- 1. 30代薬剤師が抱えやすい年収にまつわる不安や不満
- 1-1. 希望のキャリアや年収が得られない
- 1-2. ライフスタイルの変化で年収が下がる
- 1-3. 人間関係への不満が年収への不満につながる
- 2. 30代薬剤師の平均年収はどのくらい?
- 2-1. 30代前半の薬剤師の年収は?
- 2-2. 30代後半の薬剤師の年収は?
- 3. 働く地域や職場によって薬剤師の年収は変わる
- 3-1. 地域別平均年収
- 3-2. 職場別平均年収
- 4. 30代薬剤師が考えたい「納得できる年収」のポイント
- 4-1. まだまだスキルを磨く段階
- 4-2. 優先したい条件と年収のバランスを考える
- 5. 30代薬剤師の年収アップのコツ
- 5-1. 管理薬剤師やエリアマネージャーになる
- 5-2. 専門的な資格を取る
- 5-3. 経験やスキルを武器に転職
- 6. 30代薬剤師は年収もワークライフバランスも大切
1. 30代薬剤師が抱えやすい年収にまつわる不安や不満
30代ともなれば薬剤師としてひと通りの経験やスキルを身につけ、仕事でも頼りにされる存在になっている時期です。一方で、30代にはライフスタイルの変化も起こりやすく、働き方に対して不安や不満を抱きやすい時期でもあります。ここでは、30代薬剤師が感じる、年収への不安や不満の例を見てみましょう。
1-1. 希望のキャリアや年収が得られない
それなりの実務経験がある30代は、さらなるステップアップを考えやすい時期です。そして、現在の職場で理想のキャリアや評価を得られていないと感じる場合、年収に不満を抱くこともあるでしょう。
管理薬剤師や薬局長といった管理職につきたいという目標があったとしても、ポジションに空きがなければ、役職に就くことはできません。認定薬剤師や専門薬剤師を取得・更新をしても、手当がつかなかったり、収入に反映されなかったりすれば、不満を感じるものです。希望通りのキャリアを積めなかったり、スキルや経験が評価されなかったりすると、現在の年収に不満や不安を抱くかもしれません。
1-2. ライフスタイルの変化で年収が下がる
結婚や子育てといったライフスタイルの変化が起こりやすい30代は、家庭と仕事の両立に悩む薬剤師も増えてきます。特に女性薬剤師は、妊娠や出産をきっかけに働き方を見直すケースが多い時期です。妊娠中のトラブルで急に入院することになったり、出産後に復職しても思い描いた働き方ができなかったりするなど、仕事と家庭の両立が難しく感じることもあるでしょう。プライベートを優先した職場や勤務形態を選んだことによって、理想の収入が維持できず年収に不満をもつこともあります。
1-3. 人間関係への不満が年収への不満につながる
調剤薬局や病院など、毎日きまった空間で過ごす時間が長い薬剤師は、仕事に対する考え方や作業スピードの違いなどによって、人間関係が悪くなることがあります。職場の人間関係にストレスを感じていても、ある程度収入が高ければ、ストレスを我慢する対価として納得できることもあるでしょう。しかし、人間関係のストレスと年収を天秤にかけて「割に合わない」と感じてしまうと、現在の年収に不満を抱きやすくなります。
2. 30代薬剤師の平均年収はどれくらい?
年収に不満を感じると、同世代の平均年収が気になってくる方もいるのではないでしょうか。厚生労働省の調査結果をもとに、30代薬剤師と職業全体(正社員・正職員)の、30代の平均年収を比較してみましょう。
2-1. 30代前半の薬剤師の年収は?
