医学論文からは、薬剤師の日々の業務に活用できるさまざまな情報を得られます。しかし、難しそうだというイメージや、具体的にどう活かしたらいいのかわからないという理由で敬遠してしまっている人も多いのではないでしょうか。また、医学論文の多くは英語で書かれていることから、英語に苦手意識をもつ人にとってはそれだけでハードルの高いものとなってしまいます。さらに論文は更新され続けるため、それを継続して読み続けるにはモチベーションの維持が必要です。このような要因から、医学論文を読みたいと思っても読めずにいる薬剤師は少なくないようです。
本書で推奨されている「EBM型論文抄読会」は、このような医学論文に対するハードルを下げるのにたいへん有効です。抄読会では複数の参加者が1つのテーマに関する医学論文を読み、仮想症例のシナリオを設定したうえで、その症例に論文をどう当てはめるのかを検討します。仮想症例を使うことで、論文を実際の業務でどう活かすかがイメージしやすくなるとともに、グループで話し合うことはモチベーションの維持にもつながります。
さらに本書では論文から得た情報をもとに複数の薬剤を比較し、「薬剤効果の定量化」「薬剤有害事象リスクの定量化」「薬剤相互作用リスクの定量化」といった観点から、薬剤の有効性や安全性を相対的に評価する手順を詳しく紹介しています。
また論文を読むために必要となる薬についての考え方や、統計についての基礎知識、薬剤師が知っておきたい重要論文のリストも紹介されており、この1冊で論文を読むために必要な知識を身につけることができます。
論文を読み、各症例について自分で考えて答えを導き出すことは、薬剤師の業務のクオリティをより高いものにするために役立ちます。これまで医学論文に挑戦したいと思いながら実行できずにいた人も、手に取ってみてはいかがでしょうか。