薬剤師のスキルアップ 公開日:2025.02.05 薬剤師のスキルアップ

薬剤師がスキルアップするには?認定資格取得や自己研鑽など主な方法を解説

文:秋谷侭美(薬剤師ライター)

薬剤師のスキルアップは、業務効率を高めたり、患者さんの治療効果を向上させたりすることにつながります。職場での評価が上がる、転職時の強みになるといった点からも、薬剤師がスキルを磨くことは重要です。本記事では、薬剤師にとってスキルアップが必要不可欠な理由をお伝えするとともに、資格取得や本を使った自己学習、転職など、具体的なスキルアップ方法について解説します。

1.薬剤師にスキルアップは必要不可欠

薬剤師が働く医療業界では、日々新しい情報が更新されます。新しい治療法や新しい医薬品が開発され、定期的にガイドラインや保険制度が改定されます。
 
そういった環境の中で、薬剤師が医療に貢献するためには、キャリアを通じてスキルアップを続ける姿勢が必要です。自分の持つ知識やスキルが患者さんの命に関わることを自覚し、意識的に知識や経験のアップデートを行うことが求められます。
 
薬学教育モデル・コア・カリキュラム 令和4年度改訂版」においても、「薬剤師として求められる基本的な資質・能力」のひとつとして、「生涯にわたって共に学ぶ姿勢」が挙げられています。
 
職場での評価や、転職時にアピールできる強みにもつながるため、薬剤師にとってスキルアップは必要不可欠といえるでしょう。

2.薬剤師のスキルアップ方法

薬剤師がスキルアップするには、さまざまな方法があります。自身に合った方法で効率よくスキルアップを目指しましょう。
 
ここでは、薬剤師のスキルアップの方法を大きく3つに分け、それぞれについて詳しく解説します。

 

2-1.認定資格を取得する

薬剤師のスキルアップ方法としてまず思い浮かぶのは、認定資格の取得を目指すことではないでしょうか。薬剤師の認定資格にはさまざまなものがあります。そのため、自分の興味や得意分野などから取得する資格を検討するとよいでしょう。
 
まだ専門分野を決められない場合は、薬物治療について広範囲に学べる資格を選ぶのがおすすめです。ここでは、薬剤師のスキルアップにつながる認定資格について紹介します。

 

2-1-1.研修認定薬剤師

研修認定薬剤師とは、日本薬剤師研修センターが実施する認定制度です。特定の学会の会員でなくても取得できるため、薬剤師免許を取得して間もない薬剤師が、最初に目指せる認定資格でしょう。
 
さまざまな職域の薬剤師が資格取得を目指すため、認定者数も多い傾向にあります。

 
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2-1-2.日病薬病院薬学認定薬剤師

日病薬病院薬学認定薬剤師とは、日本病院薬剤師会が実施する認定制度です。薬物治療について幅広い知識や技術を習得している薬剤師を認定します。
 
日病薬病院薬学認定薬剤師は、日本病院薬剤師会が認定するその他の認定薬剤師を取得する際に必要となる場合があります。そのため、専門性を高めたい薬剤師は、まず日病薬病院薬学認定薬剤師を取得するとよいでしょう。

 
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2-1-3.認定実務実習指導薬剤師

認定実務実習指導薬剤師とは、薬学教育協議会が運営する認定制度で、実務実習を受ける薬学生に指導を行うための資格です。
 
認定実務実習指導薬剤師は、薬学生へ薬剤師としての知識やスキルを伝えるだけでなく、医療人に必要な心構えについても指導します。

 
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2-1-4.小児薬物療法認定薬剤師

小児薬物療法認定薬剤師とは、日本薬剤師研修センターの認定制度です。小児薬物療法について一定レベル以上の知識やスキルを持つ薬剤師が認定されます。
 
小児科領域での薬物治療では、薬物動態が発達段階に応じて変化するため、成長に合わせて使用する薬剤の剤形を変えるなどの対応が必要です。投与量の丁寧な調整や副作用などのモニタリング、患者さんや家族のケアなども求められます。小児科領域での薬物治療を専門とする薬剤師は、チーム医療の一員として貢献することが期待されるでしょう。

 
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2-1-5.救急認定薬剤師

救急認定薬剤師とは、日本臨床救急医学会による認定制度です。救急医療に携わる薬剤師が、十分な知識やスキル、経験を身に付けていることを認定します。
 
救急認定薬剤師の仕事は、救急外来や集中治療室で治療する患者さんの薬物治療をサポートすることです。意識障害や薬物中毒がある場合には、その原因を判別したり、薬物動態や栄養状態などをチェックしたりすることも求められます。

 
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2-1-6.外来がん治療認定薬剤師

外来がん治療認定薬剤師とは、日本臨床腫瘍薬学会による認定資格で、外来でがん化学療法を受ける患者さんをサポートするのが主な仕事です。病院薬剤師と薬局薬剤師の両方が取得を目指せる認定資格ですが、それぞれ役割が異なります。
 
病院薬剤師は「患者さんごとの問題点の評価と明確化」や「薬物療法プランの設計」などに携わり、薬局薬剤師は「薬物療法プランに基づく患者さんへの指導」「服薬モニタリングの継続と問題点の見直し」「病院への情報のフィードバックによる適正管理」といった役割を担います。

