医療費

薬価改定、長期収載品の売上減少‐外資系製薬日本法人にも影響

薬+読 編集部からのコメント

国内でも存在感を増す外資系製薬企業ですが、売り上げで明暗がはっきり出る結果となりました。
昨年は薬価改定の影響で、前年より減収の企業が多かったですが、過去最高の売り上げを更新するなど好調な企業も目立ちました。

リリー、ベーリンガーは好調

 

強力な開発パイプラインを武器に国内市場で勢いを増す外資系製薬企業。昨年は薬価改定の影響もあり、減収となった企業が前年よりも多かったが、過去最高売上を更新する企業も目立った。今後に向けては、ジェネリック医薬品の使用推進策もあり、低成長期へと突入する日本での事業展開をどう進めていくか。癌領域への参入や新薬事業への回帰、新薬ラッシュに向けた営業体制強化といった方向性に加え、日本の優れた基礎研究力を取り込み、日本のアカデミアと共同研究契約を結ぶケースも増えているようだ。

 

ファイザー、売上5000億円割れ‐サノフィは新薬回帰へ

 

世界の外資系製薬大手は、日本の医薬品市場でも主要な企業になっている。日本企業が強かった1990年代に比べると大きく様相が異なる。2015年で外資系製薬が占める割合は、国内売上トップ20のうち10社、日本市場シェア34%と勢いを増す。日本が出遅れたバイオ医薬分野で新薬を次々に開発し、日本市場にも投入することで、売上上位企業へと変貌を遂げた。

 

ただ昨年1年間は、長期収載品の売上減、主力品の苦戦が業績に響いた。クインタイルズIMSの調査で販促会社トップ、販売会社5位のファイザーは、16年度売上高が7.4%減の4737億円となり、5000億円を下回るのは11年度以来とマイナス成長に苦しんだ。主力品の末梢性神経障害性疼痛治療薬『リリカ』の拡大再算定によるダメージも大きかったようだ。国内では特許切れ医薬品市場で事業を拡大し、マイランやホスピーラの日本事業を手中にしてきた同社。今年度は、癌領域などで新薬5品目以上の承認取得を計画し、なんとか現状維持を目指していく。

 

サノフィも国内トップ売上製品として君臨してきた抗血小板薬「プラビックス」と、インスリン製剤「ランタス」の特許切れに直面。ファイザーと同じく、新薬とジェネリック医薬品の両輪で事業展開を進めてきた同社だったが、ジェネリック医薬品はオーソライズド・ジェネリック中心と限定し、新薬に回帰する方向。ビジネスユニット制をスタートさせ、「20年までに20製品以上の新薬を上市する」(ジャック・ナトン社長)と業績回復を図る。

 

MSDも「新薬ビジネスへの移行期」とし、16年度国内売上は前年比7.8%減の約3120億円と3年連続で減収となった。薬価改定の影響に加え、糖尿病領域の競争激化による主力のDPP-4阻害薬「ジャヌビア」の苦戦が続いている。

 

しかし、厳しい状況から反転しそうだ。昨年度には七つの申請、八つの承認を達成し、昨年上市した新薬として、抗PD-1抗体「キイトルーダ」とC型肝炎治療薬「エレルサ」「グラジナ」が今後の成長ドライバーとなる見通し。キイトルーダはグローバルで発売2年目にして売上14億ドルのブロックバスター製品に成長。「エレルサ」「グラジナ」は、発売4カ月段階では未治療のC型慢性肝炎、C型代償性肝硬変患者に対して、急速なペースで浸透しているという。

 

業績回復期のノバルティス‐アストラゼネカは癌で成長

 

業績回復期といえばノバルティスファーマも同じ状況にある。16年度業績は3.7%減の2502億円。同社が13年2月に開催した記者説明会で発表された12年業績が3234億円であることを考えると、大きく売上を減らした。降圧剤「ディオバン」に関連した不祥事からの回復、長期収載品の売上減からの巻き返しに向け、同社の現在地は「業績の底」(綱場一成社長)という認識だ。DPP-4阻害剤「エクア」は好調で、配合剤を含め同領域で国内トップをうかがう。

 

