薬剤師のスキルアップ 公開日:2026.01.27 薬剤師のスキルアップ

オンライン服薬指導とは?薬剤師が実施するときの要件や流れについて解説

文:秋谷侭美(薬剤師ライター)

オンライン服薬指導とは、薬剤師が映像と音声を通じて患者さんに服薬指導を行う医療サービスです。対面に近いコミュニケーションを実現しながら、通院負担の軽減や感染症対策につながる点はメリットでしょう。しかし、安心・安全なオンライン服薬指導を実施するためには、デメリットや実施要件を把握することも大切です。本記事では、オンライン服薬指導の概要や実施要件、流れについてお伝えするとともに、関連する調剤報酬やメリット・デメリット、実施時のポイントについても解説します。

1.オンライン服薬指導とは?

オンライン服薬指導とは、薬剤師が患者さんに対して、映像および音声を用いたリアルタイムの通信手段を通じて行う服薬指導のことです。映像と音声を活用することで、お互いに表情や声の調子などを把握でき、対面に近い形でコミュニケーションを取ることが可能になります。
 
オンライン服薬指導は、患者さんの希望に応じて、薬剤師がその都度、専門的な判断と責任のもとで実施します。オンライン服薬指導を行う際には、通信環境の安定性やプライバシー保護の観点から、適切な機器とセキュリティ対策が必要です。
 
医療機関や薬局は、制度上の要件やガイドラインに基づき、患者さんの安全とセキュリティの信頼性を確保した上で運用しなければなりません。
 
参考:オンライン服薬指導に関する情報|厚生労働省

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2.オンライン服薬指導の実施要件

オンライン服薬指導を実施するには、薬剤師の判断、患者さんへの説明、通信環境の整備など、複数の要件を満たす必要があります。ここでは、厚生労働省の「オンライン服薬指導の実施要領について」をもとに、オンライン服薬指導の実施要件について詳しくお伝えします。

 

2-1.薬剤師の判断と責任

オンライン服薬指導は、薬剤師の専門的な判断と責任に基づいて実施することとされています。お薬手帳や他薬局・医療機関からの情報提供などから、服薬状況や処方内容を十分に把握した上で、オンラインでの服薬指導が実施できるかを判断しなければなりません。
 
オンライン服薬指導を開始後、患者さんから対面での服薬指導の希望があった場合や、薬剤師がオンライン服薬指導を実施しないと判断した場合は、対面の服薬指導に切り替えることが可能です。
 
また、初回処方でのオンライン服薬指導は避けた方がよい場合があります。特に、注射薬や吸入薬を処方されている患者さんは、手技を確認する必要があるため、対面による服薬指導が望ましいケースです。

 

2-2.患者さんへの事前説明

オンライン服薬指導を行うためには、以下について事前に患者さんへ説明することとされています。

 

● オンライン服薬指導の可否判断の基準
● 情報漏えいなどのリスクと責任の所在

 

上記は、服薬指導に利用する情報通信機器やアプリ、薬局のホームページに表示する形を取ってもよいとされています。

 

また、オンライン服薬指導の事前説明では、以下についても留意する必要があります。

 

● 認知機能障害などにより薬剤師と十分な意思疎通ができない場合は、患者さんの家族などを指導の対象にできること
● 説明事項に変更があった場合は、改めて患者さんに明らかにすること

 

薬剤師は、患者さんがオンライン服薬指導について理解を深められるよう、丁寧に説明しなければなりません。

 

2-3.プライバシーの確保

患者さんがオンライン服薬指導を受ける場所は、プライバシーが確保されるよう配慮することとされています。
 
また、介護施設等で複数人が同室に居住している場合、対面での服薬指導と同程度にプライバシーが守れるよう配慮して、患者さんごとにオンライン服薬指導を行う必要があります。
 
薬剤師については、薬局内または薬局外でのオンライン服薬指導が認められていますが、その場所には以下の要件があります。

 

