薬剤師のためのお役立ちコラム 更新日:2019.12.27公開日:2016.03.18 薬剤師のためのお役立ちコラム
bnr

いよいよ始まったマイナンバー制度。「会社や薬局でマイナンバーの「取扱担当者」に任命された」「適切な管理体制を作るように求められた」という方もいるかもしれません。このコラムでは薬剤師が個人として、事業者として、マイナンバーをどう扱うべきかをお伝えします。マイナンバー制度の基本、薬剤師として必要な情報はここでチェック!

第1回 事業者がマイナンバーを収集する理由

マイナンバーは、「社会保障」「税」「災害対策」の3つの分野で使用されることになっています。今のところ、「災害対策」についてマイナンバーを企業が使う場面は示されていませんので、今回は大きく分けて「社会保障」と「税」について解説します。

従業員以外にも「税」の手続きにマイナンバーが必要!

直感的にわかりやすいのが「税」の部分でしょう。所得を把握することで、「公平・公正な社会を実現する」ということがよく報道されました。
従業員に対しては給与を支払うため、所得税の源泉徴収票や扶養控除の申告書などにマイナンバーを記載します。また、株主がいる場合は、配当や剰余金の分配がありますので、支払調書への記載が必要です。
そして、意外と忘れがちなのが取引先。ドクターや税理士、弁護士など「個人」で仕事をしている人に講演や記事の執筆などの仕事を依頼し、支払いが発生した場合にも、支払調書への記載が必要になります。

必要な手続きが多い「社会保障」

「社会保障」は従業員に関連する手続きになります。厚生年金や確定拠出年金などの「年金分野」、雇用保険などの「労働分野」、児童扶養手当や医療保険などの「福祉・医療・その他分野」に分けられます。
具体的には、役所や行政機関に提出する書類にマイナンバーの記載が必要になります。例えば、年金であれば「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得/喪失届」、雇用保険であれば「雇用保険被保険者資格取得/喪失届」といった書類があります。新たに社員を採用した、社員が退職した、という場合には必ず提出する書類ですので、担当している人にとっては身近な内容でしょう。

こうした手続きに関わる方は、どの業務でマイナンバーが必要になるのか、業務を洗い出して運用ルールを作成しておくとよいでしょう。その際、マイナンバーの管理方法はとても重要なポイントです。
万が一のためにマイナンバーが記載された書類をコピーして手元に残すことがあるかもしれませんが、これでは情報漏えいの危険があるだけでなく、不要になったときに廃棄するタイミングが難しくなります。マイナンバーは収集・保管だけでなく、「不要になったときの廃棄」まで管理することが求められているためです。
マイナンバーを記載する前に書類のコピーを取っておき、提出する書類のみにマイナンバーを記入するルールにして、手元にマイナンバーの情報を残さない、というのも一つの方法です。

マイナンバーの収集には「利用目的の通知」が必要

上記の通り、税や社会保障を適正に管理して行政機関に提出するため、事業者は「従業員」や「取引先」などのマイナンバーを収集する必要があります。これは、企業が従業員などの代わりに税や社会保障の手続きを行っており、この手続きにマイナンバーの記載が必要なためです。
そして、収集する際には「利用目的」を通知する必要があります。有名な制度だからといって、何も通知せずに提出を求めてはいけません。取引先に依頼する場合は「支払調書への記載」といった目的だけで十分ですが、従業員に対しては個々の目的を明記する必要があります。

なお、薬局は現時点では患者のマイナンバーを扱うことはできませんが、2017年7月以降の導入が検討されている医療等番号制度においては、医療機関で患者のマイナンバーを取り扱うことも想定されています。新しい情報が出ていないか、政府などの発表に注意を向けておきましょう。

また、個人としてマイナンバーを提出する際には、利用目的の内容の確認を忘れずに。「社会保障」「税」「災害対策」以外の目的に使用することは禁止されていますので、どのような目的で収集されているのか、考えてみることが必要になります。

マイナンバー制度について、不明点があれば内閣官房のホームページ「お問い合わせ」をご確認ください。
次回は、収集したマイナンバーの安全な管理方法についてご紹介します。

増井 敏克(ますい としかつ)

増井技術士事務所 代表。技術士(情報工学部門)。
情報セキュリティやソフトウェアの開発など、コンピュータを「正しく」「効率よく」使うためのスキルアップ支援を行っている。マイナンバーに関する講演も多数実施。
また、ビジネス数学検定1級に合格し、公益財団法人日本数学検定協会認定トレーナーとして活動。
近著に「おうちで学べるセキュリティのきほん」(翔泳社)、「プログラマ脳を鍛える数学パズル」(翔泳社)がある。

増井 敏克(ますい としかつ)

増井技術士事務所 代表。技術士(情報工学部門)。
情報セキュリティやソフトウェアの開発など、コンピュータを「正しく」「効率よく」使うためのスキルアップ支援を行っている。マイナンバーに関する講演も多数実施。
また、ビジネス数学検定1級に合格し、公益財団法人日本数学検定協会認定トレーナーとして活動。
近著に「おうちで学べるセキュリティのきほん」(翔泳社)、「プログラマ脳を鍛える数学パズル」(翔泳社)がある。