支持療法薬の処方せんを受け付けたら
支持療法薬とは抗がん剤や痛み止めの麻薬などによる副作用の治療、予防をする薬のことです。
がん患者さんが薬局に持ってくる院外処方せんは、
①抗がん剤や、がんのときにしか使用しないホルモン剤が書かれた処方せん
②医療用麻薬が書かれた処方せん
③支持療法薬が書かれた処方せん
主にこの3種類です。①と②は処方せんを見れば病名がわかりますが、③の処方せんは便秘薬、ステロイド剤、吐き気止めなど一般的な薬が主なので、患者さんががんなのかわかりにくいかもしれません。このような組み合わせの薬は、抗がん剤の副作用を抑えるために処方される場合があることを知っておく必要があります。
③の処方せんの患者さんに適した“声かけ”とは
自分ががんであることを知っている患者さんもいますが、患者さんと話す前には医師に、処方せんの意図を確認するとよいでしょう。医師が抗がん剤の副作用防止のために処方していた場合、患者さんにどこまでがんの話をしているか、必ず確認しなければなりません。
➢ 医師が患者さんに告知していて、病状を伝えている場合
抗がん剤の点滴などの副作用を抑えるために出ている薬(支持療法薬)だと伝えます。しかし、医師は患者さんにすべてを話しているとは限りません。医師が患者さんに話している情報の範囲内で服薬指導を行うようにしましょう。薬局の薬剤師は患者さんの情報が少ないので、可能であれば次回からは医薬連携で患者さんの情報共有をお願いしてみるといいかもしれませんね。この点は他の病気以上に重要です。
➢ 医師が患者さんにがんであると告知していない場合
現在ではあまりみなくなりましたが、稀にあるケースです。ステージⅣのがんが発見され、抗がん剤治療を行ってはいるものの、改善が困難と医師が判断している場合や、患者さんの性格から考えて告知しないほうがいいと医師が判断した場合などです。この場合の患者さんには薬について、「病院で受けた治療の副作用を抑える薬です」と伝えます。患者さん本人には話しにくいと感じた場合、ご家族に連絡して協力してもらいます。その際はご家族の性格や考え方を確認し、どのような伝え方が望ましいかなどの擦り合わせを医師と行いましょう。
医師の補佐役になりましょう
患者さんは病院で主治医と話す時間を充分にとれるとは限らないため、薬剤師に治療薬や治療の方針について尋ねてくることもあります。薬剤師からの説明で納得されなかった場合は「主治医の先生に一緒にうかがってみましょう。連絡を取りますから、待っていてください」と促し、医師と患者さんを結びつける補佐役にまわりましょう。
患者さんの不安に寄り添いましょう
がん患者さんが初めから自分の胸の内を薬剤師に話してくれることは、めったにありません。内心は話がしたいと思っていても、コミュニケーションの取り方がわからない方も多くいます。薬剤師は焦らず、心を開いて待っていましょう。そして患者さんが「副作用がつらい」「この先はどうなるのだろう」と話し出したら、まずは聞き役に徹します。なかには泣き出すことで、楽になるための糸口を見つける患者さんもいるでしょう。患者さんの不安を解決しようとするのではなく、寄り添い、その気持ちに共感することが大切です。
病院薬剤師と薬局薬剤師が連携してサポートを
今後、入院せずに病院の外来でがんの治療を受け、薬局で経口抗がん剤や支持療法薬を受け取るがん患者さんは、ますます増えるでしょう。そこで大切なのが、病院薬剤師と薬局薬剤師の交流、つまり「薬薬連携」です。病院で抗がん剤治療を受けたがん患者さんは病院薬剤師が、そして、病院を出てからのがん患者さんは薬局薬剤師がサポートしていきます。互いの情報を共有することで抗がん剤の副作用、体調の変化を総合的にみることができます。
薬局薬剤師はがんの知識はもちろん、がん患者さんの望むことや不安に感じることをキャッチできるコミュニケーションスキルを身につけることが大切です。
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