薬剤師のスキルアップ 公開日:2025.10.22 薬剤師のスキルアップ

周術期管理チーム認定薬剤師とは?受験資格・認定試験・合格率について解説

文:秋谷侭美(薬剤師ライター)

周術期管理チーム認定薬剤師とは、患者さんの周術期(術前・術中・術後)における薬剤管理を専門的に行えることを証明する認定資格です。周術期医療において、周術期管理チームのメンバーと連携して患者さんの安全を確保する役割を担います。本記事では、周術期管理チーム認定薬剤師の概要や仕事内容を解説するとともに、セミナー受講などの受験資格や認定試験に必要なテキスト、合格率についてお伝えします。加えて、申請方法や更新方法、再認定方法についても解説します。

1.周術期管理チーム認定薬剤師とは?

周術期管理チーム認定薬剤師とは、日本麻酔科学会が日本手術看護学会、日本臨床工学技士会と協同で実施する周術期管理チーム認定制度のひとつです。薬剤師だけでなく、看護師や臨床工学技士にも同様の認定制度があります。
 
参考:周術期管理チーム認定制度運営細則|周術期管理チーム認定制度
 
薬剤師については、日本麻酔科学会が周術期管理に関する相当の知識と経験を有すると認め、書類審査と筆記試験に合格した場合に認定されます。
 
参考:周術期管理チーム薬剤師に関する内規|周術期管理チーム認定制度
 
周術期管理チーム認定薬剤師の資格保有者一覧は、周術期管理チーム認定制度のホームページで確認できます。
 
参考:認定資格保持者|周術期管理チーム認定制度

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2.周術期管理チーム認定薬剤師の仕事内容

周術期管理チーム認定薬剤師は、周術期管理チームの一員として術前・術中・術後の薬剤管理に積極的に関与し、患者さんにとってより安全で質の高い医療を提供することが主な役割といえます。
 
ここでは、術前・術中・術後における周術期管理チーム認定薬剤師の仕事内容について詳しくお伝えします。

 

2-1.術前管理の最適化

周術期管理チーム認定薬剤師は、患者さんの服用薬の中から手術前に中止が必要な薬を事前に確認し、適切な休薬のタイミングを提案する役割があります。例えば、ワーファリンやバイアスピリンなど血液を固まりにくくする薬は出血のリスクを高めます。そのため、手術前に調整が必要です。
 
また、患者さんに使用予定の薬にアレルギーや副作用がないか事前に確認し、問題がある場合は代替薬を提案します。
 
このように、手術中のアレルギー反応や副作用のリスクを減らし、安全に手術ができるようサポートするのが、薬剤師の術前における仕事です。

 

2-2.手術中の安全性向上

周術期管理チーム認定薬剤師は、手術中の麻酔薬を適切に準備した上で、使用量を確認し、安全な麻酔管理を実施することも重要な仕事です。周術期管理チーム認定薬剤師が関与することで、より専門的な管理が可能となるでしょう。
 
例えば、術後の痛みを抑えるためのPCA(患者自己調節鎮痛)ポンプの薬液を事前に準備し、適切に運用することで、患者の快適な回復をサポートします。
 
医薬品を適正に使用できるよう、手術部のスタッフに医薬品の情報を提供することも、安全性を向上させるために欠かせない業務です。

 

2-3. 術後の疼痛管理と副作用モニタリング

術後は痛みを管理し、患者さんの回復を支援するのが、周術期管理チーム認定薬剤師の主な役割です。
 
オピオイドなどの鎮痛薬の効果を評価し、適切な投与量や代替薬を提案することで、患者さんの苦痛を最小限に抑えます。
 
そのほか、鎮痛薬による便秘、眠気、呼吸抑制などの副作用のモニタリングや、PCAポンプの管理を行い、必要に応じて対策を講じることで、安全な術後管理を実施します。
 
参考:周術期薬剤業務の進め方|日本病院薬剤師会
参考:周術期管理チームの活動モデル|周術期管理チーム認定制度

 
🔽 周術期薬剤管理加算について解説した記事はこちら

3.周術期管理チーム認定薬剤師になるには

周術期管理チーム認定薬剤師になるには、受験資格の要件を満たし、書類審査に合格したあと、認定試験に合格する必要があります。ここでは、受験資格や認定試験、合格率について解説します。

