薬剤師会

GE薬業界、80%後見据える‐信頼性確保からグローバルヘルスも

薬+読 編集部からのコメント

2020年9月までにGE薬の数量シェア80%以上を目指す方針が示される中、日本ジェネリック製薬協会(GE薬協)は、業界として各GE薬メーカーが進むべき方向性を明示した「ジェネリック医薬品産業ビジョン―日本の保健医療とグローバルヘルスを担う自覚と責任」を発表しました。
「期待される産業像の実現」、「安心・信頼の追求」、「未来への挑戦」の3つのテーマを設定。品質や安定供給の確保や情報提供強化、海外展開やバイオシミラー、医薬品卸との協業という方向性、ビッグデータの活用やグローバルヘルスへの対応という新たな役割も産業ビジョンに盛り込まれています。

産業ビジョンを策定

 

日本ジェネリック製薬協会(GE薬協)は、2020年9月までにGE薬の数量シェア80%以上を目指す方針が示される中、業界として各GE薬メーカーが進むべき方向性を明示した「ジェネリック医薬品産業ビジョン―日本の保健医療とグローバルヘルスを担う自覚と責任」を発表した。ビジョン1の「期待される産業像の実現」、ビジョン2の「安心・信頼の追求」、ビジョン3の「未来への挑戦」の三つのテーマを設定した。GE薬メーカーとして必須となる品質や安定供給の確保や情報提供強化はもちろん、海外展開やバイオシミラー、医薬品卸との協業という方向性、ビッグデータの活用やグローバルヘルスへの対応という新たな役割が盛り込まれており、80%後を見据えこれら三つを同時並行でスピード感を持って取り組むべきとしている。

 

国内市場のみの展開‐「先細りする」と言及

 

GE薬協では、GE薬数量シェア80%達成の具体的な時期が示される中、現在とは製薬産業を取り巻く環境が大きく変化すると予測している。将来の予見性が難しい時代において製薬産業の一員として役割を果たすためには、「質の高い効率的な医療への貢献」「グローバルな視点」でGE薬産業の目指すべき将来の方向性を明確にしておくことが絶対必要条件とし、業界として産業ビジョンを策定した。

 

ビジョン1の「期待される産業像の実現」では、GE薬メーカーがいま求められる海外展開や新たな流通体制への対応への指針を示した。日本国内だけではなく世界の医薬品産業全体のビジネスモデルが大きく変化し、業界の垣根がなくなるボーダーレス化の進展が予想されている。

 

業界内で各GE薬メーカーが競争ではなく共存していくためには、それぞれの役割を明確化させることが重要であり、その結果としてGE薬メーカーの集約化や大型化につながる可能性にも言及した。

 

現在のGE薬業界は、規模感があり専門性も備えた総合GE薬メーカーや、特定領域に強いスペシャリティGEメーカー、一般的な専業GEメーカー、先発品とGE薬を扱う先発系GEメーカー、受託製造企業の五つに大別した事業モデルが存在しているという。今後は、剤形の追加や新投与経路製剤などの研究開発機能に特化した企業、それぞれの剤形に特化し製造受託を行う企業、多くの品目の製造販売承認を取りそろえる総合企業、特定の領域の品目の製造販売承認に特化した企業とで事業戦略が変わってくると見通す。

海外展開、バイオシミラー‐医薬品卸との協業も

 

ただ、国内市場は人口減に伴い縮小傾向に向かい、世界人口のうち2%弱のマーケットにとどまることから、国内だけを相手にするビジネスでは「先細りとなり、展望は開けない」と限界点を指摘。持続的な成長を実現するためには世界市場を対象とした事業展開の必然性が高まるとし、GE薬メーカーに対して海外進出を促している。

 

既に日医工や沢井製薬など海外展開を進める企業や現在検討している企業も数社出現しており、高品質な日本のGE薬をリーズナブルな価格で提供できれば、「グローバルで一定の市場形成も可能」とする。その上で各社が海外展開を進めるにあたっては、米国、欧州、アジア、アフリカのそれぞれで課題が異なることから、各地域でリージョナル戦略を構築するグローバル化と現地化を推進すべきとした。

 

在宅医療・地域包括ケアシステムへの対応が時代の要請となる中、医療資源を有効活用する視点が重要となり、GE薬はますます大きな役割を果たすとしている。安全性情報の収集・分析におけるGE薬メーカーの役割も増大し、医科学情報を提供していくことも求められてきており、多くの品目を提供するGE薬メーカーとして、卸売業との連携を深め、新たな流通体制を構築する必要性も生まれていると指摘する。

 

バイオシミラーについても、「GE薬産業が積極的に対応することが求められている」と、新薬メーカー中心の産業構造となっている現状から転換する必要性を示した。

情報発信にICT活用‐スマートな体制に

 

ビジョン2の「安心・信頼の追求」は、GE薬メーカーが安定供給や品質に対する信頼性確保、情報発信に継続して取り組むことは基本であるとし、今後も地道に努力していく姿勢を示したもの。

 

安定供給では、原薬のダブルソース化を進めることでコストアップの問題を抱えるが、品質確保とコストの低減を両立できる仕組みの構築が必要とした。行政に対しても原薬変更にかかる承認審査システムの迅速化を期待し、各社が生産している体制の見直しと共同生産体制の構築も目指していく。品質管理では、海外での原薬や製剤の製造、国内でも他社委託が加速することが見込まれ、効率的な生産方法や品質管理法などで知見を持つGE薬メーカーが主導的な役割を担うとした。

 

情報発信については、先発医薬品とGE薬の添付文書の内容共有化による充実した情報提供を目指す。長期収載品によっては承認整理される場合があり、長期収載品が集積した多様な情報が医薬品情報内で事実上消滅するため、関係者内で共有する仕組みを求めた。

 

また、人工知能やIoT、ビッグデータを活用した情報共有体制の構築や、自社資源を活用したオウンドメディアを使うことも一つの選択肢に挙げた。

グローバル社会に貢献‐広い経営的視野が大事

 

ビジョン3の「未来への挑戦」では、社会情勢の変化が激しく不確実な時代になる中、GE薬メーカーが日本の保健医療を担う自覚と責任を高めていかなければならないとの将来像を描く。健康長寿への貢献、病気にならないようにする未病対策も重要で、「日本再興戦略」で示されたデータヘルス計画と連携を図り、AIやIoTなどのICTの進展による医療・介護のパラダイムシフトを的確に捉え、GE薬産業として新たな行動を検討し、必要な対応を行うとした。

 

さらに、グローバルヘルスに対する貢献も果たしていく。医療先進国と言われる日本で感染症への恐怖や、先進国がたどってきた高齢化やそれに伴う慢性疾患の増加による様々な問題は、新興国では先進国以上のスピードで迫っており、2015年9月に国連総会で採択された「2030年アジェンダ」の17の持続可能な開発のための目標と169のターゲットが示される中、目標3「あらゆる年齢の全ての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する」を重点目標とし、細部に示された13の項目についてGE薬メーカー各社がそれぞれの特長を生かし、可能な範囲において取り組んでいく。

 

また、ダイバーシティ&インクルージョンや地球温暖化対策への貢献にも果たしていきたい考えだ。

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出典:薬事日報

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