● 患者さんのプライバシーを確保できる場所
● 調剤に関与する薬剤師と連携可能な場所
● 第三者が簡単に立ち入れない場所
● 患者さんの心身の状態に関する情報が第三者に認知されない場所

 

なお、薬局外でオンライン服薬指導を行う場合、薬剤師が必要な情報を得られるよう、患者さんの情報を共有できる措置が必要とされています。

 

2-4.通信環境

オンライン服薬指導では、「オンライン診療の適切な実施に関する指針」の策定について」を参考に通信環境を整備することとされています。
 
また、医療情報システムに影響を及ぼす可能性があるシステムや、個人が所有する端末を業務で使用する場合については、「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」に沿った対策が求められます。
 
なお、患者さんの通信環境については、希望に合わせて対応することとされています。

 

2-5.薬剤師の研修と体制整備

オンライン服薬指導では、薬剤師がICT機器の操作やセキュリティに関する知識を習得する必要があります
 
そのため、薬局開設者は、研修資料やe-learningの活用を通じて、薬剤師がスキルを習得できるようにすることが求められています。

 

2-6.薬の交付と品質管理

オンライン服薬指導が終わったら、品質を確保した状態で薬剤を速やかに患者さんに届けることとされています。
 
配送・郵送する場合は、確実に患者さんのもとに届く方法で行い、電話や配達記録などで受け取りの確認をしなければなりません。
 
また、初診からオンライン診療を実施している医療機関については、初診の患者さんに対して以下が処方されていないことを確認する必要があります。

 

● 麻薬および向精神薬の処方
● 基礎疾患などの情報が把握できていない患者さんに対する特に安全管理が必要な薬品の処方
● 基礎疾患などの情報が把握できていない患者さんに対する8日分以上の処方

 

以上の点を踏まえて、薬剤師がオンライン服薬指導を実施する際は、患者さんの安全を確保し、確実な薬剤提供を行うことが重要です。

 

2-7.薬局内の掲示やホームページへの掲載

配送料や薬剤費料などの支払いは、クレジットカード・振込・電子決済など柔軟に対応して差し支えないとされています。
 
薬局内やホームページには、オンライン服薬指導の時間や方法だけでなく、薬剤の配送方法や費用の支払い方法について掲示・掲載し、事前に患者さんへ周知する必要があります。

3.オンライン服薬指導の流れ

オンライン服薬指導は、処方箋の受け取りから服薬指導、薬の交付、費用の支払いまで、複数のステップに分かれています。

 

■オンライン服薬指導の流れ
1. 患者さんからの希望
2. 処方箋の受付 ● 患者さんが直接薬局に持参
● 処方医が薬局に処方箋情報をメールやFAXで送付(原本と一緒に保管)
3. 服薬状況や処方薬などの確認 ● お薬手帳や薬歴などで患者情報を確認
● 手技の説明が必要な薬剤などの有無を判断
4. オンライン服薬指導が実施可否を判断 実施不可の場合は理由を患者さんへ説明
5. オンライン服薬指導の実施 実施場所、本人確認、通信環境などに留意
6. 薬剤の交付 配送方法や支払い方法などの説明・確認
7. 薬剤使用期間中のフォローアップ 処方医と連携
8. 次回調剤 対面またはオンラインで実施

参考:オンライン服薬指導の実際|東京都薬剤師会

4.オンライン服薬指導に関連する調剤報酬

オンライン服薬指導に関連する調剤報酬には、服薬管理指導料4、在宅患者オンライン薬剤管理指導料、在宅患者緊急オンライン薬剤管理指導料などがあります。ここでは、それぞれの算定要件と点数についてお伝えします。

 

4-1.服薬管理指導料4

服薬管理指導料4は、情報通信機器を使用して服薬指導を行った場合に算定します。3カ月以内に再度処方箋を提出し、お薬手帳を提示した患者さんは45点、それ以外の患者さんには59点を算定します。

 

 

