話を聞く気があるかどうかを見極めましょう
まず、患者さんが来局されたとき、イヤホンをしていてもしていなくても、いつもと同じように挨拶やお声がけをしてほしいと思います。もしも「相手が聞いていないだろう」と思って挨拶しなかったら、患者さんはどのように感じるでしょうか。相談者さんの指摘通り、イヤホンをしていても周囲の音が聞こえている場合が多いため、患者さんは「自分だけ挨拶してもらえなかった」と感じるのではないでしょうか。
相談者さんは服薬指導を受ける患者さんがイヤホンやヘッドホンを着けていて、リアクションが薄いように感じるとのことですが、その理由は本当にイヤホン等の着用にあるのでしょうか。真剣に話を聞く気があれば、患者さんは最初からイヤホンをはずすように思えますし、イヤホンをしていなくても反応が薄い患者さんはいます。
そこで考えたいのは、そもそも患者さんが薬剤師の話を聞く気があるかどうか、です。
イヤホンをしたまま指導を受けるのは、「話を聞きたくない/薬だけもらって薬局スタッフと話したくない」という場合と、とくに意識せず単に音楽などを楽しんでいる場合の2通りに分かれるように思います。
とくに意図せずイヤホンを着けている患者さんは、話しかけられることを嫌がることもないため、質問されればちゃんと答えてくれると思います。一方、話しかけられるのが嫌でイヤホンをわざと着けている患者さんは、指導を聞く気持ちも薄いことが考えられるため、当然、指導内容も伝わっていない可能性が高いといえます。
ここまでをふまえた上で、リアクションが薄いように感じる場合、そもそも聞く気がないのか、単に聞こえていないためなのかを見極める必要がありそうです。
患者さんの意図を見極めるには、とにかく声をかけてみて、反応を見るしかありません。声をかけたとき、顔をしかめたり、少しでも嫌がるそぶりを見せたりすれば話をしたくないとわかりますし、イヤホンをはずして返事をしてくれれば話を聞く気があるとわかります。
イヤホンをはずしてもらえたら、「わざわざはずしてくださって、ありがとうございます。」などとお礼の言葉を伝えることを忘れずに。患者さんへの気遣いが伝わり、気持ちよく対話を進めることができます。薬剤情報には書かれていない注意事項などを伝えたり、処方薬に関する事項のヒアリングをしたりすると、「やっぱり聞いてよかった」「次は最初からちゃんと聞こう」と思ってもらえる可能性が高まります。
リアクションが薄い患者さんには、視覚情報を活用しましょう
たとえば、指導内容をメモして手渡したり、薬剤情報の重要事項にマーカーで印をつけたりして、口頭による伝達漏れを防ぐ努力をします。また、質問への反応が薄い場合、質問を紙に書いて返事を促したり、口の動きやジェスチャーを交えたりして患者さんの注意をひく努力をしたいところです。返事が必要だと感じてもらえたら、イヤホンをはずして返答してくれるかもしれません。
患者さんの気持ちを拝察して、患者さんが望む方法で指導する努力をすることが、患者さんの満足度を高める指導になると思います。目の前の患者さんだけでなく、周囲の患者さんも応対の様子を見ていることを忘れてはいけません。いつ誰が見ても聞いても、「感じがいい」「私も相談したい」と思ってもらえるような立ち居振る舞いを心がけてほしいと思います。
株式会社スマイル・ガーデン代表取締役。
薬剤師として総合病院薬剤部、漢方調剤薬局、調剤薬局で20年以上にわたり調剤、患者応対を経験。管理薬剤師として社員の人材育成に注力する。
現在は医療現場経験を活かし、医療接遇コミュニケーションコンサルタントとして活躍中。
マイナビ薬剤師・連載コラムが書籍化された、
「患者さん対応のプロをめざす! 『選ばれる薬剤師』の接遇・マナー」が
2017年7月19日 同文舘出版より発売。
株式会社スマイル・ガーデン : https://smile-garden.jp/
ブログ「いつもワクワク Always Smiling!」: https://smilegrdn.exblog.jp/
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