速やかな保険適用を要望‐患者申出療養制度、患者団体から意見聴取
中央社会医療保険協議会は9日の総会で、患者からの要望を起点に、最先端の医療技術や国内未承認の医薬品・医療機器等を用いた保険外の診療と保険診療との併用を可能にする「患者申出療養制度」について、全国がん患者団体連合会と日本難病・疾病団体協議会から意見聴取した。両団体とも保険外診療の併用という形で、国内未承認の医薬品や医療技術が保険収載に至ることなくとどまれば、患者負担が重くなるとの懸念を示し、制度で認められ、有効性・安全性が確認されたものについては、速やかに保険収載することを要望した。
難病協議会は、先進医療の総医療費のうち、先進医療部分が7割超を占めており、増加傾向にあるとの現状を示した。その上で、保険収載に至ることなくとどまる医療について、「一部の富裕層にしか適用されない」とし、制度の不公平さを指摘した。
この点については、全がん連も、同制度の導入によって有効性と安全性が示された新規治療薬が保険適用されなかったり、遅れたりすれば、「患者や家族の経済力によって受けられる治療に大きな格差が生まれることが危惧される」としている。
全がん連は、薬事承認と保険適用が認められるまでの過渡的かつ例外的な制度とし、有効性と安全性が示された治療薬などは、患者申出療養により保険診療との併用が認められている状態にとどめず、速やかに薬事承認と保険適用を認めることを要望した。
難病協議会も「速やかに薬事承認、保険収載に道を開くための体制整備こそ急務」と訴え、審議が尽くせず患者家族からの危惧や懸念が拭えないうちは、制度の施行を延期するよう求めた。
調剤報酬めぐり両側が議論
この日の総会では、調剤医療費の伸びをめぐって、診療、支払いの両側が議論した。
厚労省が2014年度の概算医療費について説明した後、日本医師会の中川俊男副会長が調剤医療費の伸びについて指摘。
中川氏は、「直近10年間の調剤関連技術料を見ると、薬局調剤が累計で6685億円増えている。それに対して医科の院内はマイナス963億円」とのデータを示し、技術料が占める割合に応じて各科改定率に差を設け、ここ数回の診療報酬改定で用いられた、医科、歯科、調剤「1:1.1:0.3」の財源配分割合について、「実感としては0.3以上になるのではという印象が拭えない。次期改定の重要な論点なので機会があれば中医協にデータを提出したい」と述べた。
健康保険組合連合会の白川修二副会長は、調剤医療費の伸びの要因について、「処方箋の枚数や、処方する薬剤数が増えていることも影響している。簡単に言うと、調剤医療費の伸びは医師も関係して」との認識を示した。
日本薬剤師会の安部好弘常務理事は、処方箋1枚当たりの調剤医療費の内訳と構成割合を見ると、技術料は伸びておらず、処方箋1枚当たりの薬剤料の伸びの要因を分析すると、投薬日数のみが増えている一方で、1種類1日当たりの薬剤料は伸びていないことに触れ、「次々と高額な薬剤が出てきている中で、後発品の使用促進などで1種類1日当たりの薬剤料を抑えている。こうしたことを冷静に分析した上での議論をお願いしたい」と理解を求めた。
出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
中央社会医療保険協議会が保険外の診療と保険診療との併用を可能にする「患者申出療養制度」について、患者団体からのヒアリングを行いました。また、同会では調剤医療費の伸びについても議論が交わされています。