疑義照会に薬剤師が代行回答‐医師の合意得てプロトコル策定
高知市の細木病院(317床)は、院内で策定したプロトコルに基づき、薬局薬剤師からの疑義照会に対して病院薬剤師が医師に代わって回答する運用を今年4月から開始した。9項目の疑義内容について、外来診療を担当する医師ごとに代行回答可能な項目を設定。医師の事前合意のもと、医師への連絡を省略して病院薬剤師が回答している。疑義照会の約半数に対して病院薬剤師が代行で回答するようになり、医師の負担軽減、薬局での患者の待ち時間短縮につながった。
対象とした疑義照会の内容は、[1]入力誤りなどの不適切な用法用量[2]入力誤りなどの不適切な処方日数[3]残薬調整等による処方日数の短縮[4]処方日数の延長[5]調剤方法の変更[6]外用薬の使用部位[7]院外処方箋の使用期間[8]不要と思われるコメントの削除[9]その他――の9項目。
外来診療を担当する全医師29人を対象に、9項目のうち病院薬剤師が代行回答可能な項目をそれぞれ調べた上で、それらを医師別にまとめた「院外処方における疑義照会不要の指示一覧」を作成。具体的な手順を文章にまとめ、医師の合意を得た上で、疑義照会対応プロトコルとして今年4月から運用を開始した。
大半の医師はほとんどの項目で代行回答を承認した。「処方日数の短縮」や「外用薬の使用部位」については28人の医師が可能とし、最も少なかった「処方日数の延長」でも23人の医師から合意を得た。
同院は、薬局薬剤師からの疑義照会をFAXで受け、病院薬剤師が中継して医師に連絡を取り、その回答を薬局にFAXで送信する仕組みを導入している。運用開始後、同院の薬剤師は、疑義照会対応プロトコルに定めた疑義に該当する場合には、医師への連絡を省略し、電子カルテなどを確認した上で、医師に同意を得た範囲で薬局に回答するようになった。処方変更があった場合には薬剤師が電子カルテの修正を行い、医師がそれを承認する。
代行回答可能な疑義でも薬剤師が判断できないものや、併用禁忌、相互作用、副作用、重複処方などに関する疑義については、医師に連絡し対応している。
今年4~6月の3カ月間に同院が発行した院外処方箋は1万6573枚。疑義照会件数1075件のうち、薬剤師が代行回答した件数は483件だった。
同院はケアミックス型の地域基幹病院。薬剤師数は10人。外来患者数は1日約360人で、院外処方箋発行率は98%に達する。
同院では以前から、漢方薬の食後服用処方への疑義照会など、医師の口頭指示によって病院薬剤師にその対応が委ねられる場合があった。また、病院薬剤師が中継した疑義照会に対して、その提案通りに医師が対応を承認することも少なくなかった。これらの背景から、同院医療技術部長・薬剤室顧問の田中照夫氏は「疑義照会の対応をなんとか効率化できないかと考えていた」という。
薬局からの疑義照会の一部を不要とする京都大学病院の取り組みを知って、具体化に着手。疑義照会を不要にすることは、行政側の指導を招く可能性があるとして見送り、今回の体制を整備した。2010年に発出された厚生労働省医政局長通知「医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進について」に基づき、運用手順を文書化して院内で合意を取得し、幅広い項目を対象に運用を開始した。
現在まで特にトラブルは起こっていない。医師に連絡する業務が減ったため、病院薬剤師の精神的な負担は軽減した。薬剤師の責任は増すが、医師からの評価は高く、回答が早くなることによって患者の待ち時間短縮につながったと薬局からも喜ばれているという。
今後は、残薬調整のための処方薬剤の削除についても、医師の事前合意に基づいて薬剤師が代行する方法を医師と協議していく。
出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
病院薬剤師、医師にとっての疑義照会の負担を減らす体制を整えた病院のレポート記事です。薬剤師の責任は増すものの、医師からの評価は高く、患者の待ち時間も短縮されたと伝えられています。