医療

薬局で減塩、降圧効果検証~CKD患者に臨床研究開始 三重大学病院薬剤部

薬+読 編集部からのコメント

三重大学病院薬剤部の研究グループが、県内の医療機関に通院し、高血圧を合併する外来慢性腎臓病(CKD)患者を対象に、薬局薬剤師の減塩指導による血圧低下効果を検証する臨床研究を開始しました。減塩で高血圧を緩和し、透析導入の抑制につなげるのが狙いです。

三重大学病院薬剤部の朝居祐貴講師(写真)らの研究グループは、県内の医療機関に通院し、高血圧を合併する外来慢性腎臓病(CKD)患者を対象に、薬局薬剤師の減塩指導による血圧低下効果を検証する臨床研究を開始した。県内32薬局が研究に参加し、3カ月の観察期間で計3回ほど指導するほか、味覚試験紙「ソルセイブ」で食塩感受性の変化を実感してもらい、減塩の食生活改善を継続できるように支援する。減塩で高血圧を緩和し、透析導入の抑制につなげるのが狙い。将来は、減塩指導内容の個別化に役立つアプリの開発も手がけたい考えだ。

臨床研究は「My-CKDsalty試験」として実施する。薬局薬剤師が患者に参加を呼びかけ、1薬局当たり3症例を目安に計84~100例の組み入れを目指す。7月末の倫理審査で研究実施の承認を得て、参加薬局も決まった。今後、薬剤師への研修等を経て、10月頃から本格的に患者への減塩指導を開始する予定。半年間で全患者の研究登録を終えて、来年6月頃の結果解析を見込んでいる。

 

薬局薬剤師は患者の来局時に、減塩食の要点をA4用紙1枚にまとめた説明書に基づき、5分程度の栄養指導を行う。調査票で聞き取った自炊や外食の生活習慣、間食の有無などをもとに指導内容を個別化。月1回等の患者の来局時に合わせて3カ月の観察期間中に計3回ほど指導し、減塩食の実践を支援する。

 

減塩指導に加えて、ソルセイブを用いて患者の食塩感受性の変化を評価する。ソルセイブは、段階的な塩味濃度の紙片を舌に数秒乗せて塩味を感じるかを確認する検査用紙。

 

先行して三重大病院と近隣5薬局が実施したパイロット臨床研究で、薬局薬剤師の減塩指導に伴う推定1日食塩摂取量の減少と、ソルセイブで評価した食塩感受性の低下は相関することを実証した。

 

減塩食が成功している患者では食塩感受性が高まり、塩味を感じやすくなる。両者の相関を立証できたことにより、推定1日食塩摂取量の算出に必要な採尿や検査を行えない薬局でも、ソルセイブによる食塩感受性の評価で患者が取り組む食生活の改善が減塩につながっていることを明示できる。減塩は重要だが、続けるのは難しい。食生活改善の効果を可視化し、減塩の継続を後押しするソルセイブを使った仕組みを一連の臨床研究に盛り込んだ。

 

主要評価項目は、薬剤師による介入前後の収縮期血圧の変化に設定。減塩指導で患者の高血圧が緩和されると期待する。副次評価項目として食塩感受性や、患者の減塩に対する意識、腎機能の変化も追跡する。

 

将来は、三重大工学部と連携し、薬局薬剤師の減塩指導の個別化に役立つアプリを開発したい考え。今回の研究で得られたデータをもとに機械学習を行い、生活状況や食習慣などの違いから減塩成功の難易度を患者ごとに推定するプログラムを構築し、アプリに搭載する構想だ。薬剤師は難易度に応じてメリハリをつけた指導を行い、減塩の成功率を高められる。

 

朝居氏は、減塩指導の取り組みを全国の薬局に広げる上で「アプリ開発が最終的な目標」とし、「薬剤師が地域に偏在する中、その人的資源をどれだけ効率良く使うかが課題になる」と語る。全国の薬剤師が減塩指導でCKD患者の高血圧緩和に取り組み、心血管イベントの発症率低下や透析導入の抑制につながることを期待している。

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出典:株式会社薬事日報社 

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