剤形などについて、提案や助言を行うのが主な仕事といえます。

 

2-2.患児とその保護者などに対する指導や助言

患児やその保護者などの悩みや困りごとを把握・理解し、的確に指導・助言を行うのも小児薬物療法認定薬剤師の仕事です。専門的な知見をもとに、保護者へ小児医薬品の適正使用について説明をしたり、幼稚園や学校での服用方法などを助言したりすることが求められます。
 
また、患児本人へ薬についての教育や服薬指導を実践し、保護者だけでなく患児自身が納得して薬物治療を受けられるようサポートすることも重要な仕事です。
 
参照:小児薬物療法認定薬剤師制度とは|日本薬剤師研修センター

 
🔽 薬剤師の仕事内容について解説した記事はこちら

3.小児薬物療法認定薬剤師の取得方法

小児薬物療法認定薬剤師を取得するための認定要件は、以下の2つです。

 

■小児薬物療法認定薬剤師の認定要件
● 「小児薬物療法研修会」における研修を修了し、試験に合格していること
● 小児薬物療法認定薬剤師新規認定のためのレポートを提出し、合格していること

参照:小児薬物療法認定薬剤師制度になるには|日本薬剤師研修センター
 

小児薬物療法認定薬剤師になるためには、小児薬物療法研修会での研修を受講するとともに、日本小児臨床薬理学会学術集会に参加し、レポートを提出しなければなりません。
 
ここでは、小児薬物療法認定薬剤師の具体的な取得方法について見ていきましょう。

 

3-1.研修受講要件

小児薬物療法研修会の講習を受講するためには、申し込み時点で以下の要件を満たさなければなりません。

 

■小児薬物療法研修会の受講資格
● 薬局または病院・診療所での実務経験が3年以上
● 現に薬局または病院・診療所に勤務している薬剤師

参照:小児薬物療法認定薬剤師制度 実施要領|日本薬剤師研修センター
 

上記の要件を満たさない薬剤師は、講習を受講することができません。

 

3-2.申し込み

小児薬物療法研修会の受講申し込みは、公益財団法人日本薬剤師研修センターのホームページから行います。ホームページの「薬剤師研修支援システム」ボタンから登録・ログインを行い、必要な情報を入力して受講料の支払い方法を選択することで申し込みが完了します。
 
参照:PECS(薬剤師研修・認定電子システム)|日本薬剤師研修センター
 
申し込みをするためには、「薬剤師研修・認定電子システム(PECS)」に個人情報を登録していなければなりません。以前稼働していた「薬剤師研修支援システム(PESS)」とは異なるシステムのため、PESSに登録している場合でも、新たにPECSに登録する必要があります。
 
参照:小児薬物療法研修会 申込手順|日本薬剤師研修センター

 

3-3.研修内容

小児薬物療法研修会の研修は、e-ラーニング形式で実施されます。2024年度の研修の概要は以下のとおりです。

 

■2024年度の研修の概要
配信される講義数 36コマ
配信期間 2024年7月~2025年2月
受講確認 講義動画中に表示されるキーワードを報告

参照:小児薬物療法研修会|日本薬剤師研修センター
 

年間の研修内容は、プログラムで提示されており、期間を区切って配信されます。2月に全講義が再配信される予定となっているため、見逃した場合には再配信を受講し、キーワードの報告を行う必要があります。

 

3-4.認定試験

認定試験の受験資格を得るためには、研修を受講した際に表示されるキーワードを正解率100%で報告する必要があります。
 
認定試験は筆記試験となっており、2024年度の認定試験は、東京で開催予定です。日程の詳細などは、決定後に受験資格のある者に連絡するとされています。
 
参照:小児薬物療法研修会|日本薬剤師研修センター
 
また、合否はメールでの連絡となっており、このメールが「認定試験結果通知書」となります。そのため、消去・紛失しないよう注意しておく必要があるでしょう。なお、認定試験結果通知書の有効期限は、メール送信日から1年とされています。
 
参照:小児薬物療法認定薬剤師制度に関するQ&A|日本薬剤師研修センター

 

3-5.レポート提出

小児薬物療法認定薬剤師の新規認定では、学会に参加することに加え、参加したいずれかひとつのセッションなどについてレポートを作成し、合格する必要があります。レポート提出のために参加が求められる学会と提出期限については、以下のとおりです。

 

■レポート提出で参加が求められる学会と提出期限
参加する学会 日本小児臨床薬理学会学術集会
提出期限 小児薬物療法研修会の開始以降、認定試験に合格した年の末日(12月31日)まで
スケジュールの例 研修会の受講開始 2024年7月1日
認定試験 2025年5月20日
学会への参加期間 2024年7月1日~2025年12月31日
レポート提出期限 2025年12月31日

