薬剤師の白衣は、どの部分が汚れやすい?
薬剤師が一番使う身体の部位はなんといっても「手」。白衣のなかでも、最も汚れやすいのが袖口です。調剤台は常に清潔な状態に保たれているので、袖が触れても汚れることはあまりありませんが、調剤以外のレジ打ちやメモ書きなどで汚れてしまうのです。次に汚れるのが下腹部辺り。カウンターや机の側面に当たることで、黒ずみができてしまいます。荷物を運ぶときに汚れる場合もあり、ボタンも取れやすいのではないでしょうか?
また意外と気がつかないのが、白衣の裾です。下に置いてあるものを取るためにかがんだときなど、白衣の裾が床につき汚れが付着してしまいます。さらに、見えない部分で気になるのはポケット部分。忙しいときにボールペンのペン先を出したままポケットに入れたことで、生地に色をつけてしまうことも。
そのほか、襟周りには皮脂やメイク汚れがつきやすく、脂汚れが残ってしまいます。ちょっとした汚れであっても、患者さんから見ると衛生的ではありません。汚れやすい部分やその原因を確認しながら、汚れの落とし方をマスターしておきましょう。
それぞれの汚れの落とし方
汚れの質が違えば、落とし方も異なります。汚れの原因が油性か水性かタンパク質かなどによって、使う洗剤を選びましょう。
例えばボールペンのインクがついた場合は、消毒用エタノールで落とすととてもきれいになります。方法は簡単。2枚のガーゼと消毒用エタノールを準備しましょう。インクがついた部分の下にガーゼを敷き、消毒用エタノールを数滴落とします。その後、もう1枚のガーゼで上から軽くたたきます。下のガーゼにインクがつかなくなるまで、消毒用エタノールを加えながら何度か繰り返します。濃い汚れが落ちたら、あとは洗濯機に入れて全体を洗うだけ。消毒用エタノール以外にベンジンや除光液でも代用できます。
皮脂や黒ずみの汚れが残りやすい襟周りや袖口は、部分洗いをしてみましょう。使い古した歯ブラシに洗濯洗剤を多めにつけ、気になる部分をこすり洗い。その後、洗濯機に入れて洗います。
白衣の素材に合わせた洗剤選びも忘れずに
白衣が綿やポリエステル素材なら弱アルカリ性の粉末洗剤、ウールが混ざっていれば中性洗剤がおすすめです。襟や袖口の黄ばみが強ければ、酸素系漂白剤を併用しましょう。ウール系には、粉末ではなく液体タイプの洗剤を使う方が良いでしょう。予洗いでも落ちにくい頑固な汚れは、部分洗いをしたあと、さらに50℃以上の湯にしばらくつけておくと落ちやすくなります。
白衣汚れ予防 糊付け(のりづけ)効果
洗濯機に任せた白衣洗いが終了したら、もうひとがんばりして、糊付けにも挑戦してみましょう。パリッとした感触だけでなく、清潔感も高まります。また、糊付けすることで汚れがつきにくく、次の洗濯時には糊と一緒に汚れが落ちてくれるため、手入れも簡単に。糊付け用の糊には、デンプン糊と合成糊の2種類があります。昔ながらのデンプン糊は少し手間がかかりますが、合成糊であれば手軽です。
糊付けを洗濯機で行う場合、脱水したあとに糊付けする白衣を洗濯機に残し、適量の糊剤を入れます。その後、3分程度洗濯機を回し、かるく脱水します。脱水しすぎると糊がとれやすいので注意しましょう。
白衣の枚数が少ない場合は、手作業でも簡単です。白衣がつかる程度の水に適量の糊を混ぜ、白衣を浸します。このとき、糊が白衣に行き渡るように手でもみ込むようにしてください。その後は洗濯機でかるく脱水してから干します。白衣は糊の濃度によって着心地が変わります。少しずつ濃度を変えて、自分好みの肌触りを見つけましょう。
合成糊の使用にあたっての注意
合成糊の成分であるPVA(ポリビニルアルコール)は化学物質であり、人によってはアレルギー反応が起こります。特にアトピー素因がある人は注意してください。デンプン糊での糊付けも難しい場合は、型崩れしにくい素材の白衣を選ぶとよいでしょう。
清潔な白衣は薬局のシンボル
きれいな白衣は清潔な薬局、衛生的な調剤室を連想させます。自分自身の身だしなみだけでなく、白衣を美しく保つことも薬剤師の仕事といえるかもしれません。
文/村田直子(現役薬剤師ライター)
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