4-2.在宅患者オンライン薬剤管理指導料

在宅患者訪問薬剤管理指導料とは、在宅医療を受ける患者さんに対して、医師の指示のもと、患者さんの居宅で薬学的管理・指導を行った場合に算定する指導料です。
 
情報通信機器を使用してオンライン服薬指導を行う在宅患者オンライン薬剤管理指導料の場合は、59点を算定します。

 

 

4-3.在宅患者緊急オンライン薬剤管理指導料

在宅患者緊急オンライン薬剤管理指導料とは、在宅医療を受ける患者さんの急変などによって、医師の求めにより必要な薬学的管理・指導をオンラインで実施した場合に算定するものです。要件を満たした場合に59点を算定します。

 

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5.オンライン服薬指導のメリット

では、改めて、オンライン服薬指導を行うメリットについて確認しましょう。

 

5-1.プライバシーの確保がしやすい

オンライン服薬指導は、対面による服薬指導と比較して、プライバシーを確保しやすいのがメリットです。
 
薬局内での服薬指導では、すべての患者さんに個室を用意するのは難しいですが、オンラインであれば、患者さんも薬剤師も服薬指導を実施する場所を選べるため、プライバシーを確保しやすくなります。

 

5-2.残薬確認がしやすい

患者さんが自宅でオンライン服薬指導を受けることで、残薬確認がしやすくなります。患者さんによっては、医薬品の名称を覚えていなかったり、残っている数量があいまいだったりすることもあるでしょう。
 
自宅にいれば、画面を通して医薬品の名称と数量を確認できるため、より正確な残薬確認ができる点はメリットといえるでしょう。

 

5-3.患者さんの家族も服薬指導に同席できる

家族と一緒に服薬指導を受けたい意向があるものの、都合が悪く来局できないということもあるでしょう。オンライン服薬指導であれば、家族の予定に合わせて服薬指導の予約を取ることができ、家族が同席しやすくなります
 
患者さんだけでなく家族も服用薬について理解を深めることで、服薬アドヒアランスの向上が期待できるでしょう。

 

5-4.感染防止対策になる

自宅にいながら服薬指導が受けられることは、患者さん、薬剤師双方の感染防止対策となります。
 
乳幼児や高齢者、免疫力が低下している人など、特に感染症に気を付ける必要がある人にとって、大きなメリットとなるでしょう。

 

5-5.患者さんと薬剤師、双方の負担が軽減される

オンライン服薬指導は、通院時間や交通費の削減に加え、医療機関での待ち時間短縮も期待できます。受診できる医療施設が限られた離島やへき地などで、自宅にいながら医療を受けられることは患者さんにとって大きな利点でしょう。
 
また、患者さんと薬剤師双方の都合を合わせて実施するため、待ち時間のクレームにつながりにくい点もメリットといえます。

6.オンライン服薬指導のデメリット

オンライン服薬指導には多くのメリットがあるものの、デメリットもあります。そのため、薬剤師はデメリットも十分に把握した上で、オンライン服薬指導を実施する必要があります。ここではオンライン服薬指導のデメリットについてお伝えします。

 

6-1.設備や体制を整えなければならない

オンライン服薬指導を実施するには、薬局・患者さん双方で、音声や映像が途切れないような安定した通信環境が必要です。情報漏えいなどのセキュリティ面での対策や実施場所の確保も求められます。
 
また、薬剤交付のマニュアルを作成し、配送後に到着の有無を確認することはもちろん、冷所で保管する医薬品は品質を保つために梱包を工夫する必要があります。
 
オンライン服薬指導を始めるには、設備や体制を整備するために一定のコストや手間がかかる点はデメリットといえるでしょう。

 

6-2.コミュニケーションに限界がある

対面の服薬指導では、わずかなしぐさや目線、雰囲気から患者さんの理解度を把握できることがあります。しかし、オンラインでは、患者さんの様子を直接見ることはできないため、判断が難しくなることもあるでしょう。
 