 

なお、認定に必要なレポート提出のために参加した学会は、認定取得後の初回認定期限までに必要な学会単位に算入できないとされています。
 
参照:小児薬物療法認定薬剤師新規認定取得のためのレポート|日本薬剤師研修センター
参照:小児薬物療法認定薬剤師制度に関するQ&A|日本薬剤師研修センター

 

3-6.認定申請

認定の申請は、「薬剤師研修・認定電子システム(PECS)」で行います。自身のページにログインして、「研修等の終了状況」のすべての項目が「可」となっていることを確認しましょう。
 
次に「認定申請」を確認し、緑色の「新規」ボタンが表示されている場合は新規認定申請ができます。なお、認定の申請は、試験合格のメール送信日から1年以内に行う必要があります。
 
参照:「薬剤師研修・認定電子システム」(通称:PECS)による小児薬物療法認定薬剤師 新規申請|日本薬剤師研修センター
参照:小児薬物療法認定薬剤師制度に関するQ&A|日本薬剤師研修センター

4.小児薬物療法認定薬剤師の更新方法

小児薬物療法認定薬剤師の資格更新は3年ごとに行う必要があります。資格を更新するためには、規定の研修等について必須単位を取得しなければなりません。
 
ここでは、必須単位と研修について見ていきましょう。

 

4-1.小児薬物療法認定薬剤師の更新に必要な単位数

小児薬物療法認定薬剤師の更新に必要な単位数は、更新回数によって異なります。

 

■小児薬物療法認定薬剤師の更新に必要な単位
更新回数 必要な単位
初回更新 規定の研修等について30単位以上、かつ各年5単位以上
2回目以降の更新 規定の研修等について20単位以上、かつ各年3単位以上

 

なお、受講単位請求や取得単位の管理などは、「薬剤師研修・認定電子システム(PECS)」で行います。
 
参照:更新のための単位取得|日本薬剤師研修センター

 

4-2.小児薬物療法認定薬剤師の更新に係る研修等

認定更新に必要な研修には、必須研修と、必須ではないものの単位として認められる研修があります。

 

■認定更新に必要な研修
必須の研修等 ● 認定有効期間内に1回以上日本小児臨床薬理学会学術集会へ参加し、3単位以上取得すること
● 業務実績報告を提出し、研修センターが委嘱する評価委員による評価を受けること(単位付与が認められた場合、1報につき1単位を付与する)
その他の研修等 ● 研修センター研修認定薬剤師制度に基づく集合研修等のうち、研修実施機関から付与される単位が小児薬物療法認定薬剤師の更新のための単位に充てることが可能である研修会
● 小児薬物療法に関係する研修等に参加した場合や薬剤師業務等を行った場合は受講単位を請求することができる

参照:小児薬物療法認定薬剤師制度 実施要領|日本薬剤師研修センター
 

必須の研修等の業務実績報告については、初回更新のみ必須となっており、単位として算入できる上限数が定められています。
 
小児薬物療法認定薬剤師の更新を行う場合には、必要な単位数や上限などについてあらかじめ確認しておきましょう。
 
参照:更新のための単位取得|日本薬剤師研修センター

5.小児薬物療法認定薬剤師に関するQ&A

小児薬物療法認定薬剤師の試験について、合格率や難易度などが気になる方もいるでしょう。
 
ここでは、試験の合格率や難易度、不合格だった場合の再受験に関する情報をお伝えします。

 

5-1.試験の合格率や難易度は?

日本薬剤師研修センターのホームページでは、小児薬物療法認定薬剤師の認定試験の合格率や、難易度を測る目安となる試験問題などは公表されていません
 
試験の合否はメールで通知されますが、合格点や個人の点数、間違った部分などについての問い合わせは受け付けられていません。

 

5-2.不合格だった場合は再受験できる?

都合により試験を受験できなかったり、不合格だったりした場合、翌年の試験であれば、再受験が可能です。ただし、受験料は再度支払う必要があります。
 
参照:小児薬物療法認定薬剤師制度に関するQ&A|日本薬剤師研修センター

6.小児薬物療法認定薬剤師の資格取得にチャレンジしよう

小児薬物療法認定薬剤師の取得には、3年以上の実務経験に加え、研修会の参加や学会への参加によるレポート提出などが必要です。資格取得後の初回更新では、業務実績を報告する必要があるため、やや難易度の高い資格といえるかもしれません。
 
しかし、日頃から小児領域に携わっている場合には、資格取得を通じて得た知見が役立つ場面も多いでしょう。小児科処方を扱う機会が多い方は、小児薬物療法認定薬剤師の取得にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

 
🔽 認定薬剤師の種類一覧を紹介した記事はこちら


執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)

薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。