土屋副会長、「疑義照会の簡素化」は間違い‐「事前合意で問合せ減少」に 日本病院薬剤師会
日本病院薬剤師会の土屋文人副会長は、薬局と病院が事前に作成・合意されたプロトコルに基づき、薬剤師の裁量の範囲で一部の形式的な疑義照会を不要にする取り組みが「疑義照会の省略、簡素化」などと表現され、広く用いられていることについて、「間違った使われ方をしている」と指摘した。こうした取り組みの根拠となる条文は、23条(処方箋による調剤)の第2項で規定されている「薬剤師は、処方箋の医薬品を、医師の同意を得た場合を除くほか、変更して調剤してはならない」の部分で、「医師への同意取得を事前に行うようにしたもの」と説明。「事前同意で医師への問い合わせを減らしたといった表現が正しいのでは」とした。17日に都内で開かれた日病薬の通常総会で説明した。
処方箋による調剤を規定している薬剤師法23条では、「薬剤師は、医師、歯科医師または獣医師の処方箋によらなければ、販売または授与の目的で調剤してはならない」としており、第2項では、「薬剤師は、処方箋に記載された医薬品につき、その処方箋を交付した医師、歯科医師または獣医師の同意を得た場合を除くほか、これを変更して調剤してはならない」と規定している。
土屋氏は、医師と事前に作成したプロトコルに基づく疑義照会の簡素化の根拠となるのが「同意を得た場合を除く」の部分だと指摘。通常、処方箋が交付された後に同意を得るが、事前に双方合意のもとでプロトコル(先発品で成分名が同一の銘柄変更など)を作成することで、「同意の取得を事前に行うようにしたものだ」と説明した。
薬局の疑義照会の中には、調剤上の形式的な変更に関するものも多く含まれ、処方医や薬局薬剤師の業務負担になっている。
こうした取り組みによって、結果的に医師への疑義照会は簡素化されることになるが、土屋氏は、疑義照会について、「薬剤師法24条で明確に規定されており、医薬分業の最大のメリットでもある」ことから、疑義照会の省略という表現は「薬剤師が義務を果たしていないということを自らアピールすることにつながり、明らかに間違い」と指摘。
土屋氏は、「やはり、23条と24条は分けて考えるべき」と強調した上で、「医薬分業を進める上で、疑義照会が増えるということは大事。疑義照会は増えたけど、事前同意で23条2項の医師への問い合わせを減らしたといった表現が望ましいのでは」との考えを示した。
出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
薬局と病院が事前に作成・合意されたプロトコルに基づき、薬剤師の裁量の範囲で一部の形式的な疑義照会を不要にする取り組みが「疑義照会の省略、簡素化」などと表現され、広く用いられています。それについて日本病院薬剤師会の土屋文人副会長は、「間違った使われ方をしている」と指摘し、「医薬分業を進める上で、疑義照会が増えるということは大事。疑義照会は増えたけど、(医師との)事前同意で23条2項の医師への問い合わせを減らしたといった表現が望ましいのでは」との考えを示しました。