薬局の既存事業に危機感~患者を顧客に変える必要 第18回日本薬局学会学術総会
第18回日本薬局学会学術総会(写真)が2、3の両日、横浜市内で開かれ、今後の薬局経営のあるべき姿を議論したシンポジウムでは、処方箋調剤に依存した薬局のビジネスモデルに強い危機意識が示された。生活習慣病の重症化予防など、保険診療外での新たなビジネスを通じて「患者を顧客に変えていくことが必要」との指摘が出た。
杉本修康氏(わかば社長)は、オンライン診療や電子処方箋の普及、患者志向の多様化などで「薬局の立地が全ての観点ではなくなっている」と述べ、薬局に長期的な経営戦略が必要と強調した。
「処方箋医薬品やOTC医薬品、サプリメント、雑貨を販売しているが、これだけでは他者に比べ明確な価値を打ち出せない。価値の本質とは価値として判断される本質を作り、提供することで差別化できる薬局現場を作ること」と語った。
マイライフの糸賀誠社長は広島を中心に44店舗を展開するオール薬局の事業を説明。「薬局づくりを研究し、1店たりとも同じ薬局を作ったことがない」と語った。生活習慣の予防から改善までをワンストップで提供する日本初のヘルスケア複合施設「オールファーマシータウン」を展開し、全ての店舗に栄養士を配置して健康サポートを実践しており、無料栄養指導件数は最も多い月で約2500件、有料の指導件数も増加傾向にあると説明した。
来年は来局者との対応を完全個室に絞って展開していくという。糸賀氏は「現在の薬局で生活習慣病の重症化予防へのアプローチは可能。薬局とオールファーマシータウンをつなぐことで、健康寿命の延伸に薬局が取り組むべき項目が増えた。患者ではなく顧客に変化させる必要がある」と強調。「栄養士に気軽に相談できるインフラが日本にはない。6万軒ある薬局がそれをできないかと活動している」と今後の活動に意欲を見せた。
多田耕三氏(グリーンメディック代表取締役)は、「医療DXがカギになる。シンギュラリティ時代の薬剤師がやるべきことは対人業務の専任業務化と個別化対応になる」と語った。
ある顧客が自社と取引して終了するまでの期間に自社との利益の関係をもたらす指標である「ライフ・タイム・バリュー」(LTV:顧客生涯指標)が薬局に求められ、「個別化と専門化がLTVになる」との考えを示した。
一方、水野良彦氏(前内閣官房健康・医療戦略室 参事官)は「薬局は医療の内外を結びつけられる結節点として、ルーズな視点で見ると良い」と期待する一方、「(現状は)俯瞰的にモノを見ることができていないのではないか」と課題を指摘した。
出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
第18回日本薬局学会学術総会のシンポジウムで、処方箋調剤に依存した薬局のビジネスモデルに強い危機意識が示されました。生活習慣病の重症化予防など、保険診療外での新たなビジネスを通じて「患者を顧客に変えていくことが必要」との指摘が出ました。