医療

【昭和医大 岸本氏ら調査】市販薬過剰摂取6割が継続~「生きていく上で必要」の声

薬+読 編集部からのコメント

市販薬のオーバードーズ(OD)経験者のうち、約6割が止めずにODを続けていることが、昭和医科大学の岸本桂子教授らが実施した調査で判明しました。「生きていく上で必要なもの」との考え方がOD継続と強く関連しており、さらに「自尊感情が低い」「家族の問題を抱えている」「ODにかぜ薬を使用している」こともODの継続に関連していました。

昭和医科大学大学院薬学研究科社会薬学分野の岸本桂子教授らが実施した調査で、市販薬のオーバードーズ(OD)経験者のうち約6割が止めずにODを続けていることが分かった。「生きていく上で必要なもの」との考え方がOD継続と強く関連していた。岸本氏は、OD継続者に対して一律的に医薬品を取り上げるのではなく、「害の低減を目指す“ハームリダクション”の考えを取り入れた対応が必要」と話している。

 

5月にウェブ調査を実施し、数万人規模の調査対象から過去3年以内にODを1回以上経験した18~59歳の男女を抽出し、257人から回答を得た。回答者の平均年齢は40.3歳で、男性115人、女性142人だった。

 

ODの現状について、「止めたいと思っていない」が22.2%、「止めたいが止められない」が35.4%とOD継続者が57.6%を占めた。「止めた」は42.4%だった。

 

ODに使用した市販薬は、解熱鎮痛薬(49.8%)、かぜ薬(46.7%)、抗ヒスタミン薬(35.4%)、鎮咳去痰薬(27.2%)などが含まれていた。

 

分析の結果、ODに対して「生きていく上で必要なもの」という価値観を有することが、ODの継続に強く関連することが判明した。さらに、▽自尊感情が低い▽家族の問題を抱えている▽ODにかぜ薬を使用している――こともODの継続に関連していた。

 

年齢や性別による違いを分析したところ、「生きていく上で必要なもの」と全体の45.9%が回答したのに対して、女性若年層群(18~39歳)は60.0%と突出して高かった。OD経験のある女性中高年層(40~59歳)は無職の割合が高く、社会的孤立の傾向が強いことも明らかとなった。

 

岸本氏は「生きるためにODをしている人が多いことを医療職は理解する必要がある。薬学部の中でも教育をしていきたい」と話す。その上で、「OD継続者に対して薬局で一律的に医薬品の販売を規制したとしても、不安を和らげるためにリストカットなど違う方法を探すかもしれない。ハームリダクションの考えを取り入れた対応が求められる」と提言した。

 

かぜ薬がOD継続に関連することも想定外だったという。岸本氏は、安価で1包装当たりの錠数が多く、成分にアッパー系とダウナー系が混合していることが影響しているのではないかと推測する。

 

このほか、回答した医療従事者と医療学生計34人のうち、約8割に当たる27人がODを継続しており、全体の6割と比べて高い結果となった。岸本氏は「薬に関する知識があるだけに、ODをしても(用量などを)コントロールできるという自信があり、ODを止めないのかもしれない」との見方を示す。

 

医薬品の購入経路の内訳は、ODを止めた人は83.2%がドラッグストアや薬局で、11.3%がインターネット経由だったのに対して、OD継続者は72.7%がドラッグストアや薬局で、18.6%がインターネット経由だった。

 

OD経験者257人にODに期待することを聞いたところ、「情動の緩和(不安を和らげるため、ストレス発散など)」「娯楽的使用(トリップ・不思議な感覚など)」「死との向き合い(死ぬため、死にたい気持ちから逃げるためなど)」の3因子が挙がった。

 

岸本氏は、OD防止対策を考える上で「もっと(ODをしている)相手を知る必要がある。今年度内にもインタビューを行い、生の気持ちを聞きたい」と意欲を示す。

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出典:株式会社薬事日報社 

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