インタビュー 公開日:2025.12.12 インタビュー

 

薬剤師・薬局の仕事は、一般の利用者の立場からは分かりにくい部分も多いかもしれません。薬剤師・薬局に関する素朴な疑問について、薬剤師さんに詳しく解説してもらいました!

 

病院と薬局はなぜ別々に分かれているの?

 

医師と薬剤師が専門業務を分担することで、適切かつ安全な医療を全国民へ効率的に届けるためです!

病院と薬局が別々の場所に分かれている仕組みは、「医薬分業」と呼ばれています。医薬分業の根本にあるのは、薬を処方する者(医師)と薬を渡す者(薬剤師)を分けることで、医療の安全性を高めようという考え方です。その起源は古く、一説では神聖ローマ帝国のフリードリヒII世が毒殺を怖れ、自身の主治医が処方した薬を別の者にチェックさせたことが始まりだとされています。

 

参考:医薬分業とは|日本薬剤師会

 

日本で医薬分業が進められている最大のメリットは、医師と薬剤師それぞれが専門の分野で業務を分担できる点にあります。医師は患者さんの診察と診断、治療方針の決定に専念します。そして、薬の専門家である薬剤師が、医師による処方内容が適切かどうかを確認(処方鑑査)した上で薬を用意し、患者さんに渡します。それぞれの専門家が二重でチェックすることにより、薬物療法の有効性・安全性が向上するのです。

 

例えば、薬局では以下の確認を行っています。

 

● 重複投薬の確認:複数の医療機関から、同じような効能の薬が重複して処方されていないか。
● 相互作用の確認:一緒に飲むと効果が強まったり、逆に弱まったり、あるいは副作用が出やすくなったりする薬の組み合わせ(飲み合わせ)がないか。

 

また、院外処方箋が発行されることで、患者さん自身が「どの病院で、どんな薬が、どれくらいの期間処方されたのか」を知る機会にもなります。

 

参考:平成23年版厚生労働白書 資料編 I 制度の概要及び基礎統計 2 保健医療 (4) 医薬品等 医薬分業|厚生労働省

 

一方、病院やクリニックの中にある薬局で、診察後にそのまま薬を受け取る仕組みもあり、「院内処方」と呼ばれています。患者さんにとっては、診察を受けた医療機関内で薬の受け取りまで完結するため、「楽である」ことがメリットです。また、一般的に「薬代が安くなる傾向がある」とも言われています。

 

外部の調剤薬局で薬を受け取る「院外処方」の場合、院内処方と比べると、移動の手間や待ち時間が余計にかかるとは言えるでしょう。しかし、こうしたコストを払ってでも医薬分業を成立させることで、患者さんの安全確保や、長期的には薬剤費の適正化につながっているのです。

 

参考:医薬分業とは|日本薬剤師会

 

医薬分業は、1997年(平成9年)に当時の厚生省が37のモデル国立病院に対して完全分業(院外処方箋受取率70%以上)を指示したことを契機として、急激に進みました。国の統計によれば、2024年(令和6年)時点で、院外処方率は81.4%に達しています

 

参考:令和6(2024)年社会医療診療行為別統計の概況(p.10)|厚生労働省

 

医薬分業が一般的になる中で、「A病院の薬はA薬局で」「Bクリニックの薬はB薬局で」というように、受診する医療機関ごとに別々の調剤薬局を使っている患者さんもいるかもしれません。しかし、医薬分業のメリットを最大限に生かすためには、「かかりつけ薬局」を1つに決めることが大切です。

 

かかりつけ薬局を決めておけば、複数の医療機関で処方された薬の情報をすべて一元管理してもらえ、重複投薬や相互作用のチェックがより確実になります。市販薬やサプリメントとの飲み合わせについても相談できます。薬局を選ぶ基準は人それぞれですが、例えば「自宅に近いところ」「相談しやすい薬剤師さんがいるところ」といった基準で選んでみてはいかがでしょうか。

 

参考:医薬分業のおはなし|北海道薬剤師会公式サイト

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執筆/藤野紗衣(ふじの さえ)

東北大学薬学部卒業後、ドラッグストアや精神科病院、一般病院に勤務。現在はライターとして医療系編集プロダクション・ナレッジリングのメンバー。専門知識を一般の方に分かりやすく伝える、薬剤師をはじめ働く人を支えることを念頭に、医療関連のコラムや解説記事、取材記事の制作に携わっている。
ウェブサイト:https://www.knowledge-ring.jp/