製薬企業のAMR対策、塩野義が唯一ランクイン‐ジェネリック企業に対策促す
医薬品アクセス財団が調査
抗菌薬開発・製造を積極的に行う製薬企業30社を対象に薬剤耐性菌(AMR)への取り組みを比較したところ、研究開発型企業では英グラクソ・スミスクライン(GSK)と米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)がトップにランクインされたことが、医薬品アクセス財団が実施した調査で明らかになった。日本の製薬企業では、薬剤耐性に対する取り組みで比較対象基準を満たしたのは塩野義製薬のみで、抗生物質の販売数量と賞与を完全に切り離し、営業担当者による抗生物質の過剰な売り込みを奨励するインセンティブを廃止していた。また、調査では、薬剤耐性の拡大を抑制する上で、市販されている抗生物質の大半を製造するジェネリック医薬品メーカーの重要性を強調し、AMR対策を求めた。
抗生物質の適正使用をめぐっては、耐性を獲得する細菌が増え、抗生物質の有効性が急速に低下することが世界的に問題化している。今回の調査では、製薬企業を対象に、新たな抗菌薬の研究・開発、抗生物質の製造に関する責任方針、抗菌薬のアクセスと適正使用に関するアプローチについて、複数の情報源から情報を収集し、比較分析した。
グローバル製薬企業8社の中では、GSKとJ&Jがトップにランクインし、GSKはAMRの最優先課題である病原体向けも含め、開発パイプラインに多くの抗菌薬を持っていること、J&Jは結核に特化し、多剤耐性結核を適応症とする画期的新薬へのアクセスに関して、国家結核プログラムを通じて厳重に管理していることが評価された。
これらの企業に続き、同点でランクされたのが、スイスのノバルティス、米ファイザー、仏サノフィの3社。ファイザーは特に優れたスチュワードシップ対策を導入しており、サノフィは研究開発で最も高く評価された。ノバルティスはほとんどの分野で一貫して安定した評価を受けた。
日本の製薬企業では、塩野義だけが唯一、薬剤耐性ベンチマークの対象基準を満たし、他の研究開発型大手製薬と並んで評価された。抗真菌薬を開発する唯一の製薬企業であり、抗生物質の販売数量と賞与を完全に切り離し、営業担当者による抗生物質の過剰な売り込みを奨励するインセンティブを廃止していた。
ジェネリック医薬品企業も、現在販売されている抗生物質の大半を占めているため、薬剤耐性の拡大を抑制する上で重要な役割を担っているが、他の企業群に比べ、透明性が相対的に低いのが課題となっている。今回、評価対象となった10社のうち、トップのマイランは、有効成分や他の製剤のサプライヤーに適用している公平な価格アプローチや環境リスク管理戦略など、複数の分野で高い成果を挙げた。シプラが2位、フレゼニウス・カービが3位となった。
また、抗菌薬の研究開発では、世界保健機関や米国疾病管理センターによりAMRの優先度が高いと見られる重要病原体を標的とする抗生物質について、28件が開発後期段階にある一方、上市後のアクセスと適正使用に関する計画が整っている候補薬剤は2件にとどまると報告した。
出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
医薬品アクセス財団が、製薬企業の薬剤耐性菌(AMR)への取り組みを調査し、比較しました。
研究開発型企業では英グラクソ・スミスクライン(GSK)と米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)がトップ。
日本の製薬企業で薬剤耐性に対する取り組みで比較対象基準を満たしたのは、塩野義製薬のみでした。