医療

多剤投与是正で415億円減‐薬局の薬学的疑義照会が有効

薬+読 編集部からのコメント

2017年5月14日、東京都内で第1回日本老年薬学会学術大会が開催されました。福岡大学病院薬剤部の神村英利氏から、薬局からの疑義照会によって残薬や過量投与などのポリファーマシーを是正したところ、約153万円の薬剤費削減につながったとする報告が行われ、これを全国的な推定値とすると、約415億円に上ることがわかったということです。

薬局からの疑義照会が外来患者の多剤投与(ポリファーマシー)に及ぼす影響を調査した結果が、14日に都内で開かれた第1回日本老年薬学会学術大会で、福岡大学病院薬剤部の神村英利氏から報告された。薬局からの疑義照会で残薬や過量投与などのポリファーマシーを是正したところ、約153万円の薬剤費削減につながった。これを2015年度の処方箋枚数8億枚として全国的な推定値を試算すると、約415億円に上ることが分かった。調査結果を受け、神村氏は、薬局において残薬の確認と薬学的判断に基づく疑義照会がポリファーマシー対策になっているとの見方を示した。


 

調査は、昨年9月1日から11月30日までの3カ月間、福岡大病院の近隣4薬局で薬学的な疑義照会を行った事例が外来患者のポリファーマシーにどのような影響を与えるかどうか解析したもの。

 

その結果、患者の年齢は中央値で65歳、変更前の処方薬剤数の中央値は5剤、応需処方箋は2万9487枚だった。そのうち、薬学的に疑義のあった処方箋が670枚、薬学的疑義照会率は2.3%となった。

 

処方変更となった薬学的疑義の根拠を見ると、主に残薬の日数調整が最も多く、次いで過量投与や同種同効薬の重複、禁忌薬、副作用歴、アレルギー歴などの薬学的判断となった。ただ、神村氏は、「ポリファーマシーによる薬学的な問題が発生した患者は、高齢者でない多剤併用処方の例でも起こり得る」とした。

 

高齢者で残薬となることが多かった薬効群は、下剤が最も多く、次いで他の消化器用薬、抗糖尿病薬、スタチンの順で、重複処方されることが多かったのはビタミン類、酸分泌抑制薬などとなった。

 

これら調査結果から、薬局における薬学的疑義照会が薬剤費に及ぼす影響を算出したところ、薬学的判断によって約91万円、日数調整によって約140万円の削減効果が得られたことが明らかになった。

 

そのうち、疑義照会によりポリファーマシーが是正された事例の薬剤費を見た結果、約153万円の削減につながったことが明らかになった。さらに15年度の処方箋枚数を8億枚として、全国的なポリファーマシーの是正による薬剤費削減効果を試算したところ、約415億円に上ることが考えられた。これは、国民医療費の0.6%に当たるという。

 

神村氏は、残薬のある高齢患者では加齢に伴い処方薬剤数が増える傾向が見られたとし、「多剤併用処方の高齢者には服薬確認を注意深く行う必要がある」とした上で、「薬局では残薬の確認と薬学的判断に基づく疑義照会がポリファーマシー対策になっている」と指摘。「検査値付き処方箋が一層普及すると、薬学的疑義照会によるポリファーマシーの是正例が増えていくのではないか」と述べた。

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出典:薬事日報

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