リフィル処方導入に追い風か‐厚労省、検討会などで提言相次ぐ
一定の期間内であれば繰り返し利用できるリフィル処方箋の導入に向けた追い風がにわかに強まってきている。4月に厚生労働省の「新たな医療のあり方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会」がまとめた報告書では、薬剤師に対してリフィル処方への対応を可能とするよう検討すべきと提言。5月には、経済財政諮問会議の場で、塩崎恭久厚労相が調剤報酬の抜本的な見直しを進め、重複投与の防止や医療費削減に貢献するためにリフィル処方の推進を検討する方針を明らかにした。6月9日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)でもリフィル処方の推進が盛り込まれた。ただ、関係者の間では「リフィルはまだ難しいだろう」などと否定的な見方も少なくないことから、今後調剤報酬改定の議論の場でどう取り扱われるのか大きな関心が集まりそうだ。
ビジョン検討会の報告書では、医療従事者の生産性と付加価値を向上させる上で、薬剤師の専門性や知見は極めて重要と指摘し、これまで以上にその能力を発揮することが期待されると強調。今後は、人材不足に対応できる効率的で生産性の高い業務にシフトしていくため、薬学6年制教育で培った専門性を生かした調剤主体の業務構造からの変革を提言した。
その上で、一定期間内であれば繰り返し利用可能となる「リフィル処方」の導入に言及。あらかじめ医師から指示されている場合に、医師との連携によって薬剤師等がリフィル処方に対応できるよう検討すべきと明記した。さらに、調剤業務についても機械化、オートメーション化できる部分については効率化を進めるとし、処方箋40枚につき薬剤師1人の配置など、処方箋の枚数に応じた薬剤師の配置基準を見直すよう迫ると共に、欧米で主流の「箱出し調剤」の有用性を検証し、移行していくべきと踏み込んだ。医師などの働き方をめぐる報告書で、薬剤師に関する記載がこれだけ盛り込まれることは異例で、その内容もリフィル処方の検討や配置基準の見直しなど、これまでにない踏み込んだ内容が並んだ。
“かかりつけ機能”強化へ‐塩崎厚労相「調剤報酬、抜本的見直しを」
報告書に呼応するように、塩崎厚労相は5月の諮問会議の場で、調剤報酬の抜本的な見直しを進め、患者に付加価値のある薬局・薬剤師業務に評価をシフトさせる考えを表明した上で、重複投与の防止や医療費削減に貢献するため、医師の指示に基づくリフィル処方の推進を検討する方針を明らかにした。
塩崎厚労相は、多くの薬局が薬の一元管理や副作用・効果の継続的な確認、気軽な健康相談といった求められている機能を十分に果たせていないと指摘。調剤報酬の抜本的な見直しを進めることにより、患者にとって付加価値のある薬局・薬剤師業務を評価していく方向にシフトさせ、患者本位の医薬分業を実現する考えを表明。その上で、重複投薬の防止やICTを活用した服薬情報の情報共有といった“かかりつけ機能”の強化に向け、長期投薬による副作用を早期に発見したり、残薬の発生を防ぐため、医師の指示のもとで処方箋を繰り返し使用できるようにする「リフィル処方」制度の推進を検討していく方針を明言した。
同会議の民間議員からも、調剤報酬について門前薬局、門内薬局の評価見直しを求められる一方で、かかりつけ薬局の機能強化を促す中で、重複投薬の是正やリフィル処方箋による残薬解消など対人サービスを重視した調剤を推進すべきとの意見が出た。国の財政政策を検討する会議の場でも、処方箋依存から服薬管理への移行を進める手段の一つとして、リフィル処方を位置づけようとしていた。
諮問会議が示した骨太方針の素案には、調剤報酬に関して薬の調製など対物業務の評価を引き下げると共に、在宅訪問や残薬解消など対人業務を重視した評価の検討を記載。かかりつけ薬剤師・薬局や健康サポート薬局の機能を果たす取り組みに加え、リフィル処方の推進が盛り込まれた。
調剤報酬については、薬の調製などの対物業務に関する評価を引き下げると共に、在宅訪問や残薬解消などの対人業務を重視した評価について、薬局の機能分化のあり方を含め検討するとした。
また、敷地内薬局や門前薬局など、様々な形態の保険薬局が実際に果たしている機能を精査し、それに応じた評価をさらに進める方針を提示。薬剤の適正使用に向け、医師の指示に基づくリフィル処方の推進も明記。セルフメディケーションを進め、地域住民に身近な存在の健康サポート薬局の取り組み促進も打ち出した。骨太方針でリフィル処方の推進は素案から変わらず明記され、検討することが確定した。
ただ、リフィル処方の検討に当たって課題は山積している。関係者からは「分割調剤の実績も少ないのにいきなりは難しいだろう」などの声も出ており、どう軟着陸させるかは未知数だ。
出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
リフィル処方箋(一定の期間内であれば繰り返し利用できる)の導入に向けた動きが本格化しています。塩崎厚生労働大臣はその他にもかかりつけ機能の強化など、患者に付加価値のある薬局・薬剤師業務に評価をシフトさせる考えを表明しており、調剤報酬の見直しが進められていく見込みです。