CRC(治験コーディネーター)としての経験を積む中で、キャリアアップのために認定CRCの資格取得に興味がある方もいるでしょう。しかし、「認定CRC」という名称の資格はいくつかの種類があり「どの資格が自分に合っているのか」「どうすれば取得できるのか」など、具体的なイメージが湧きにくいかもしれません。本記事では、代表的な認定CRCの資格として「日本臨床薬理学会認定CRC」「日本SMO協会公認CRC」「日本癌治療学会認定CRC」「SMONA認定CRC」について解説します。
1.認定CRCの資格の種類
認定CRCの資格には、主に以下のような種類があります。
● 日本SMO協会公認CRC
● 日本癌治療学会認定CRC
● SMONA認定CRC
各資格は異なる団体によって認定されており、それぞれ受験資格や試験内容、専門となる分野・領域などに違いがあります。
2.日本臨床薬理学会認定CRC
日本臨床薬理学会認定CRCは、臨床薬理学に基づいた質の高い臨床試験をサポートするCRCの認定資格です。2003年に日本臨床薬理学会が制定した資格制度で、臨床試験の適正かつ円滑な実施に貢献できる人材の育成を目的としています。
「日本SMO協会データ2024」によると、調査対象である3,138人のCRCのうち、約7%にあたる221人が本資格を保有していることが報告されています。
日本臨床薬理学会認定CRCは、5年おきの更新制で、認定期間終了年に更新手続きを行わなければなりません。
参考:認定CRC制度|日本臨床薬理学会
2-1.受験資格
日本臨床薬理学会認定CRCの試験を受けるためには、下記の受験資格を満たす必要があります。
要件 | 認定時 | 更新時 |
---|---|---|
実務実績 | 専任CRCとして2年以上、もしくはそれと同等の実務経験 (週38.75時間相当の勤務を2年以上に相当する経験) |
要件なし |
活動実績 | ● 担当したプロトコール数が5つ以上 ● 担当した症例数が10症例以上 |
● 担当したプロトコール数が10以上 ● 担当した症例数が30症例以上 ※認定CRCの認定(または更新)を受けた日以降の実績 |
教育受講実績 | 「CRCと臨床試験のあり方を考える会議」または「日本臨床薬理学会学術総会」に1回以上参加するとともに、研修会や会議に参加し所定点数を満たしている | |
その他 | 所属長や臨床研究チームの責任医師からの推薦状を1通以上提出する | ● 活動実績を示すものとして、CRC業務に関する執筆活動、学会発表、講演会講師、CRC業務を支援する活動などを評価してもよい ● CRCの指導・管理する立場の経験や臨床試験の管理への関わりを含めることも可能 |
2-2.試験内容
日本臨床薬理学会認定CRC試験はCBT方式で、多肢選択問題と記述形式問題で構成されています。2025年の認定試験における、試験範囲や参考図書は以下のとおりです。
● 人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針およびそれに関連する通知
● 臨床研究法およびそれに関連する通知
● ヘルシンキ宣言
● ICH-GCP(E6)
※2025年6月1日までにおける最新版を参照すること
● 臨床薬理学、第4版(2017年発行)、医学書院
● 臨床薬理学用語集、第2版(2009年発行)、ライフサイエンス出版
試験合格後、委員会の審査を経て日本臨床薬理学会認定CRCとして登録されます。なお、受験料は20,000円、認定料は30,000円です。
参考:第21回 日本臨床薬理学会認定CRC試験要項|日本臨床薬理学会

