インタビュー 公開日:2024.12.13 インタビュー

 

薬剤師・薬局の仕事は、一般の利用者の立場からは分かりにくい部分も多いかもしれません。薬剤師・薬局に関する素朴な疑問について、薬剤師さんに詳しく解説してもらいました!

 

「薬剤師」と「登録販売者」の違いとは?

 

取り扱える医薬品は違うけれど、地域住民の健康を守る同じ薬局スタッフです

ドラッグストアで「登録販売者」の名札を付けた店員さんを多く見かけるようになりました。私がよく行くドラッグストアには薬剤師はおらず、相談できるのは登録販売者だけです。地域によっては、そういう店舗も多いのではないでしょうか。

 

登録販売者は、2006年の薬事法改正(施行は2009年)に伴い創設された資格です。従来、医薬品販売時の情報提供は薬剤師のみの仕事でしたが、「薬剤師不在の時間がある」「重大な健康被害リスクがある医薬品だけでなく、比較的リスクが低い医薬品についても、丁寧な情報提供が求められている」といった指摘がなされてきました。こうした課題をカバーする存在として、登録販売者が生まれたわけです。

 

参照:医薬品販売制度の変遷|厚生労働省

 

登録販売者は、各都道府県において実施される「登録販売者試験」に合格し、販売従事登録を行えば、一定の医薬品販売に従事することができます(以前は受験要件として学歴や実務経験が求められましたが、今はなくなっています)。登録販売者と薬剤師には、医薬品の販売に関して次のような違いがあります。

 

● 薬剤師:医療用医薬品・一般用医薬品を取り扱える
● 登録販売者:第2類・第3類の一般用医薬品を取り扱える

 

医薬品を大きく分けると、医師が処方する「医療用医薬品」と、処方がいらない「一般用医薬品」があります。薬剤師はこの両方を扱えますが、登録販売者が扱えるのは一般用医薬品の中の「第2類」と「第3類」のみです。

 

なお、「第1類」は、使用した場合に、まれに日常生活に支障を来す健康被害(入院相当以上)を生じるおそれがあり、使用に関し特に注意が必要な成分で、薬剤師でなければ販売できません。

 

 

取り扱える医薬品に限りがあるので、登録販売者としての勤務先はドラッグストアがメインになります。ただ、ドラッグストアでの薬剤師と登録販売者の仕事内容に大きな違いはありません。ドラッグストアでの仕事は、接客や売り場づくり、在庫管理など多方面にわたっていますが、これらは通常、薬剤師も登録販売者も同じように担当します。

 

もともと薬剤師のみが扱える第1類医薬品の品数は多くありません。その売上のために薬剤師を雇用してもコストに見合わないという理由で、先に述べたように登録販売者のみで営業している店舗が増えています。登録販売者がいれば、ドラッグストアなどの小売業では十分に営業が成り立つということなのでしょう。

 

国民医療費が増大する中、セルフメディケーションの重要性はますます高まり、薬局や薬局従事者に求められる役割も変化しています。薬剤師と登録販売者では取り扱える医薬品の範囲こそ違うものの、店舗利用者の不調を改善したい、健康で過ごす手助けをしたいという気持ちは同じです。継続的に研修を受けて、知識のアップデートにも抜かりありません。薬のことで疑問や不安なことがあったら、薬剤師だけでなく、登録販売者にも相談してみてください。

 
参照:「登録販売者に対する研修の実施要領」の一部改正について|厚生労働省

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執筆/藤野紗衣(ふじの さえ)

東北大学薬学部卒業後、ドラッグストアや精神科病院、一般病院に勤務。現在はライターとして医療系編集プロダクション・ナレッジリングのメンバー。専門知識を一般の方に分かりやすく伝える、薬剤師をはじめ働く人を支えることを念頭に、医療関連のコラムや解説記事、取材記事の制作に携わっている。
ウェブサイト:https://www.knowledge-ring.jp/