薬剤師会

抗菌薬使用量、集計手引き作成へ‐中小病院のAMR対策を支援

薬+読 編集部からのコメント

世界中で問題になっている薬剤耐性菌。
厚生労働省からの委託事業の一部として、国立国際医療研究センター病院AMR臨床リファレンスセンターは、薬剤耐性(AMR)対策のためのマニュアルを作成しました。中小病院などで、抗菌薬使用量調査の実施を支援するものです。
また、それらのデータを解析するためのプラットフォームの整備もしていく考えです。

国立国際医療研究センター病院AMR臨床リファレンスセンターは、厚生労働省委託事業の一環として、薬剤耐性(AMR)対策を国内に幅広く浸透させるため、中小病院などにおける抗菌薬使用量サーベイランスの実施を支援するマニュアルを作成する。また、薬剤耐性菌と抗菌薬使用量のサーベイランスデータを様々な視点から解析できるプラットフォームの整備も推進する。AMR対策に取り組む医療機関のすそ野を広げて、日本の感染症診療の底上げを図りたい考えだ。


作成するマニュアルは3種類。その一つ「抗微生物薬の使用量集計マニュアル」(仮称)はその名の通り、各病院における抗微生物薬の使用量を集計するための具体的な方法を分かりやすく解説するもの。一般的に使用量が大きいほど薬剤耐性菌は出現しやすいと考えられている。AMR対策の指標として、施設内の使用量の推移をモニタリングしたり、他施設と比較したりすることは有用だ。

 

現在、薬剤師を中心にした6人の委員が策定作業に取り組んでいる。A4で10~20ページ程度の内容になる見込み。2018年3月末までに草案を作成し、評価を受けた上で最終的な成果物をPDFの形で公開する予定だ。

 

同様に「アンチバイオグラム作成マニュアル」(仮称)や「院内アウトブレイク対応マニュアル」(仮称)の作成も進める。これらのマニュアルはいずれも専門家から見れば常識的なことを含め分かりやすく整理し、これからAMR対策に取り組もうと考えている病院に、入門編として活用してもらうためのもの。

 

AMR臨床リファレンスセンター情報・教育支援室長の医師、具芳明氏は「学会は専門性の高いガイドラインを作るのが大きな役割の一つ。中小病院に感染症の専門家は少なく、学会のガイドラインは届きにくいし使いづらい」と具氏。そこから抜け落ちたところをカバーし、「専門家のいない中小病院や診療所でも取り組めるように支援したい。全体の底上げが私たちのミッション」と狙いを話す。

 

使用量と耐性菌頻度の相関、同一プラットフォームで解析

 

このほか、既存のサーベイランスシステムを活用し、薬剤耐性菌と抗菌薬使用量のデータを各医療機関が様々な視点から解析できるプラットフォームの整備も進める。

 

既存のシステムの一つがインターネットを通じて全国の医療機関から各抗菌薬の使用量、使用日数、施設の基本情報などのデータを収集する「抗菌薬使用動向調査システム」(JACS)

 

もう一つは、参加医療機関における院内感染の発生状況や薬剤耐性菌の分離状況、薬剤耐性菌による感染症の発生状況を調査する「厚生労働省院内感染対策サーベイランス」(JANIS)。これらのデータを読み込み同じプラットフォーム上で解析できる仕組みの構築を目指している。

 

「例えば、各医療機関や各地域における抗菌薬の使用量と薬剤耐性菌の頻度の相関を調べたい場合には、JACSとJANISからそれぞれデータを出力して解析する必要があり、手間がかかる。同じ画面上でこの解析作業を容易に行えるようにしたい」と具氏は語る。既存の「感染対策の地域連携支援システム」(RICSS)を発展させてプラットフォームを立ち上げ、来年度にはトライアルを実施する予定だ。

 

抗菌薬の使用量や薬剤耐性菌の頻度をモニタリングできれば、自施設で講じたAMR対策の効果を評価しやすくなる。各医療機関が容易に自施設データを登録できるようにボタンを押せば院内のデータベースから自動的に抗菌薬の使用量を集計できるアプリケーションの作成にも取り組む。

 

併せて、登録された医療機関をグループ化して解析できる機能も設ける計画。大学病院や系列病院、専門病院ごとにグループ化したり、地域ごとにグループ化したりして解析した結果は、自施設と比較する指標として役立てられる。これらの仕組みによってサーベイランスに参加する医療機関を増やし、全体を底上げしたい考えだ。

 

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出典:薬事日報

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