19年以降に新薬ラッシュを控える。組織改編として、グループ会社の日本アルコンの医薬品事業本部とノバルティスファーマの眼科領域事業部が統合し、アルコンファーマとして眼科用医薬品の情報提供活動をスタートさせたほか、呼吸器領域を発展的に改組し、COPDをプライマリーケア、喘息をスペシャリティケアに組み入れ、テコ入れを図った。

 

アストラゼネカは、3%減の約21億ドル(約2280億円)。数量ベースでは8%の伸びとなった。一時的に売上を減らしたとはいえ、クインタイルズの売上ランキングで12年の12位から6位に躍進している。BRCA遺伝子変異陽性卵巣癌を適応とするPARP阻害剤「オラパリブ」は期待する新製品だ。グローバルでは、米メルクと免疫チェックポイント阻害剤との併用療法などを含む契約を結んだ。メルクからアストラゼネカに支払われる総額は85億ドルと大型契約となった。

 

グラクソ・スミスクラインも1.7%減の2921億円と減収となった。今後も「呼吸器」を重点領域に、中でも承認を取得した重症喘息を対象とした抗IL-5抗体「ヌーカラ」に期待する。

 

ギリアドは国内トップ5‐8年間成長率3位のリリー

 

厳しい環境下で好調企業はどこか。代表的なのは、売上上位企業に躍り出たギリアド・サイエンシズだろう。クインタイルズIMSの調査では、国内販促会社ランキングでトップ5入りを果たし、売上は約7割増の3937億円となった。C型肝炎治療薬「ハーボニー配合剤」は2960億円と売上3000億円に迫った。

 

日本イーライリリーも成長を遂げている。3.1%増の2432億円、8年連続成長率3位以内という結果は他社を凌ぐ。14年に掲げた「23年までの10年間で20の新製品承認」という目標に向け、順調に進捗。抗うつ薬「サインバルタ」は疼痛の適応追加で36%増の416億円、抗癌剤「サイラムザ」は胃癌適応追加でほぼ4倍の289億円となったほか、糖尿病領域ではインスリングラルギンのバイオ後続品が4.6倍の31億円、GLP-1受容体作動薬「トルリシティ」やSGLT2阻害薬「ジャディアンス」も大幅に伸長し、国内売上ランキングでは12位に浮上した。20年度に目指すトップ10入りは現実的だ。

 

バイエル薬品は、4.8%増の2917億円と伸長し、12年と比較して1.5倍に拡大した。主力の経口抗凝固薬「イグザレルト」と眼科用VEGF阻害剤「アイリーア」が成長したほか、継続的な新薬の上市により、後発医薬品のない特許期間中、または再審査期間中の製品における全製品に占める売上高の割合が8割を超えた。

 

アッヴィは日本売上1000億円‐今年は試練のベーリンガー

 

アッヴィは、世界トップ売上を誇る関節リウマチ治療薬「ヒュミラ」とC型肝炎治療薬「ヴィキラックス」が牽引し、国内売上高1000億円以上という事業目標を当初計画よりも4年も前倒しで達成した。今後はBCL-2阻害剤「ベネトクラクス」などの抗癌剤開発を進め、19年以降に癌領域への参入を果たす。

 

ノボノルディスクファーマも2.1%増の908億円と国内売上高の過去最高を更新した。糖尿病のスペシャリティファーマとして日本で積極的な研究開発を行い、GLP-1アナログ製剤「セマグルチド」の経口剤が第III相段階に進むなど、今後も新製品を上市させていく方針だ。

 

日本ベーリンガーインゲルハイムは、14年連続で増収を達成し、昨年度は過去最高の2586億円となった。2型糖尿病治療薬のSGLT2阻害剤「ジャディアンス」や特発性肺線維症治療薬「オフェブ」、COPD治療薬「スピオルド」といった15年に上市した新製品が牽引した。

 

ただ、今年は主力の降圧剤「ミカルディス」の特許切れを控え、厳しい年になりそうだ。直接経口抗凝固薬(DOAC)「プラザキサ」、プラザキサの特異的中和剤「プリズバインド」で難局を乗り切る。

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出典:薬事日報

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