【農水省、薬産協】国産生薬の生産量拡大へ~重点8品目に絞り込み 農林水産省、薬用作物産地支援協議会
農林水産省と薬用作物産地支援協議会は伸び悩む国産生薬の生産量拡大を目指す。日本漢方生薬製剤協会が「2030年調達計画」で国内産の使用量、調達量が多く複数の会社が国内産の調達や契約栽培を行う生薬8品目を重点品目に選定しており、産地が希望する品目を一律に支援する政策を見直した。その第1弾として重点品目のカノコソウとシャクヤクについては応募のあった全国の産地に種苗の無償提供を開始し、全国での試作から実生産、生産量拡大につなげる。
第1弾はカノコソウなど
漢方製剤等の生産金額は2015年の1671億円から23年には2539億円と直近5年間で28%増加している。原料となる生薬の需要量が増加する中、原料生薬の約8割を占める中国産は価格上昇で確保が難しくなっており、原料生薬の安定確保に向けては国産のニーズが高まっている。
農水省は今年度予算で米・薬用作物等地域特産作物体制強化促進に11億5000万円を計上しているが、国産生薬の安定確保に向けた足取りはおぼつかない。今年度に薬用作物の栽培面積を630ヘクタールに拡大する目標を掲げているが、近年は500ヘクタール前後と横ばいで推移しており、目標達成は困難な状況にある。
さらに栽培戸数は15年の2065戸をピークに23年には1212戸まで減少。生産者と製薬企業のマッチング成果も144団体・個人が折衝を開始するも、取引継続中は14団体・個人にとどまる。
こうした中、30年度までに国産生薬の生産量を15年比で約1.5倍に拡大する目標を掲げる日漢協は、300程度ある生薬のうち重点品目として8品目を選定し、的を絞った生薬の国産化戦略にシフトした。
選定したのは、▽センキュウ▽トウキ▽サンショウ▽ブシ▽シャクヤク▽サイコ▽カノコソウ▽ガイヨウ――。農地で栽培されている品目のうち国内産の使用量・調達量が多いもの、2社以上が契約栽培を行っている品目に合致したものを選んだ。これら品目については薬用作物産地支援協会が中心となって薬用作物の栽培振興や国内産生薬の生産拡大を目指し、国内で自由に栽培できるよう種苗供給を行う。
その第1弾となるカノコソウとシャクヤクについては、種苗の増殖を行うための圃場で種苗生産が始まっている。生産した種苗は全国の希望者に試作程度の量を無償提供する。カノコソウ苗は23年度に全国26カ所の産地に対して配布し、24年度にはカノコソウ苗とシャクヤク苗を希望のあった産地に配布を行い、全国各地での試験栽培に弾みをつける。
産地の努力で好事例も生まれつつある。カノコソウの産地である北海道名寄市は15年にカノコソウ生産組合を設立し、栽培面積は15年比で7割増と着実に広がる。
栽培面積の拡大により、作業負担の増大という課題に直面するも手作業が多い洗浄作業を機械作業に置き換えたり、新たな洗浄作業ラインを構築することで作業時間を2割超削減することに成功した。さらに苗移植機も開発し、移植作業時間の削減と作業人員の削減により、延べ作業時間が50%以上削減するなど生産者主体の取り組みで成果に近づきつつある。
出典:株式会社薬事日報社
薬+読 編集部からのコメント
漢方製剤等の原料となる生薬の需要量が増加し、安定確保に向けて国産生薬のニーズが高まる中、農林水産省と薬用作物産地支援協議会は、伸び悩む国産生薬の生産量拡大を目指した取り組みを開始しています。