薬剤師・薬局の仕事は、一般の利用者の立場からは分かりにくい部分も多いかもしれません。薬剤師・薬局に関する素朴な疑問について、薬剤師さんに詳しく解説してもらいました!
薬局の待ち時間が長い!薬剤師は何をしているの?
薬剤師も努力しているものの、法律上の決まりである「疑義照会」などに時間がかかることがあります
「早く家に帰って家事を片付けなければ」「急がないと子どものお迎えの時間になっちゃう」「昼休みのうちに会社に戻って会議の準備をしなければ」――。当然ながら、薬局を訪れる患者さんには日々の生活があり、薬をもらうまでに長々と待たされたらストレスがたまります。
薬剤師としても、患者さんを長い時間お待たせすることについては、非常に心苦しく感じています。処方箋の受付時に「今日はちょっと混んでいるので、お薬をお渡しできるまで○分くらいかかりそうです」などと伝えるのも、できるだけ患者さんに納得して待ってもらいたい一心からなのです。
待ち時間の長さに強い懸念を抱き、待ち時間の有効な活用やストレス軽減に関する研究活動を行っている薬剤師もいます。待ち時間の短縮は、患者さんだけでなく薬剤師の願いでもあるのです。
参照:保険薬局における調剤業務の解析に基づく患者待ち時間予測モデルの構築(医療薬学2014年40巻4号)|J-STAGE
今回は、少し詳しく調剤薬局の薬剤師業務についてご紹介します。薬剤師が調剤室の中でどのように働いているかを知ってもらえれば、ちょっとは患者さんのイライラが治まるかもしれない……そんな願いを込めて。
さて、調剤薬局では次のような流れで業務を進めていきます。
(2)調剤:処方箋に基づいて薬をそろえる
(3)監査:調剤した薬に間違いがないか、別の薬剤師が確認する
(4)服薬指導・薬歴管理
まず薬剤師は、医師が発行した処方箋を慎重に確認します。その後、患者さんの既往症や現在の服薬状況を確認し、相互作用や重複投与をチェックします。
このとき、疑問点や不確かなことが出てきたら医師に問い合わせます。これを「疑義照会」と言い、薬剤師法にも規定された薬剤師の義務となっています。
参照:薬剤師法 第二十四条 処方せん中の疑義|e-Gov 法令検索
待ち時間が長くなる要因の一つとして、この疑義照会があります。通常、疑義照会は電話で医師と直接やり取りして行うことが多いですが、処方医が診療中などで対応できない場合は、外来看護師に依頼するなどの方法を取ります。
やや古い資料になりますが、「平成27年度全国薬局疑義照会調査報告書」では、疑義照会の発生割合は2.56%(処方箋枚数ベース)と報告されています。疑義照会の結果、処方が変更になることも多く、同調査における変更割合は74.88%でした。
また、調剤自体にも、複数種類の薬を1回ごとの服用分にまとめる「一包化」、錠剤を砕く「粉砕」、軟膏の「混合」、水剤(シロップ剤)の「秤量」など、時間のかかるものがあります。
調剤が済んだら、それに間違いがないかどうか別の薬剤師が確認します(監査)。これらの工程を経て、ようやく患者さんにお渡しできる準備が整います。
なお、病状によっては(高熱があるなど)「待っていられない」患者さんもいるでしょう。そうした場合は、事情を確認の上、優先的に対応することもあり得ます。どうしてもというときは、遠慮なく相談してくださいね。
東北大学薬学部卒業後、ドラッグストアや精神科病院、一般病院に勤務。現在はライターとして医療系編集プロダクション・ナレッジリングのメンバー。専門知識を一般の方に分かりやすく伝える、薬剤師をはじめ働く人を支えることを念頭に、医療関連のコラムや解説記事、取材記事の制作に携わっている。
ウェブサイト:https://www.knowledge-ring.jp/