 

3-1.受験資格

周術期管理チーム認定薬剤師の受験資格は、以下のとおりです。

 

資格 日本国の薬剤師免許を有すること。
実務経験 薬剤師免許を取得後、以下の実務経験があること。
● 薬剤師としての病院・診療所勤務歴が3年以上あること。
● 上記のうち、2年以上の周術関連の実務経験があること。
受講実績 申請する年の3年前の4月1日から申請する年の3月31日までの間に,以下のいずれかの受講実績があること。
● 日本麻酔科学会が主催または共催する周術期管理チームセミナーへの2回以上の参加実績があること。
● 上記に相当するe-learningの受講実績があること。

参考:周術期管理チーム薬剤師新規申請要綱|周術期管理チーム認定制度
 
上記の受験資格に関する書類を提出し、審査に合格した人が、認定試験の受験資格を得られます。書類審査と認定試験の受験料(認定審査料)は11,000円(税込)となっており、申請時に納付する必要があります。
 
参考:周術期管理チーム薬剤師に関する内規|周術期管理チーム認定制度

 

3-2.セミナー

日本麻酔科学会や日本手術看護学会、日本臨床工学技士会が主催・共催するセミナーの日程、会場などの情報が掲載されてます。セミナーへの参加が難しい場合は、e-learningを受講することになるでしょう。
 
参考:周術期管理チーム認定制度
 
e-learningは、毎年8月と12月に5講座ずつリリースされ、マイページから受講の申し込みを行います。1テーマ(約30分)につき受講料は3,300円(税込)となっており、1度購入したテーマは公開が終了するまで何度でも視聴可能です。
 
1講座受講するごとに1ポイント取得でき、5ポイントで受験資格となる対象セミナー1回分に相当します。そのため、e-learningのみで受験資格を得るためには、10ポイントを取得することが必要です。

 

3-3.認定試験とテキスト

2025年度の周術期管理チーム認定試験の試験範囲は、以下とされています。

 

周術期管理チームテキスト第4版
● 日本麻酔科学会発行のアナフィラキシーに対する対応プラクティカルガイド
● 術中心停止に対するプラクティカルガイド
● 周術期禁煙プラクティカルガイド
● 安全な鎮静のためのプラクティカルガイド
● 過去に出題された問題

参考:2025年度 周術期管理チーム認定制度 周術期管理チーム認定試験 会告(看護師・薬剤師・臨床工学技士 共通)

 

認定試験の内容は全職種共通となっており、過去3年分のA問題・B問題と解答がホームページで公開されています。認定試験を受ける場合は、受験年度の会告に記載されている出題範囲を参考に、過去問と指定テキスト、ガイドラインなどをチェックしておく必要があるでしょう。
 
参考:過去の試験問題・回答|周術期管理チーム認定制度
 
なお、2026年度より筆記試験の試験時間が以下に変更になります。

 

試験 変更前 変更後
試験A:マークシート 60問 90分 75分
試験A:マークシート 60問

参考:【重要】周術期管理チーム認定 筆記試験時間変更のお知らせ|新着情報|周術期管理チーム認定制度

 

3-4.合格率

周術期管理チーム認定薬剤師の認定試験の合格率は、以下のとおりです。

 

年度 申請者数 合格者数 合格率
2020年度 60人 56人 93.3%
2021年度 47人 42人 89.4%
2022年度 149人 134人 89.9%
2023年度 182人 159人 87.4%
2024年度 159人 144人 90.6%

 