「令和2年賃金構造基本統計調査」によると、30代前半の男性薬剤師の平均年収は555.6万円、女性薬剤師の平均年収は503.5万円でした。職業全体(正社員・正職員)における30代前半の平均年収は、男性が489.4万円、女性が455.3万円でした。なお、同調査の30代前半とは30歳~34歳を、30代後半とは35歳~39歳を指しています。
30代前半の男性の平均年収は、薬剤師のほうが職業全体よりも約66.2万円高く、女性の場合は薬剤師のほうが職業全体よりも48.2万円高いという結果でした。20代の平均年収の傾向と同様、薬剤師の年収水準はその他の職業と比較して高水準にあることがわかります。
■30代前半の薬剤師の平均年収と職業全体の平均年収
※「所定内給与額」とは、6月分として現金給与額(控除前)から超過労働給与額(時間外勤務手当等)のこと。
※小数点以下第二位を切り捨て。
※年収は同調査における「きまって支給する現金給与額」×12カ月+「その他特別給与額」で算出しています。
2-2. 30代後半の薬剤師の年収は?
厚生労働省の同調査によると、30代後半(35~39歳)の男性薬剤師の平均年収は658.9万円、女性薬剤師の平均年収は530.9万円でした。また職業全体(正社員・正職員)における30代後半男性の平均年収は555.9万円、30代後半女性の平均年収は498.3万円でした。
■30代後半の薬剤師の平均年収と職業全体の平均年収
※「所定内給与額」とは、6月分として現金給与額(控除前)から超過労働給与額(時間外勤務手当等)のこと。
※小数点以下第二位を切り捨て。
※年収は同調査における「きまって支給する現金給与額」×12カ月+「その他特別給与額」で算出しています。
30代前半と同様、男女ともに薬剤師の平均年収は職業全体の平均年収と比較して高いことがわかります。中でも男性の場合、薬剤師の平均年収と職業全体の平均年収との間に100万円以上の差があり、約70万円の差があった30代前半からさらに差が開いています。職種を問わず管理職に就くことによって年収が上がる傾向がある年代ですが、中でも管理職の薬剤師に対する収入面での待遇が充実していることが推察されます。
また30代後半の男性薬剤師と女性薬剤師の平均年収にも約120万円の差があります。出産・育児等によって女性薬剤師が時短勤務を選択するなど、ライフスタイルに合わせた働き方の変化が影響していると考えられます。
3. 働く地域や職場によって薬剤師の年収は変わる
薬剤師の平均年収は地域や職場によっても異なります。ここでは、地域・職場別に薬剤師の平均年収を見ていきましょう。
3-1. 地域別平均年収
厚生労働省の「令和元年賃金構造基本統計調査」をもとに、都道府県別に薬剤師の平均年収を見てみましょう。
調査結果によると、最も年収が多かったのが1位の静岡県(698.6万円)。続けて、2位が長野県(689.5万円)、3位が高知県(642.6万円)でした。ワースト1位となったのは長崎県(428.2万円)で、次いでワースト2位は徳島県(444.0万円)、ワースト3位が新潟県(447.1万円)となっています。
■都道府県別平均年収トップ3とワースト3
※カッコ内は調査対象の平均年齢
※年収は同調査における「きまって支給する現金給与額」×12カ月+「その他特別給与額」で算出しています。
カッコ内の数値は調査対象となった薬剤師の平均年齢を示したものですが、このデータの範囲では平均年収と年齢に相関性は見られませんでした。地域ごとの平均年収の違いは、薬剤師への需要と供給の差が関係すると考えられます。
3-2.職場別平均年収
マイナビ薬剤師の調査によると、調剤薬局の平均年収は583.8万円、病院薬剤師の平均年収は521.7万円でした。単純に比較すれば、調剤薬局の方が年収は高い傾向にあると言えます。
特に調剤薬局勤務は、企業の規模によっても年収に差が出やすい傾向にあります。店舗数に対して社員数が少ない場合、比較的早く管理薬剤師や薬局長などの役職に就く可能性があり、年収が上がりやすいでしょう。それに加え、エリアマネージャーや係長、部長などへの昇格も早く、さらなる年収アップも期待できます。
4. 30代薬剤師が考えたい「納得できる年収」のポイント
30代の薬剤師は、職場でも重要なポジションに就く機会が増えることから、年収が上がりやすい傾向にあります。その一方で、仕事量も増えやすく、プライベートとのバランスをいかに確保していくか、悩みやすい時期です。そんな30代薬剤師が「納得できる年収」について考えてみましょう。
4-1. まだまだスキルを磨く段階
