薬剤師のためのお役立ちコラム 更新日:2019.12.27公開日:2016.08.19 薬剤師のためのお役立ちコラム
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いよいよ始まったマイナンバー制度。「会社や薬局でマイナンバーの「取扱担当者」に任命された」「適切な管理体制を作るように求められた」という方もいるかもしれません。このコラムでは薬剤師が個人として、事業者として、マイナンバーをどう扱うべきかをお伝えします。マイナンバー制度の基本、薬剤師として必要な情報はここでチェック!

第6回 医療等IDとマイナンバーの今後

マイナンバーの利用範囲は、制度開始時点では税と社会保障の分野に限られていました。しかしマイナンバー改正法が2015年9月に成立し、金融分野や医療分野まで範囲が拡充されました。具体的には特定健診・保健指導の管理や予防接種履歴の連携が挙げられており、2017年の後半には利用が開始されるかもしれません。
また、マイナンバーだけでなく医療等IDに関する議論も進められています。医療等IDとは「医療情報を突き合わせるための識別子」のことで、マイナンバーとは別に付与される予定です。その状況についても整理しておきましょう。

2016年8月現在、医療等IDの状況は?

マイナンバーが医療のどのような場面で使われるのか、まだ明確な方針は決まっていません。しかし、マイナンバーが検討される以前より「社会保障カード」の発行については議論されてきました。さらに、2011年6月に内閣官房より出された「社会保障・税番号大綱」では、医療現場への番号制度導入についても記載されています。
出典:内閣官房ホームページ

当初のマイナンバー制度では、利用範囲は税と社会保障だけの予定でした。しかし、2015年12月に厚生労働省より出された「医療等分野における番号制度の活用等に関する研究会」によると、マイナンバー制度のインフラを医療等IDとして活用することが記載されています。
出典:厚生労働省ホームページ

医療等IDが求められる背景

マイナンバーで個人情報が管理されることに抵抗がある人も多いかと思います。一方で少子高齢化や医療費の高騰により、年金・医療・介護分野でのきめ細かな社会保障給付の必要性は高まっています。
医療等IDを付与するメリットとしてわかりやすい例は、「災害時」の措置。災害でかかりつけの病院が被災した場合、個人の医療情報が失われてしまう可能性があります。しかし保険者の情報を医療等IDで確認できれば、災害時にも継続的な医療の提供が可能になります。
また転居した場合にも、健診情報や予防接種の履歴を確認できることで、効率良くサービスを提供できますし、医療費の削減にもつながります。

マイナンバーをそのまま使えないの?

マイナンバーカードのICカード機能を使えば、それだけで年金手帳や保険証などにも流用できそうなもの。一枚のカードだけで管理ができればより便利になります。しかし、医療分野等で取り扱われる情報は個人の生命・身体・健康等に関わっており、特に機微性が高いもの。病歴や健康診断の結果などは第三者に知られたくない人が多いでしょう。
マイナンバーのように番号を使うと、提出書類や備忘録としてIDを紙に書くなど、人の手を介在するためセキュリティ上のリスクが増えます。そこで医療等IDでは、目に見えない番号を使用して、システム連携のためだけのID付与が検討されています。

具体的にどんなIDが想定されているの?

上述の「医療等分野における番号制度の活用等に関する研究会」の報告書によると、まず住民票コードと対応している「キーとなる識別子」が見えない番号としてシステム内で生成されます。これを元にして、地域医療連携に用いられる「地域医療連携用ID(仮称)」や、研究活動に用いられる「データ収集に用いる識別子」、「支払基金(医療保険)の機関別符号」などが発行されることになっています。

しかし、「IDを用意するだけ」では情報の連携はできません。個人情報の重要性を利用者が認識したうえで、説明を受けて同意する必要がありますし、自らの医療情報が活用されることについて理解してもらわなければなりません。
このように、1人の患者に対して複数のIDが発行されることになりそうですが、まだまだ明確な方針は決まっていません。薬剤師としては、医療等IDやマイナンバーの今後の動向について注目するだけでなく、どのような使われ方をするのか理解し、説明できるようにしておきましょう。

次回は「医療保険のオンライン資格確認とマイナンバー」についてご紹介します。

増井 敏克(ますい としかつ)

増井技術士事務所 代表。技術士(情報工学部門)。
情報セキュリティやソフトウェアの開発など、コンピュータを「正しく」「効率よく」使うためのスキルアップ支援を行っている。マイナンバーに関する講演も多数実施。
また、ビジネス数学検定1級に合格し、公益財団法人日本数学検定協会認定トレーナーとして活動。
近著に「おうちで学べるセキュリティのきほん」(翔泳社)、「プログラマ脳を鍛える数学パズル」(翔泳社)がある。

増井 敏克(ますい としかつ)

増井技術士事務所 代表。技術士(情報工学部門)。
情報セキュリティやソフトウェアの開発など、コンピュータを「正しく」「効率よく」使うためのスキルアップ支援を行っている。マイナンバーに関する講演も多数実施。
また、ビジネス数学検定1級に合格し、公益財団法人日本数学検定協会認定トレーナーとして活動。
近著に「おうちで学べるセキュリティのきほん」(翔泳社)、「プログラマ脳を鍛える数学パズル」(翔泳社)がある。