
5月5日は「薬の日」! 薬剤師・薬局への素朴な疑問について薬剤師さんが解説する連載企画「薬剤師さんに聞いてみた」の特別編として、今回は薬に関する疑問に答えてもらいました。
5月5日は「薬の日」!知っておくと役に立つ薬の豆知識集
薬を水で飲むのはなぜ?
薬を水で飲むのは、「薬が水に溶けて効果が現れるように設計されている」ことが理由です。薬が効果を発揮するには溶けて吸収されなければなりませんが、水以外のもので飲むと想定通りに働かなかったり、味が悪く感じられたりすることがあります。
例えば、カルシウムが豊富に含まれる牛乳。一部の抗生物質や抗菌剤を牛乳で服用すると、薬の成分がカルシウムと結び付き、消化管吸収が低下し、薬の効き方が弱まることがあります。
あるいは、カフェインを含むお茶やコーヒー。カフェインを含む薬(風邪薬や解熱鎮痛薬など)と一緒に飲むと、カフェインの作用が強く現れ、心臓がドキドキしたり、眠れなくなったりする可能性があります。
子どもが薬を飲みたがらない時、「ジュースと一緒なら飲むかな?」と試したくなる方もいるかもしれません。しかし、小児用の抗生物質の中には、ジュースだと薬の効き方が弱まったり、苦味が増したりするものもあります。また、グレープフルーツジュースで高血圧治療薬を服用すると、薬の作用を想定より増強させてしまいます。
こうした事態を防ぐため、薬を飲む場合は基本的には水を用意して、添付文書の記載通りに服用しましょう。
参照:その11 薬を服用する時の水の量について|千葉県
参照:「くすり」の飲み方がわかる人になる! 11の疑問Q&A|くすりと健康の情報局
「食前」「食後」「食間」「就寝前」って具体的にいつのこと?
「食前」は食事の約1時間~30分前、胃の中に食べ物が入っていない時、「食後」は食事後の約30分以内、胃の中に食べ物が入っている時のことです。「食間」は食事の約2時間後、食事と食事の間のことを指しています。食事中に飲むことではありません。「就寝前」は床に就く約30分前のことです。
その他の薬を飲むタイミングとしては、発作時や症状のひどい時に飲む「頓服(頓用)」があります。
特に指示がなければ、通常、薬は食後に飲みます。薬によって飲むタイミングが違うのは、薬の性質と飲むタイミングの間に密接な関係があるためです。薬は決められたタイミングで服用しないと効果が弱まったり、副作用が出やすくなったりするのです。
食前に飲む薬には、胃内に食べ物がない方が吸収や効果が良いもの、食事による血糖上昇を抑制するためのもの、食事の前に胃の働きを良くするもの、胃の粘膜に接して効果を発揮するものなどがあります。
食間に飲む薬の代表例は漢方薬です。その他、胃内に食べ物がない方が吸収や効果が良い薬、胃の粘膜に接して効果を発揮する薬などは食間に服用する場合もあります。
同じ疾患に用いる薬でも、飲むタイミングが同じとは限らないので注意が必要です。例えば、糖尿病の薬には、食物中の炭水化物からのブドウ糖生成を抑える薬や、インスリンの分泌を促す薬などさまざまな種類があります。前者は食前に服用する必要がありますが、後者はどちらでも構いません。
参照:知っておきたい薬の知識(令和6年10月)|厚生労働省・日本薬剤師会
参照:薬の正しい使い方 「食前」「食間」「食後」など、薬によって飲むタイミングが違うのはなぜですか|日医工株式会社
参照:よくある質問 <薬の基礎知識>食前に飲む薬を飲み忘れたので、食後に飲みました。効果はあるのでしょうか?(薬の服用時間について)|沖縄県薬剤師会

薬を飲み忘れたらどうすればいい?
薬の飲み忘れへの対応は、薬の種類や気付いた時刻により異なります。しかし、基本的には気付いたタイミングで1回分をすぐに飲みましょう。ただし、次の服用時間が近い場合はスキップします。次回から通常通り服用してください。
2回分をまとめて飲むのはNGです。血液中の薬物濃度が高くなり過ぎて、副作用が出やすくなるからです。どの薬にも効果を発揮するため適切な血中濃度があり、それに応じて用法用量が決められています。
利尿薬、便秘薬、睡眠薬などの場合は、すぐに飲んでも生活に支障がないようならそうしますが、支障がありそうならスキップします。例えば、朝に服用するはずの利尿薬の飲み忘れに就寝前に気付いた場合、そこで飲んでしまうと夜間頻繁にトイレに立つことになり、睡眠が十分に取れなくなるので注意しましょう。便秘薬や睡眠薬を飲み忘れた場合は、次の日からまた指示通りに飲んでください。
新しい薬を処方された時は、飲み忘れた場合の対応方法をあらかじめ医師や薬剤師に聞いておきましょう。自己判断はとても危険です。飲み忘れ防止には、お薬カレンダーやピルケース、アラームの活用も有効です。ご自身の生活に合わせて工夫しましょう。
参照:知っておきたい薬の知識(令和6年10月)|厚生労働省・日本薬剤師会
参照:「くすり」の飲み方がわかる人になる! 11の疑問Q&A|くすりと健康の情報局
薬に使用期限はあるの?
薬には使用期限があります。ほとんどの医薬品では、包装に使用期限が記載されています。家にある一般用医薬品の外箱を確認してみてください。印刷された使用期限が確認できるはずです(医療用医薬品でも外用薬なら外箱で確認できることがあります)。
医療用医薬品の内服薬は、調剤されてから患者さんの手元に渡るので、患者さんが直接使用期限を確認することは難しいですが、元の包装には記載があります。通常、製造後、未開封の状態で3~5年が使用期限です。
薬には、温度や湿度、光の影響を受けやすいものがあり、それぞれに適した保管方法が決まっています。一般的に、室温保存の場合は30度以下、冷所保存の場合は15度以下とされ、凍結する場所は避ける必要があります。夏の炎天下の車内は50~80度にもなり、薬には過酷な環境なので、放置しないでください。
医師が処方した医療用医薬品は、その患者さんのその時の体調や症状などに合わせて専門的見地から検討されたものであり、医師の指示に従って最後まで服用する必要があります。薬が残った場合、同じような症状の時に自己判断で使用したり、他の人に譲ったりするのはNG。効果がなかったり、症状を悪化させたり、思わぬ副作用が出たりする恐れも否定できないからです。
参照:くすりの情報Q&A Q29.くすりの使用期限と上手な保管方法は。|日本製薬工業協会

東北大学薬学部卒業後、ドラッグストアや精神科病院、一般病院に勤務。現在はライターとして医療系編集プロダクション・ナレッジリングのメンバー。専門知識を一般の方に分かりやすく伝える、薬剤師をはじめ働く人を支えることを念頭に、医療関連のコラムや解説記事、取材記事の制作に携わっている。
ウェブサイト:https://www.knowledge-ring.jp/