医療

認定薬局には「恩恵なし」~住民の薬局選びに影響せず 厚生労働科学研究班

薬+読 編集部からのコメント

地域連携薬局や専門医療機関連携薬局は利用者の認知度が低く、認定が地域住民の薬局選びに影響していないことや、薬局側でも認定による業務の変化やメリットを感じていない場合が多いことが、厚生労働科学研究班の調査で明らかになりました。

地域連携薬局や専門医療機関連携薬局は利用者の認知度が低く、認定が地域住民の薬局選びに影響していないことが、厚生労働科学研究「地域連携薬局・専門医療機関連携薬局が地域で果たすべき機能に関する調査研究」(研究代表者:山村重雄城西国際大学薬学部教授)で明らかになった。薬局側でも認定による業務の変化やメリットを感じていない場合が多く、利用者も機能を十分に理解していなかった。研究班は、薬剤師会などによる認知活動を地域住民に進めると共に、認定には薬剤師の能力といったソフト面も含めた評価を行うよう提言した。

 

地域連携薬局は4月末時点で4208軒が認定され、薬局全体の約6%にとどまる。研究班は2023年12月の段階で認定を受けている4087の地域連携薬局に調査票を送付し、1085薬局から回答を得た。薬局の基本的立地条件や認定要件の実施状況、認定に至るまでに苦労した点などを包括的に調査した。

 

その結果、地域連携薬局では、地域において利用者に対する認定要件に含まれるサービスは提供できているものの、利用者におけるサービス内容の認知度は十分でなかったことが判明。地域連携薬局の認定前後における近隣の医療機関や地域住民の反応、薬剤師の業務変化なども尋ねたが、大半の薬局でこれらの変化を感じておらず、地域連携薬局になったことで業務などが好転したとの意見はほとんどなかった。

 

認定を受けていない他の薬局と比較して地域連携薬局に認定されたことで業務や待遇などの面でメリット・デメリットを感じることがあったか質問した結果、75%の店舗で地域連携薬局認定のメリット・デメリットを感じていなかった。

 

一方、約15%の店舗でメリットを感じており、その理由として「在宅医療の依頼が増えた」が全体の46%、「地域の薬局や医療施設に勤める薬剤師に対して指導的立場になることができた」が約25%、「来局患者が増えた」が約15%に上った。

 

薬局側からは、地域連携薬局の機能を利用者からあまり理解してもらえていないとの回答が多かった。利用者からも「認定薬局であることを理由にその薬局を利用している」との反応は少なく、連携薬局の認定が利用者の薬局選択に影響していなかった。

 

地域連携薬局でも、医療機関との間で利用者の入退院に関する情報共有は多数の薬局でできていなかった。他の薬局に対する利用者の医薬品適正使用にかかる情報提供も「提供薬局0件」と回答した薬局が全体の52%に上り、薬局間の情報連携が課題に浮かび上がった。

 

一方、専門医療機関連携薬局についても前年度調査の結果を解析すると、地域で利用者に対する認定要件に含まれるサービスは提供できているものの、サービス内容の認知度は十分でなかった。利用者による認知度は低く、「認定を取得しているから薬局を選んでいる」という利用者も少なかった。

 

これらの結果から、地域連携薬局と専門医療機関連携薬局は、薬局機能と薬局として提供できるサービスの認知度を上げる必要性が考えられた。利用者が期待する連携薬局のサービスは「薬剤師からの分かりやすい薬の説明」であり、薬剤師の知識やコミュニケーションスキルの向上が必要である現状も指摘された。

 

研究班は、連携薬局の認定のあり方について、「構造や薬剤師の人数といったハード面だけでなく薬局・薬剤師の能力といったソフト面の評価も必要」と提言した。

🔽 地域連携薬局について解説した記事はこちら


🔽 専門医療機関連携薬局について解説した記事はこちら

  • 薬剤師のための休日転職相談会
  • 薬剤師の転職・求人・募集はマイナビ薬剤師/5年連続満足度NO.1

出典:株式会社薬事日報社 

ページトップへ