
医療に欠かせない職種でありながら、どこか影が薄いと言われてしまうこともある、薬剤師という哀しき存在……。「あるある話」を通して、もっと知ってください。私たち薬剤師のこと!
薬剤師は「患者さんが少なそうな日」が分かる?【薬剤師のあるあるシーン#12】

空模様を眺めながら、「今日だからこそできること」に没頭します
大雨や大雪、風が強い日など天候のよくない日は、やはり病院や薬局を訪れる患者さんが少なめになります。「薬はまだあるし、今日じゃなくてもいいか」―― 多分そんなところだろうと思います。
私は、高齢の患者さんが多い地方の病院に勤務していたので、天気のよくない日は「外出が大変だから」「滑って転んだら危ないから」といった理由で受診を控える方が特に多かったかもしれません。もちろん、高齢者でなくても悪天候の日に外出するのは億劫なので、私たち薬剤師は「今日は患者さんが少なそうだなあ」と思いながら空を眺めています。
逆に、患者さんが多そうな日は、ズバリ連休明け。「休みの間に薬がなくなっちゃったんだよね」という方もしばしば。どこの病院や薬局でも同じかもしれません。
では、患者さんが少ない日、薬剤師は何をしているのでしょうか。決して、遊んでいるわけではありません。むしろ、普段の調剤業務に追われている時にはできない重要な業務に集中します。
例えば、処方箋の整理。月ごとに綴じて保管するとともに、保存期限を過ぎたものは処分します。あるいは、医薬品情報を記載した印刷物の準備。「1回に2錠ずつお飲みください」といった小さな紙が薬に付いていることがあるかと思いますが、あれを印刷して小さくカットします。その他、薬袋や軟膏つぼ、投薬びんなど、発注頻度の少ない物品の在庫確認や、在庫棚の掃除など、地味な作業は多岐にわたりますが、こうした準備が日々の業務を支えています。
天候が理由で来なかった患者さんは、別の日にやって来ます。患者さんの総数は大きくは変わりません。しかし、私たち薬剤師にとって、患者さんが少ない日は、将来的な忙しさへ備えるとともに、束の間の気分転換にもなる貴重な一日なのです。

東北大学薬学部卒業後、ドラッグストアや精神科病院、一般病院に勤務。現在はライターとして医療系編集プロダクション・ナレッジリングのメンバー。専門知識を一般の方に分かりやすく伝える、薬剤師をはじめ働く人を支えることを念頭に、医療関連のコラムや解説記事、取材記事の制作に携わっている。
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