【東北医薬大 金野氏ら】漢方薬局が動物病院と協業~地域で院外処方箋を応需
動物病院から院外処方箋を応需し、伴侶動物(ペット)に調剤を行う地域の薬局が水面下で存在している状況が、東北医科薬科大学薬学部臨床薬剤学教室の金野太亮助教(写真)らの研究グループが実施した研究で明らかになった。中でも動物病院と協業し、ペットの病態や症状に応じて漢方薬を処方する漢方薬局が報告され、地域で飼い主とペットを一緒にサポートしていたようだ。金野氏は「地域の薬局にとって新たな可能性につながる。薬局と動物病院のコラボレーション事例を自ら発信しながら、全国的に薬局薬剤師と獣医師の接点が増えることを期待したい」と語る。
調査は、動物病院は大学病院17施設を含む2017施設、薬局は2000施設を対象に実施し、有効回答として動物病院217件、薬局324件から収集した。獣医療における薬剤師のニーズや院外処方箋の実態把握などを目的に薬剤師と獣医師に調査したのは国内初と見られる。
その結果、動物病院から地域の薬局に対する院外処方箋の発行状況は7.8%となった。調剤業務に十分な人的資源を確保できない動物病院が院外処方箋を発行したケースや、かかりつけ動物病院では実施していない薬物療法を求める飼い主側の意向が背景にある。
「1施設1人」ではなく発行施設から複数人の回答がある可能性があるとするものの、院外処方箋の比率は「一桁%はある」としている。動物病院の調剤に特化した薬局が登場する中、地域に根づいて人とペットをサポートする薬局が水面下で存在していた。
10件の具体例のうち、漢方薬局で処方箋を応需する動きが目立つ。東北の漢方薬局は、「飼い主は獣医師との相談後に来局し、化学療法の副作用を軽減するために、補中益気湯と六君子湯を用意した」と回答した。
中部の漢方薬局からは「隣の動物病院から院内で使用していない点眼薬(抗菌薬)の提供を依頼された。事前に獣医師に処方内容を伝え、院外処方箋を飼い主に持参してもらった。処方箋の適正性を評価するため、ペットの体重を人間に置き換え、飼い主には人間の場合と同様に薬歴管理や服薬指導を行った」との報告があった。飼い主への請求方法は「飼い主が自費で支払う」「動物病院に請求」の二つの方法が取られていた。
金野氏は「想定以上に薬局薬剤師が地域でペットの医療に関わっていることが分かった」と評価した。
一方、獣医療で薬剤師の参入を望む獣医師はおよそ3分の1にとどまり、「分からない」「参入してほしくない」とほぼ同じ比率となるなど「薬剤師が何ができるかを発信する機会が必要」と提言する。
また、薬剤師が獣医師への処方提案やペットを対象とした投与設計などで能力を発揮するためには、「薬剤師向けの教育プラットフォームを構築することも検討すべき」と訴える。
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出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
動物病院から院外処方箋を応需し、ペットに調剤を行う地域の薬局が水面下で存在している状況が、東北医科薬科大の金野助教らの研究グループによって明らかになりました。獣医療における薬剤師のニーズや院外処方箋の実態把握などを目的に薬剤師と獣医師に調査したのは国内初と見られます。