お話を聞いたのは……
株式会社hitotofrom 代表取締役 松岡光洋さん(中央)/同薬剤師 堀田亜莉沙さん(左)/同ボランチ(非薬剤師) 鯨岡萌花さん(右)
本記事は株式会社ネクスウェイが提供する「医療情報おまとめ便サービス」特集2019年12月号P.7-8「業務効率化の取り組みをレポート! 薬局インタビュー③」を再構成したものです。
【薬局本部の声】ボランチ(非薬剤師)の視点や能力も結集し、患者さんと同じゴールを目指せる薬局へ
■在宅に特化する中、独居の男性宅などにも安心して訪問できるように
松岡さん 当薬局の主な特徴は、門前でなく面分業であることと、個人宅の在宅医療に特化していること。処方箋の受付枚数は月間500枚程度で、板橋区や練馬区をはじめ、豊島区、北区、足立区にて約230名の患者さんを担当しています。現在スタッフは、薬剤師が正社員4名、パート2名、非薬剤師が8名の計14名となっています。
私たちは、薬剤師がより輝ける環境は在宅医療にあるという信念のもと、居宅支援事業所や地域包括支援センターなどを回りながら地域のさまざまなニーズを抽出し、応えていくことで少しずつ成長してきました。
非薬剤師を積極活用しはじめた理由には、在宅訪問の際の薬剤師側のハードルを下げる目的がありました。例えば女性の薬剤師が1人で独居男性のお宅に伺うのは多少の抵抗感を伴うことがあります。そんなとき一緒に同行してくれる存在がいるだけで訪問が非常にスムーズになるのです。
また、2人で伺うことで役割分担ができ、薬剤師がアセスメントの部分に集中できるメリットもあります。あるいは薬剤師と患者さんの会話を非薬剤師が記録できたり、老々介護のご夫婦宅などでも、双方と柔軟にコミュニケーションをとることもできます。
■薬剤師の負担軽減や患者さんのケアを支え在宅の発展に貢献する人材と期待しています
松岡さん 私たちは非薬剤師を「ボランチ」と称する職種に位置づけ、サッカーのボランチのようにチームの連携を支える調整役をお願いしています。主には、在宅訪問のスケジュール管理や患者情報の把握などを担当しています。
特に現在は、キュア(治療)以上にケア(世話・配慮)の需要が拡大している時代。自宅で自分らしく過ごしたいと願う多くの患者さんのケアには、実は非薬剤師にも活躍の機会が隠されています。異業種からの転職者が多いボランチはさまざまな視点を持っているので、多角的に患者さんのニーズを引き出し、課題解決へ導く力になっています。
患者さんの思い描くゴールを共有して一緒に目指すことを第一に、今までにない薬局のモデルになっていければと思います。実際、ボランチのサポートによって業務の質が担保され、企業としての信頼にもつながっています。薬剤師の職能が再認識されることにもなるため、薬剤師が自分の仕事に誇りをもてるようになっているのではないでしょうか。
お陰様で、在宅業務のノウハウに関する他薬局からのお問い合わせが非常に増えています。当薬局では在宅の事細かな業務を仕組み化しているため、今後はボランチが指南役として重要な任務を果たす可能性もあるかもしれません。
<ボランチの主な役割>
・薬剤師とペアで在宅訪問(独居男性宅などへの訪問もスムーズに)
・コミュニケーションや書類作成などのサポートで薬剤師の負担を軽減
・事前の患者情報の把握により、効率的な在宅訪問のルートを決定
ボランチ(非薬剤師)は今後ますます世の中に必要とされる人材。在宅に限らず外来でも役立つ地域資源と捉え、新たな雇用創出と位置づけている。
【現場の声】ボランチは心強い存在。精神的な負担は半分以下になったと感じます
■ミスの軽減や対応の幅の広がりにより薬局全体の信頼構築につながっています
堀田さん ボランチは増えつづける患者情報を把握するためにも必要な人材ですし、訪問先によっては1人で行くのは気が重いというケースもありますので、隣にいてくれると非常に心強い存在です。
今後さらに在宅業務の重要性が認知されていってほしいという気持ちで取り組んでいますから、非薬剤師の存在意義が確立され、多くの薬剤師が安心して在宅に参加できる環境が整っていけばと願っています。
非薬剤師とペアで業務にのぞめることによるメリットはたくさんあります。2人の方がミスは少なくなりますし、患者理解も深められるので細かい点まで気づくことができます。対応の幅が広がり、質も高まることで薬局全体の信頼感にもつながっていると感じています。また、薬剤師はつい専門用語を使ってしまいがちなのですが、それをさり気なく翻訳して患者さんに伝えてくれるのも有り難いですね。
■確認作業や体制の最適化を常に意識し積極的に頼りにするようにしています
堀田さん 薬剤師の性格にもよるでしょうが、私は仕事を頼むことに抵抗がないですし、1人でカバーできる仕事量に限りがあることも分かっているので、効率化のためにも積極的にお願いしています。必要な場合はダブルチェックを欠かしませんし、ミスが起きても薬局全体の仕組みの問題として改善策を考えるようにしています。
頼んだ仕事にやりがいを感じて取り組んでいる姿を見るとこちらもうれしくなります。開業当初1人で業務にあたっていた頃と比べたら、少なくとも精神的な負担は半減していると言えますね。そのくらい助けられている実感があります。
【現場の声】やりがいと学びに加え資格取得なども見据えてより貢献できる人材へ
■薬局への興味から、自ら当社を見つけ転職。円滑に訪問するためのサポートが主な仕事です
鯨岡さん もともと医療系のSEとして働いていました。以前から薬局業務に興味があったことと、在宅医療という言葉は知っているものの、実際に薬局で何をするのか分からず、ずっと気になっていたこともあり転職しました。まさか私自身も在宅訪問に同行するとは思っていませんでしたが、薬剤師業務のサポートをすることで、患者さんとの関わり方やコミュニケーションの仕方など学ぶことがたくさんあります。
現在の担当業務は、薬剤師の訪問への動向や患者宅を巡回する順番やルートの決定、スケジュール管理などが主です。新規の方だと契約の手続きなどで1時間くらいかかることもあるため、時間配分には細心の注意を払っています。寝たきりの患者さんの場合は、ご自身で玄関が開けられないこともあるため、キーボックスの所在なども含め、患者さん毎の留意事項を把握しておくことも大切な仕事です。
■一つ一つ達成感を得ながら、OTC販売や食生活のサポートなどでも役立てるように
鯨岡さん 暖かい職場環境も魅力ですが、やはり患者さんとの接触の中で顔と名前を覚えてもらえたときは達成感があり、モチベーションも上がります。患者さんは高齢者だけではないので、今後は対応できる年齢の幅を広げていきたいですね。また、登録販売者の資格を取得し、OTC医薬品の充実という部分でも貢献できる人材になりたいとも考えています。食べる楽しみを忘れないでいられるよう食生活の面でもサポートできるようになれたら理想的ですね。
出典:株式会社ネクスウェイ「医療情報おまとめ便サービス」特集2019年12月号
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