薬局で会話、薬説明が中心‐患者生活背景の把握少なく
電通が意識調査
薬剤師は地域包括ケアシステムの担い手として高い意識を持ちながら、薬局での会話は薬の説明などが中心で、患者の食生活や運動習慣など生活背景まで把握できているケースは少ないことが、大手広告代理店の電通が初めて行った意識調査で明らかになった。4月の調剤報酬改定で導入された“かかりつけ薬剤師”制度の説明は、個人薬局よりチェーン薬局の方が積極的に行っていたほか、地域包括ケアに向け、ICTの活用や24時間対応を高い障壁と考えていることも分かった。
調査は、9月30日から10月5日にかけて、薬剤師資格を持ち、現在正社員で薬剤師として勤務している327人を対象に、インターネット上で実施した。
地域包括ケアシステムが構築される時代を見据え、地域医療の担い手としての意識と取り組み状況を尋ねたところ、「職場として積極的に取り組もうとしている」との回答が73.1%、「自分自身として積極的に取り組もうとしている」との回答が65.7%と、約7割が高い意識を持っていたものの、実際にしっかり取り組めているとの回答は4割台と半数を割り、全体として不十分な状況が浮かび上がった。
薬局で患者と会話する内容を聞いたところ、「処方した薬の効能効果、副作用、用法・用量の説明」が個人薬局で96.2%、チェーン薬局で95.4%と最も多く、次いで副作用発現の有無の確認、何の疾患で処方されているかの確認、服薬アドヒアランスや残薬についての聞き取りなど、処方された薬に関する会話が大半を占め、全体的に薬局薬剤師は会話の頻度が多いことが分かった。
一方、プライベートな話題について会話をしている薬剤師はチェーン薬局で23.1%だったのに対し、個人薬局で35.2%とやや多かったものの、患者の食生活や運動習慣の把握、患者家族の病歴など、地域医療の担い手として必要とされる患者の生活背景まで把握できているケースは、1~2割台と少なかった。
かかりつけ薬剤師制度の説明について見ると、個人薬局では9.5%だったのに対し、チェーン薬局では17.6%と積極的に説明していることがうかがえた。
また、地域包括ケア時代に向けた取り組みを進めようとしたときに障壁となることを聞くと、電子お薬手帳などICTの活用が最も多く、次いで24時間対応、在宅業務の体制や患者対応など在宅業務を高い障壁と考えていることが分かった。今後、取り組もうとしていることについては、「コミュニケーション技術・ホスピタリティの向上」との回答が最も多かった。
さらに、薬剤師から見て業務に必要な情報を聞いたところ、新薬と後発品の新発売情報を除き、多くの情報については「必要だが不足している」と認識していることが明らかになった。特に地域医療、地域包括ケア、医療連携についての情報や医療政策、キャリアプランニング、薬局経営の情報について、必要だが不足していると考えていた。
出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
大手広告代理店の電通が初めて行った意識調査。薬局に勤務する薬剤師は患者との会話は薬の説明などが中心で、食生活や運動習慣など生活背景まで把握できているケースは少ないことが明らかになりました。また、かかりつけ薬剤師制度の説明は個人薬局よりもチェーン薬局の方が積極的に行っていたという結果が出ています。