薬剤師としての経験はある程度積んでいるものの、30代はまだまだスキルを磨く段階です。通常業務は問題なくできても、給与にまで反映されるレベルであるとは限りません。さらなるスキルアップを目指すことで、年収に反映される可能性が高まるでしょう。具体的には、講習会や勉強会への参加や認定薬剤師や専門薬剤師の資格取得などを通して知識の幅を広げることで、同時にキャリアアップも目指せます。
薬剤師向けに医師が講演するような勉強会は、医師側の視点を学べる機会です。各疾患のガイドラインを勉強し、処方意図をくみ取るための知識を増やすのも良いでしょう。学んだ知識を服薬指導に活かしたり、薬局内へアウトプットしたりすることで、後輩教育だけでなく店舗全体のスキルアップにも貢献できます。人事考課でも評価される可能性があるため、積極的にスキルアップをはかりましょう。
4-2. 優先したい条件と年収のバランスを考える
先述した通り、30代の薬剤師のなかには、結婚や出産、子育てといった変化により、思い通りの働き方ができずに家庭と仕事との両立に悩んでしまうかもしれません。そんなときは、年収の低さをただ嘆くのではなく、自分の現状を客観視して、冷静に判断することが大切です。
「年収は低くなったけど、家族と過ごす時間を大切にできている」と前向きにとらえることもできます。それでも年収の低さが気になる場合は、年収を上げる方法がないのか模索するなど、次の行動を検討しましょう。
ライフステージに合わせて働き方を見直しながら、その都度「何を優先すべきか?」を見直し、客観的に振り返ることをおすすめします。妥当な年収額なのか判断が難しい場合は転職エージェントに相談をするなどして、自身が納得できる働き方や年収額を考えることが大切です。
5. 30代薬剤師の年収アップのコツ
30代薬剤師が年収アップを目指す場合、大きく3つの方法があります。それは、管理職に就くこと、専門性の高い資格を取得すること、給与水準の高い職場に転職することです。それぞれについて詳しく解説します。
5-1. 管理薬剤師やエリアマネージャーになる
薬局やドラックストアで管理薬剤師として働くと、基本給とは別に役職手当がつくケースがほとんどです。管理職になると従業員の監督業務も行うので、経営側の視点も学べる点が大きなメリットでしょう。また、エリアマネージャーなど数店舗を管理する役職に就けば、さらに広い視野でマネジメントスキルを身につけることができます。管理職は大変な仕事ではありますが、年収だけでなく経験やスキルアップにもつながります。チャンスがあれば積極的にチャレンジしてみましょう。
5-2. 専門的な資格を取る
認定薬剤師や専門薬剤師などの資格を取得することも、年収アップにつながる可能性があります。資格手当があったり人事考課に反映されたりする職場であれば、学ぶ姿勢が評価され、手当や昇給などにつながる可能性が高くなります。専門性の高い薬剤師を評価している企業もあり、転職を考える際にも有利に働きます。
5-3. 経験やスキルを武器に転職
現在の職場で年収アップが期待できないなら、転職を考えるのも一つの手です。30代の薬剤師は、一定以上の経験やスキルを持った働き盛りの即戦力と判断されます。人材不足で悩んでいる企業からの需要は高いでしょう。ただし、40代以降は転職が難しくなる傾向にあるため、30代での転職は最後の転職活動と考え、慎重に行うことが大切です。年収アップを目的に転職するのであれば、目先の年収だけでなく、昇給率も確認するようにしましょう。
6. 30代薬剤師は年収もワークライフバランスも大切
ライフステージが変化することで、家庭では仕事との両立を求められ、職場では中堅クラスとしての働きを求められる場合があります。家庭を持つ人が増える30代は、年収を維持するよりも働きやすい環境を優先させることもあるでしょう。30代薬剤師は年収もワークライフバランスも大切にしながら、納得できる働き方を目指してみてはいかがでしょうか。
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🔽年代ごとの薬剤師の平均年収を紹介した記事はこちら
🔽30代の薬剤師の転職について解説した記事はこちら
執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)
薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。
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