また、薬を直接示せなかったり、お薬手帳の情報を確認しづらかったりすることがあるため、画面を通した情報では伝わらない部分が出てくるということは念頭に置いておく必要があります。

7.薬剤師がオンライン服薬指導を行うときのポイント

薬剤師がオンライン服薬指導を行うときのポイントについてお伝えします。

 

7-1.オンライン服薬指導の体制

オンライン服薬指導は、かかりつけ薬剤師・薬局が行うことが望ましいとされています。かかりつけ薬剤師・薬局は、患者さんの情報を一元管理しており、医療機関との連携も取りやすい状況にあります。疑義照会や処方変更が必要になった際にも、迅速に対応することができるでしょう。
 
また、すでに信頼関係を築けている関係性であるため、患者さんはオンラインでも安心して薬物治療の相談ができます。そのため、かかりつけ薬剤師や薬局がオンライン服薬指導をすることは、患者さんの安心・安全につながるでしょう。

 

 

7-2.処方箋の受付と調剤

オンライン服薬指導における調剤は、患者さんや家族が持参または郵送した処方箋以外にも、医療機関からメールやFAXで送付された処方箋情報をもとに行うことができます
 
厚生労働省の「「オンライン服薬指導における処方箋の取扱いについて」の改定について」では、医療機関から送付された処方箋情報は、処方箋の原本が手元に届くまで、処方箋として扱うことが可能とされています。
 
なお、送付された処方箋情報は、処方箋の原本と合わせて保管しなければなりません。

 

7-3.服薬指導の実施時の対応

患者さんの状態や状況、処方内容によっては、オンライン服薬指導を実施する前に資料の提供や情報収集が必要になる場合もあるでしょう。そういった場合には、以下のような対応をすることとされています。

 

● 事前に薬剤情報提供書などを送付
● 患者さんの希望に応じて薬剤の使用方法の説明などを実施
● 服薬状況の把握や副作用の確認
● 必要に応じて、患者さんの服薬状況などを医師へ情報共有

参考:オンライン服薬指導の実施要領について|厚生労働省

 

オンライン服薬指導では、患者さんの服薬アドヒアランスの低下を防ぎ、薬剤を適正に使用できるよう、必要に応じて対応しなければならないケースがあります。

 

7-4.本人確認の方法

オンライン服薬指導の課題のひとつとして、薬剤師が薬剤師であること、患者さんが本人であることが一目で判断できない点が挙げられます。
 
そのため、患者さんと薬剤師は、身分確認書類を活用して、薬剤師は薬剤師であること、患者さんは本人または家族であることを、お互いに確認してからオンライン服薬指導を実施することとされています。
 
薬剤師は顔写真付きの身分証明書や薬剤師免許など、患者さんはマイナンバーカードなどをお互いに提示することで確認を行います。ただし、お互いに薬剤師・患者本人と認識している場合は、その都度本人確認をする必要はありません。

8.オンライン服薬指導の今後の動向をチェックしよう

オンライン服薬指導は、もともとは離島や過疎地など医療機関にアクセスしにくい地域の患者さんでも、安心して医療を受けられる環境を作るために検討されていた施策です。
 
しかし、新型コロナウイルス感染症の流行により、オンライン服薬指導の可能性はさらに広がり、利便性が高まるだけでなく、感染症対策や薬剤師の偏在化に対する解決策、働き方改革としての効果も期待されています
 
課題も残るオンライン服薬指導ですが、さらに普及していくことが予想されており、今後の動向をしっかりチェックする必要があるでしょう。

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執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)

薬剤師ライター。病院・薬局で幅広い診療科を経験。現在は2児の子育てをしながら、Webライターとして活動中。専門的な資料や情報をわかりやすくかみ砕き、現場のリアルに寄り添う言葉で伝えることを大切にしている。同じ薬剤師として、日々の悩みやモヤモヤに共感しながら、少しでも役立つヒントや気づきを届けられるように試行錯誤中。