患者さんとの信頼関係を築くことから
他人に近づかれて不快に感じる距離を「パーソナルスペース」と言いますが、よく知らない人がいきなり顔を寄せてきたら、誰しも警戒したり不快に感じたりするものです。たとえば、互いに打ち解けて信頼を寄せている関係の場合、顔を近づけられても怒ることはないはず。でも、知らない人が突然耳元に近づいてきたら、ムッとするのではないでしょうか。
相談者さんの行動は、説明が伝わるように良かれと思ってやったこととはいえ、患者さんが怒るのも無理はありません。たとえ患者さんの耳が遠いとしても、目上の人に対する敬意と思いやりの気持ちを持って、行動する姿勢が欠かせません。
難聴患者さんには顔を見ながらゆっくり話す
そこで、難聴の患者さんとのコミュニケーションをスムーズにする5つのコツを紹介します。
①口の動きや表情を見せる
②低いトーンで、ゆっくり短く区切って話す
③話す前にトピックを伝える
④分かりやすい言葉を選ぶ
⑤目を見て話す
1つ目は、口の形や表情が見やすい環境を作ること。高齢者は、口の動きを見ながら話を聞いて理解することが多いようです。マスクを着用すると口元が見えず、音も聞き取りにくくなるため、可能であれば外しましょう。
2つ目は、声の大きさやトーン、話すスピード、話しかける距離に気を付けます。高齢者は高音が聞き取りにくいため、低いトーンで話すのが理想的。耳元で大きな声で話すとかえって聞き取りにくいようです。数十cm程度離れた距離から、聞こえているか、理解しているかを確認しながら、声の大きさやトーンなどを微調整し、ゆっくりと短く区切りながら話しましょう。
3つ目のコツとして、話し始める前に「〇〇のお話ですが……」とトピックを伝えることも効果的です。話す内容はできるだけ簡潔にし、話題も絞り込みます。
4つ目、丁寧な言葉遣いよりも普通の言い回しで伝えましょう。たとえば「朝食は召し上がりましたか」よりも「朝ごはん、食べましたか?」のほうが理解しやすいようです。相手の反応を見て、より分かりやすい言葉に置き換える配慮が欠かせません。
最後に、患者さんの目を見ながら話すこと。患者さんと正面で向き合い目線の高さを合わせましょう。ジェスチャーや筆談も加えるとより一層丁寧です。
たとえ高齢で耳が遠い患者さんでも、最も大切なのは信頼関係です。目上の人への思いやりや気配りを忘れず、節度あるコミュニケーションを心がけてほしいと思います。
株式会社スマイル・ガーデン代表取締役。
薬剤師として総合病院薬剤部、漢方調剤薬局、調剤薬局で20年以上にわたり調剤、患者応対を経験。管理薬剤師として社員の人材育成に注力する。
現在は医療現場経験を活かし、医療接遇コミュニケーションコンサルタントとして活躍中。
マイナビ薬剤師・連載コラムが書籍化された、
「患者さん対応のプロをめざす! 『選ばれる薬剤師』の接遇・マナー」が
2017年7月19日 同文舘出版より発売。
株式会社スマイル・ガーデン : https://smile-garden.jp/
ブログ「いつもワクワク Always Smiling!」: https://smilegrdn.exblog.jp/
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