3.日本SMO協会公認CRC
日本SMO協会公認CRCは、SMO(治験施設支援機関)で働くCRCの資質向上を目的として、日本SMO協会(JASMO)が2005年に開始した認定制度です。
資格は5年間有効で、更新にあたって再度試験に合格しなければなりません。ただし、協会が定める研修会の受講要件を満たせば、試験なしで更新することも可能です。
「日本SMO協会データ2024」によると、調査対象となったCRCの半数以上にあたる1,643人が日本SMO協会公認CRCの資格を保有しており、SMO業界で広く認知された資格のひとつといえるでしょう。
3-1.受験資格
日本SMO協会公認CRCの受験資格は、以下のとおりです。
● 導入教育研修修了日より、2年以上のCRC実務経験を有すること
● 要綱細則に定める所定の継続教育の基準に適合していること
3-2.試験内容
出題形式は、CBT方式の多肢選択問題です。2024年の認定試験では、参考図書として以下が挙げられています。
● 「臨床検査」ポケット資料集(ポケット資料集 製作委員会)
● CRCテキストブック 第4版(編集 日本臨床薬理学会 医学書院)
● JASMO「臨床試験データの信頼性を確保するためのSMO自主ガイドライン(2015年6月5日)」
● 医薬品開発入門 第4版(じほう)第1章~4章の範囲
● 公開問題から
参考:JASMO公認CRC試験・公認SMA試験|CBT-Solutions CBT/PBT試験 受験者ポータルサイト
日本SMO協会公認CRC試験の受験料は12,000円です。また、公認証発行手数料は5,000円です。
参考:公認CRC・SMA制度|日本SMO協会
4.日本癌治療学会認定CRC
日本癌治療学会認定CRCは、癌治療における臨床研究の質と安全性を高めることを目的とした資格です。ジュニアCRC・CRC・シニアCRCの3種類があり、それぞれ求められるスキルや役割が異なります。
種類 | 求められる主なスキルや役割 |
---|---|
ジュニアCRC | プロトコールやデータ管理に関する専門知識を有し、基本的な実務能力を持つ |
CRC | 治験・臨床試験の準備や被験者対応、運営支援、データ管理、チーム調整、倫理基準遵守など、臨床試験全般を円滑に進める能力を持つ |
シニアCRC | 認定CRCとしての豊富な経験と実績を持ち、高度な専門性を発揮する |
資格は5年間有効で、学術集会への参加など一定の条件を満たせば更新が可能です。
参考:認定CRC制度|一般社団法人日本癌治療学会
4-1.受験資格
日本癌治療学会認定CRCは、資格の種類ごとに受験資格が異なります。詳細は以下の表のとおりです。
要件 | ジュニアCRC | CRC | シニアCRC |
---|---|---|---|
実務経験 | 要件なし | 要件なし | 応募時点において認定CRCを更新後、5年の実務経験を有していること |
活動実績 | 過去5年以内に参加した臨床研究において経験した症例のうち5症例以上の症例報告書リストを提出すること | 過去5年以内に参加した臨床研究において経験した症例のうちプロトコール数5以上かつ20症例以上の業務実績申請書を提出すること | 過去5年以内に参加した臨床研究において経験した症例のうちプロトコール数5以上かつ20症例以上の業務実績申請書を提出すること(癌に関連するプロトコール、前向き介入研究のプロトコールを含めることが望ましい) |
推薦状の提出 | 所属長や臨床研究チームの責任医師からの推薦状を提出すること | ||
教育受講実績 | 以下の日本癌治療学会の集会・セミナーについて過去5年以内に各1回以上参加実績を有すること ● CRC教育集会 ● メディカルスタッフのためのセミナー ● 学術集会 |
過去5年以内に日本癌治療学会の学術集会、CRC教育集会、メディカルスタッフのためのセミナーに各1回以上参加し、かつ下記より3つ以上参加実績を有すること ● 日本癌治療学会学術集会(必須) ● がんCRC学会学術集会 ● CRCと臨床試験のあり方を考える会議 ● 臨床試験学会学術集会 ● 臨床薬理学会学術総会 |
参考:一般社団法人日本癌治療学会認定CRC制度規則運用細則|一般社団法人日本癌治療学会
4-2.試験内容
日本癌治療学会認定CRCの取得にあたり、知識などを確認するための試験はなく、ジュニアCRCの場合、所定の要件を満たせば認定されます。ただし、CRCとシニアCRCについては、認定取得時に面接試験があります。
資格更新時も試験はありません。症例の提出など必要な要件を満たし、CRC委員会の審査を通過すれば更新が可能です。
資格の種類や新規認定・更新問わず、審査手数料として11,000円を支払う必要があります。
参考:認定CRC制度|一般社団法人日本癌治療学会
参考:一般社団法人日本癌治療学会認定CRC制度規則運用細則|一般社団法人日本癌治療学会

5.SMONA認定CRC
SMONA(協同組合臨床開発支援ネットワーク)が運営する独自のCRC認定制度は、一定水準の知識とスキルを持つCRCであることを証明する認定資格です。
初回有効期間は2年で、それ以降は5年となります。研修参加などの要件を満たせば更新が可能です。
5-1.受験資格
SMONA認定CRCを受験するには、CRCとして1年6ヶ月以上の実務経験が必要です。
さらに、SMONA主催の基礎講座、GCPトレーニング、および所属SMOの社内研修を修了し、規定のプロトコール数を満たしていることが求められます。
5-2.試験内容
SMONA認定CRCの試験は、毎年4月に実施されます。試験形式は選択問題と記述問題で構成されています。
参考:SMONA教育研修・CRC認定制度|協同組合 臨床開発支援ネットワーク(SMONA)
6.CRC(治験コーディネーター)の仕事内容
CRCは、治験が円滑かつ適切に行われるよう、多岐にわたる業務を担当します。治験全体の運営を支援するとともに、治験参加者のサポートや医師・看護師・薬剤師など関係者間のスケジュール調整なども行います。
具体的な業務としては、製薬会社による関係者向け説明会への参加、被験者の募集・スクリーニング、説明・同意文書の作成補助、診察・検査のスケジュール管理、症例報告書作成、有害事象報告などが挙げられます。
これらの業務には高度な専門知識が必要です。認定CRC取得を目指す過程は、CRCとしての専門知識・スキルを深めるよい機会となります。
さらに、認定資格はそれらの能力を客観的に証明するものであるため、医療機関や製薬会社からの信頼が高まり、より責任のある業務を任されたり、専門性を生かしたキャリアパスを築きやすくなったりするでしょう。
参考:治験コーディネーター|厚生労働省職業情報提供サイト job tag(日本版O-NET)
🔽 CRCの仕事内容について詳しく解説した記事はこちら

7.認定CRC資格を取得して、キャリアアップを目指そう
認定CRCは、CRCとしての専門性を客観的に証明できる資格です。代表的なものとして「日本臨床薬理学会認定CRC」「日本SMO協会公認CRC」「日本癌治療学会認定CRC」「SMONA認定CRC」などがあり、それぞれ受験資格や試験内容が異なります。
資格取得を目指す際は、各資格の特徴を理解して、ご自身の経験や将来のキャリアプランに合ったものを選ぶことが大切です。
認定CRCは、転職活動やキャリアアップ、昇進の有力な武器になり得ます。ご自身に合った資格を見つけ、取得に向けて一歩踏み出しましょう。
🔽 認定薬剤師の資格について紹介した記事はこちら
🔽 専門薬剤師の資格について紹介した記事はこちら

執筆/篠原奨規
2児の父。調剤併設型ドラッグストアで勤務する現役薬剤師。薬剤師歴8年目。面薬局での勤務が長く、幅広い診療科の経験を積む。新入社員のOJT、若手社員への研修、社内薬剤師向けの勉強会にも携わる。音楽鑑賞が趣味で、月1でライブハウスに足を運ぶ。
あわせて読みたい記事