合格率は例年90%前後となっており、合格率の観点で見れば難易度はそれほど高くない認定試験といえるでしょう。
 
合格者は指定する期日までに登録料22,000円(税込)を納付します。期日までの納付ができなかった場合は、合格が取り消されてしまうため、忘れないようにしましょう。
 
参考:周術期管理チーム薬剤師に関する内規|周術期管理チーム認定制度

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4.周術期管理チーム認定薬剤師の更新方法

周術期管理チーム認定薬剤師の資格を更新するためには、以下の更新資格を満たす必要があります。

 

資格 現に管理チーム薬剤師の資格を有し、その有効期間が終了する年度に達していること。
受講実績 更新申請する年の3年前の4月1日から申請する年の3月31日までの間に、以下のいずれかの受講実績があること。
● 日本麻酔科学会が主催または共催する周術期管理チームセミナーへの2回以上の参加実績があること。
● 上記に相当するe-learningの受講実績があること。

参考:周術期管理チーム薬剤師更新申請要綱|周術期管理チーム認定制度
 
なお、周術期管理チーム認定薬剤師は、以下の事由によって更新が難しい場合に猶予期間が設けられています。

 

● 妊娠
● 出産
● 育児
● 病気療養
● 介護
● 災害被災

 

猶予期間は6年間を限度としており、その期間は周術期管理チーム認定薬剤師と称することができません。
 
なお、周術期管理チーム認定薬剤師の更新時は筆記試験がありません。更新認定料16,500円(税込)を支払い書類審査に合格すると、資格更新ができます。
 
参考:周術期管理チーム薬剤師に関する内規|周術期管理チーム認定制度

5.周術期管理チーム認定薬剤師の再認定方法

周術期管理チーム認定薬剤師は、認定資格を喪失したあとでも、要件を満たすことで再認定を受けることができます。資格が取り消される事由として、以下が規定されています。

 

1. 管理チーム薬剤師が認定の取り消しを申し出たとき。
2. 管理チーム薬剤師が更新の手続きをしなかったとき。
3. 管理チーム薬剤師が更新の要件を満たさなかったとき。
4. 日本麻酔科学会の理事会が管理チーム薬剤師としてふさわしくないと認めたとき。

 

上記のうち、2・3によって資格を喪失した場合は、資格喪失時点から6年間であれば、再認定の申請をすることができます。再認定申請をするためには、申請する年度の前年度にあたる1年間で、以下の実績を確保する必要があります。

 

● 周術期管理チームセミナーへの2回以上の参加実績があること。
● 上記に相当するe-learningの受講実績があること。

 

再認定の申請時に、再認定料33,000円(税込)を納付します。再認定も書類審査のみとなっており、認定試験はありません。
 
参考:周術期管理チーム薬剤師に関する内規|周術期管理チーム認定制度

6.周術期管理チーム認定薬剤師を目指そう

周術期管理チーム認定薬剤師は、周術期における薬剤管理の専門家として、患者さんの安全を守る重要な役割を担います。術前のリスク評価、術中の適切な薬剤使用、術後の回復サポートなどを通じて、多職種と連携しながら患者さんに最適な治療を提供するのが仕事です。周術期に携わる薬剤師が認定資格を取得することは、専門性を高め、より質の高い医療に貢献することにつながります。
 
周術期管理チーム認定薬剤師になるには、セミナーやe-learningの受講、認定試験への合格が必要ですが、症例報告や学会発表などの要件はないため、比較的チャレンジしやすい認定資格といえるかもしれません。手術関連の業務に携わる機会のある薬剤師は、周術期管理チーム認定薬剤師を目指してみてはいかがでしょうか。

 
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執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)

薬剤師ライター。病院・薬局で幅広い診療科を経験。現在は2児の子育てをしながら、Webライターとして活動中。専門的な資料や情報をわかりやすくかみ砕き、現場のリアルに寄り添う言葉で伝えることを大切にしている。同じ薬剤師として、日々の悩みやモヤモヤに共感しながら、少しでも役立つヒントや気づきを届けられるように試行錯誤中。