医療

【厚労科研で中間結果】抗癌剤の副作用重篤化回避‐薬局薬剤師が電話フォロー

薬+読 編集部からのコメント

厚生労働科学研究班が「薬剤師が担う医療機関と薬局間の連携手法の検討とアウトカムの評価研究」の中間解析結果を発表しました。
薬局で抗がん剤などの投薬を行うことが増えていますが、いったん医師や薬剤師から説明を受け、薬を受け取った後、何週間も間が空いてしまい、その間に起きた副作用について患者さんが相談できない、またはわざわざ相談しに来るのをためらう状態となることがあります。また、病院薬剤師との意思疎通も、処方箋のみを通じての場合、十分でないことが指摘されていました。
そこで厚生労働省の研究班は、病院と患者のかかりつけ薬局が経口抗癌剤治療管理に関する「プロトコールに基づく薬物治療管理」(PBPM)を適用して、薬剤師が電話で患者さんに様子を尋ね、医師とも連携してフォローする体制をとったらどうなるかを調べたところ、薬局の介入によって副作用の重篤化を回避し、患者さんの安全に直接寄与したと認められる結果が出ました。

外来化学療法にPBPM

外来癌化学療法について、病院と薬局が経口抗癌剤の治療管理に関するプロトコールを交わし、合意に基づいて薬局薬剤師が次回来院時までの間に発生した副作用の有無等を電話でフォローアップしたところ、休薬や処方変更等によって副作用の重篤化を回避できたことが、厚生労働科学研究班「薬剤師が担う医療機関と薬局間の連携手法の検討とアウトカムの評価研究」(代表:安原真人帝京大学薬学部特任教授)の中間解析結果で明らかになった。副作用の不安解消や対処方法の指導など、薬局薬剤師が介入することで、患者の安心と安全な抗癌剤治療につながっていた。


抗癌剤や支持療法薬の院外処方が急増する中、薬局で服薬指導を行う機会が増えているものの、例えば4週間ごとに通院している場合、外来診療後に患者が医師や薬剤師と接するのが4週間後になってしまい、その間に発生する副作用などの問題に十分対応できない課題があった。また、処方箋を通じた情報伝達のため、病院と薬局で患者情報が十分に共有できず、連携が不十分な現状があった。

こうした課題を解決するため、研究班は外来癌化学療法について、病院と患者のかかりつけ薬局が経口抗癌剤治療管理に関する「プロトコールに基づく薬物治療管理」(PBPM)を適用し、薬局薬剤師が来院時から次回来院時までに副作用の発生有無や服薬状況に関して電話によるフォローアップを行い、薬局薬剤師が発生を把握したイベントと重篤度を評価する研究を実施した。

調査対象は、国立がん研究センター東病院、昭和大学横浜市北部病院、東京医科歯科大学病院、愛知県がんセンター中央病院、長崎大学病院の医療機関で経口抗癌剤の「ディーエスワン」か「ゼローダ」を処方され、共同研究に参加した日本調剤柏の葉公園薬局、クオール薬局港北店、さくら薬局御茶ノ水駅前店、三聖堂薬局自由ヶ丘店、エムハート薬局自由ヶ丘店などの薬局で調剤を受けた同意が得られた患者。

プロトコールでは、電話フォローアップで患者にインタビューした内容を薬局薬剤師がチェックシートに記載し、病院に送信。病院薬剤師が緊急性を判断して医師に報告、必要な指示を薬局に行うこととし、薬局薬剤師が来院時から次回の来院時までに副作用の発生有無や服薬状況に関して電話でフォローアップを1回以上実施。その間に発生した副作用の発生や悪化、治療に影響するイベントについて薬局薬剤師が把握し、重篤度を評価した。

予めプロトコールに定めた重篤度以上に該当する場合は、薬剤の服用中止や臨時受診、緊急入院の勧奨などを行い、それ以外はプロトコールに沿って副作用への対処法の指導などを実施し、電話フォローアップによる薬局の介入を集計。昨年10月時点での103人について中間的に解析した結果をまとめた。

その結果、患者103人で344件の服薬情報提供書が報告され、薬局薬剤師の電話フォローアップがきっかけの予定外受診が3人で4件、抗癌剤の休薬が8件あり、緊急入院はなかった。また、重篤でないイベントで医師への処方提案を行ったのが42件、そのうち20件(48%)と約半数で処方に反映されたことが分かった。これら電話フォローアップによる薬局の介入は、副作用の重篤化を回避し、患者の安全に直接寄与したと考えられた。

 

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出典:薬事日報

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