 
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2-1-7.国際中医師

国際中医師とは、世界中医薬学会連合会が設けた資格で、中国の国家資格である「中医師」と同等の専門知識があることを認定します。中医師とは、中国の伝統的な経験医学を体系化した中医学を修めた人のことです。中国では、大学で必要な課程を履修する必要がある難関資格のひとつといわれています。
 
一般の方が国際中医師の資格を取得しても、日本では診断から治療までを行うことができません。友人などの相談に対応したり、漢方に関する講演を行ったりすることが主な活動となるでしょう。しかし、薬剤師の資格があると、漢方薬の調剤や患者さんに対する相談対応を行うことができます。漢方薬局や東洋医学の外来がある病院などで活躍できるでしょう。

 
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2-1-8.スポーツファーマシスト

スポーツファーマシストとは、スポーツにおけるドーピングを防止することを目的として設けられた認定薬剤師制度です。アンチ・ドーピングに関する医療知識を身に付けた薬剤師が認定されます。
 
ドーピング禁止物質は、処方薬や市販薬、サプリメントの中にも含まれていることがあります。そのため、スポーツファーマシストの資格を取得すると、スポーツ選手が意図せずドーピングをしてしまう「うっかりドーピング」の防止などに役立つ仕事ができるでしょう。

 
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2-2.自己研鑽する

認定資格の取得を目指す以外に、自己研鑽を通じて薬剤師としてスキルアップするという選択肢もあります。
 
自己研鑽の具体的な方法としては、研修会・勉強会への参加、本・動画を使った勉強などが挙げられます。それぞれについて見ていきましょう。

 

2-2-1.研修会や勉強会に参加する

薬剤師会などが行う研修会・勉強会に時間を見つけて参加することで、さまざまな知識を得ることができます。認定資格に必要な単位シールが配布されている場合もあるため、自己研鑽をする過程で認定資格が取得できることもあるでしょう。
 
高い専門性を持つ講師が講義を行う研修会や勉強会では、書籍やインターネットでは学べない講師の経験による知見も学ぶことができます。医療現場で活躍する講師の経験談を聞くのは、非常に貴重な機会となるでしょう。
 
研修会や勉強会で得られた知識は職場で役立てることができるため、積極的に参加するのがおすすめです。

 

2-2-2.本で勉強する

本を活用して勉強することも大切です。本であれば、自身のレベルや知りたいことに合わせた内容のものを選べます。
 
また、通勤時間や寝る前などの隙間時間に読めるため、効率的に勉強できるでしょう。

 

2-2-3.動画で勉強する

動画共有サイトやSNSなどで配信される動画で勉強するのも、自己研鑽の方法のひとつです。最近では、現役薬剤師による薬物治療や認定資格、保険制度などの解説動画や、厚生労働省による診療報酬改定の説明動画も見ることができます。
 
動画であれば隙間時間を活用して視聴したり、家事をしながら聞き流したりすることができるため、利便性が高いのが魅力でしょう。ただし、配信内容の信頼性やエビデンスは、自身で確認する必要があります。

 

2-3.経験を積むために転職する

薬剤師としてのスキルアップのために、実務を通して経験を積むという方法もあります。
 
現職では経験が積めない分野を学びたい薬剤師は、転職することも視野に入れるとよいでしょう。ここでは、目的別の転職先の例を紹介します。

 

2-3-1.在宅医療のスキルを身に付けるために在宅薬局に転職する

在宅医療の需要は年々高まっており、薬剤師が活躍する場も広がっています。実務の中で在宅医療に関するスキルが求められる場面も少なくないでしょう。しかし、在宅関連の調剤件数が少ない職場では、実務を通して経験できることが限られます。
 
在宅患者さんに対応する中で、注射剤の調整や終末医療などに関するスキル向上を目指したいと考える薬剤師もいることでしょう。その場合は、在宅医療を中心とする薬局へ転職するのも一案です。

 

2-3-2.急性期医療のスキルを身に付けるために病院へ転職する

薬局に勤めている薬剤師が、急性期医療に関するスキルの向上を目指すのであれば、病院への転職がおすすめです。ただし、病院と一口にいっても、救急搬送が頻繁にある病院や、救急搬送はそれほど多くないものの集中治療室を備えている病院など、病院によって対応する急性期医療はさまざまです。
 
急性期医療に携わりたいのであれば、救急搬送の件数や病院の規模などを基準に転職先を選ぶとよいでしょう。また、集中治療室には、ICU(集中治療室)やSICU(外科系集中治療室)、CCU(循環器疾患集中治療室)などがあります。スキルアップをしたい分野が決まっているのであれば、該当する集中治療室が設けられているかを確認して、転職先の候補を絞るとよいでしょう。
 
参照:ICU の種類と対象患者・施設基準|一般社団法人日本医療福祉建築協会

3.薬剤師のスキルアップはキャリアアップにつながる

薬剤師がスキルアップをすることは、知識を身に付けて経験を積むことで患者さんの薬物治療に貢献できるだけでなく、自身のキャリアアップにもつながります。自身の得意分野や専門分野に磨きをかけることで、職場での評価が高まったり、転職する際のアピールポイントとなったりするはずです。薬剤師は、継続的な成長を目指してスキルアップに努めましょう。

 
🔽 薬剤師の勉強法について解説した記事はこちら


執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)

薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。