超希少疾病薬の開発支援へ~国が先行してデータ収集 厚生労働省
厚生労働省は、患者数1人から数十人規模の超希少疾病用医薬品の開発を後押しするため、保険外併用療養費制度を利用した特定臨床研究・医師主導治験等の実施を支援する。2026年度に国立高度専門医療研究センターを代表機関に対象疾患・薬剤、臨床試験の実施計画(プロトコル)など制度設計を行い、27年度以降には開始する計画だ。製薬企業が開発に乗り出しにくい超希少疾病で有効性・安全性に関する知見を収集し、企業から開発申し出があった場合にはデータ導出も橋渡しすると共に、治療手段がない患者に未承認薬剤の治療機会を確保する。
厚労省は、26年度概算要求で「未承認薬等アクセス確保事業」に4900万円を要求した。希少疾病用医薬品のドラッグラグ・ロス対策が進む中、患者数が特に少ないために国内での治験が見込めず、製薬企業による承認取得が困難な超希少疾病用医薬品の開発支援は遅れている。
国が補助金を投じて、超希少疾病の中でも特に患者数が少ない疾病や平時には発生がない感染症等の患者に対する国内未承認薬の有効性・安全性データを先行して収集する。
具体的には、▽国内推定患者数が20人未満の疾患に対する薬剤(平時には国内で発生のない健康危機管理上重要な疾患を含む)▽対象患者数が年間20人未満で国内開発中だが治験実施が困難な再生医療等技術▽年間売上高が概ね5億円未満と推定される薬剤▽単回もしくは複数回の投与で治療が終了する薬剤――などが対象となる。
同事業の研究班は、国立高度専門医療研究センターであるがん研究センター、精神・神経医療研究センター、成育医療研究センター、健康危機管理研究機構の4機関。26年度は超希少疾病用医薬品、感染症危機対応医薬品等の中から対象疾患、対象薬剤、評価方法、プロトコルを検討する。
27年度以降には、選定した疾患・薬剤について研究班の医師が海外の承認薬を個人輸入し、保険外併用療養費制度を利用した特定臨床研究や医師主導治験を実施する。データの集積を通じて、国内開発の実施可能性を検討すると共に、臨床試験等で得られた有効性・安全性の知見は企業から開発申し出があった場合に申請へ利活用が可能なデータとして導出する。
また、保険外併用療養費制度を利用することで治療手段が海外治験への参加などに限られていた超希少疾病の患者に対し、未承認薬等による治療機会を確保する。
厚労省医政局研究開発政策課は、「超希少疾病用医薬品の開発を支援する事業は初の試みになる。企業が開発に乗り出しにくい領域で国が先行してデータを取っていきたい」と狙いを説明する。
超希少疾病の患者団体も国の動きを歓迎する。日本ライソゾーム病患者家族会協議会理事で日本ムコ多糖症患者家族の会名誉会長の秋山武之氏は、「厚労省の事業要求に超希少疾患の新規事業が盛り込まれたことを大変心強く受け止めている。患者数が数人規模でも治療の道が開かれる仕組みが整い始めたのは、20年間にわたり地道に要望を重ねてきた成果であり、患者にとって大きな希望となる」とコメントした。
出典:株式会社薬事日報社
薬+読 編集部からのコメント
厚生労働省は、患者数1人から数十人規模の超希少疾病用医薬品の開発を後押しするため、保険外併用療養費制度を利用した特定臨床研究・医師主導治験等の実施を支援します。2026年度に国立高度専門医療研究センターを代表機関に対象疾患・薬剤、臨床試験の実施計画(プロトコル)など制度設計を行い、2027年度以降には開始する計画です。