零売裁判、権利侵害争点に~原告と被告の主張平行線 東京地方裁判所
医薬品医療機器等法で指定された処方箋医薬品以外の医療用医薬品の販売(零売)に関する民事訴訟の第2回公判が、7月30日に東京地方裁判所で開かれた。被告である国側は、厚生労働省通知について「国民の権利義務に直接影響せず、原告らに対する権利侵害の危険や不安もない」と主張。一方、原告側は通知が事実上の拘束力を持って現場に影響が出ていると反論するなど、双方の主張は平行線を辿った。

この日の公判で争点となったのは通知による権利侵害の有無だ。国側は、これら通知は国民の権利義務に直接関係せず、外部効果を持たない行政規則であり、都道府県等の自治事務に関する技術的助言として「薬機法など法令の規制を超えて原告らの権利を制約しない」との考えを示した。原告側が通知を根拠に行政指導を受けた事実もなく、権利侵害の現実的危険や不安はないとした。
これに対して原告側は、「多くの薬局に行政指導等の具体的な不利益があり、現実的な危険や不安が生じている」と反論。通知の存在により、保健所による頻繁な立入検査、大手医薬品一次卸による取引拒絶、広告内容の制限等が見られると主張した。
また、零売の正当性をめぐり国側は医師法に抵触すると指摘。処方箋医薬品を含めた医療用医薬品に関する使用の判断、用法・用量の設定は医師法上の医業に当たり、零売は災害時等のやむを得ない場合に限られるとの見解を示した。
原告側は薬機法が規制するのは処方箋医薬品のみであり、医療用医薬品は通知で定義が設けられ、法的根拠は存在しないと主張。行政基準が法令に反しているため違法・無効と判示した医薬品ネット販売訴訟を引き合いに「両者で共通する構図が見られる」とした。
通知が広告表現の自由を侵害している問題でも対立した。「保健衛生上の弊害防止に必要な手段で薬機法の目的に合致する」との国側の説明に対し、原告側は「薬機法は虚偽・誇大広告を禁じるもので広告対象や表現内容を包括的に制限するものではない」と訴えた。
訴訟代理人弁護士の西浦善彦氏は、公判後の記者会見で「国が主張する理由しか通知発出の根拠がないのであれば、これ以上議論する余地はない。今回のやり取り以上のものが出なければ証人尋問申請を経て判決を求めていく最短コースにしたい」と述べた。10月31日の次回公判までに「通知による被害を受けた薬局からのヒアリングも行い、具体的証拠として提出し裁判所を説得していきたい」との意向を語った。
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出典:株式会社薬事日報社
薬+読 編集部からのコメント
薬機法で指定された処方箋医薬品以外の医療用医薬品の販売(零売)に関する民事訴訟の第2回公判が、東京地方裁判所で開かれました。厚生労働省通知による権利侵害の有無が争点となったものの、原告側と被告である国側の主張は平行線を辿りました。