転院時の情報連携評価へ~病院薬剤師間で薬剤調整 中央社会保険医療協議会総会
中央社会保険医療協議会は19日の総会で、2026年度診療報酬改定における病院薬剤師に関連した評価をめぐり議論した。日本病院薬剤師会が要望していた「転院、転所時を含む病院薬剤師による施設間の薬剤関連情報の連携に関する評価」の新設に対し、診療・支払側両委員からポリファーマシー対策の充実につながるとして賛同する声が相次いだ。一方、病院薬剤師の確保をめぐっては、24年度改定で創設した薬剤業務向上加算を活用して薬剤師の新規採用につなげるべきとの意見が出た。
病院薬剤師から薬局への薬剤情報提供については、退院時情報連携加算として診療報酬上の評価を設けている一方、病院から病院への転院・転所時等に病院薬剤師が行う薬剤情報提供業務に対しては、診療報酬上の評価がない。病院のポリファーマシー対策に対する評価についても薬剤総合評価調整加算があるが、病院薬剤師間の情報連携については評価対象とされていなかった。
ただ、病院薬剤師間の情報連携は全国各地で実施されている実態があり、今年度の「医療機関の薬剤師における業務実態調査」によると、転院・転所時にも薬剤サマリーを作成し、情報連携をしている医療機関は4割を超えていた。転院・転所先病院で薬剤サマリー受領経験がある医療機関は7割を超え、そのうち8割は薬剤サマリーの内容が診療情報提供書を補完するものであり、有用と捉えていた。
転院元から転院先に薬剤情報提供がない場合に服用中薬剤や転院前の薬物治療等に関する情報が不足し、病院間の薬剤師が別途連携を図った経験がある割合は8割を超えていた。多剤投薬の薬剤調整後に連携不足による中止薬剤が再開する、いわゆる「処方の先祖返り」に遭遇した経験のある施設は55%に上った。
こうした状況を踏まえ、入退院時のみならず転院・転所時における病院薬剤師による施設間の薬剤情報連携について診療報酬上の評価を行うことを多くの委員が支持した。
診療側の江澤和彦委員(日本医師会常任理事)は「薬剤総合評価調整加算の充実は必要」との考えを示し、森昌平委員(日本薬剤師会副会長)は「評価内容の充実をお願いしたい」と要望した。支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)と患者代表の高町晃司委員(日本労働組合総連合会「患者本位の医療を確立する連絡会」委員)も賛同した。
一方、病院薬剤師の業務に対する評価に向けては、薬剤師確保が喫緊の課題としたが方向性を見出しきれていない。厚労省は24年度の病院薬剤師採用について、半数以上の病院で採用がなく、定年退職を除き約4割の病院で1人以上の病院薬剤師の離職者がいたと報告。「日中十分な人数を確保している」と回答できた病院は全体の14%にとどまっている。
委員からは、基幹病院から地域病院に薬剤師を出向した場合に算定が可能な薬剤業務向上加算を活用し、病院薬剤師確保に取り組むよう求める意見が出た。
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出典:薬事日報



薬+読 編集部からのコメント
中医協総会で、2026年度診療報酬改定における病院薬剤師に関連した評価をめぐり議論が行われました。日本病院薬剤師会が要望していた「転院、転所時を含む病院薬剤師による施設間の薬剤関連情報の連携に関する評価」の新設に対し、診療・支払側両委員からポリファーマシー対策の充実につながるとして賛同する声が相次ぎました。