医療費

1年生存延長に500万円以上で値下げ‐新薬の価格、既存薬と比較

薬+読 編集部からのコメント

厚生労働省は、医薬品の費用対効果評価について、国内で行った支払意思額に関する調査と英国の評価基準を踏まえ、完全に健康な状態で1年間生存期間を延ばすため必要な費用として、既存薬と比べて500万円以上かかる場合は薬価を引き下げる案を示しました。

全国健康保険協会理事の吉森委員は、保険財政を揺るがしかねない高額の新薬の存在が背景にあることを強調しました。

厚生労働省は25日、抗癌剤「オプジーボ」など13品目に試行導入する費用対効果評価について、完全に健康な状態で1年間生存期間を延ばすため必要な費用として、既存薬と比べて500万円以上かかる場合は薬価を引き下げる案を、中央社会保険医療協議会費用対効果評価部会に示した。7年前に実施された国民の支払意思額に関する調査では、半数が支払ってもいいと回答した金額の中央値が485万円だったことなどを踏まえて設定した。ただ、対照品目に比べて効果が高く、費用も減る品目は一定条件で引き上げを含めた価格調整を行う方針が示されたものの、委員からの反発もあり議論が紛糾。次回以降、引き続き議論することとした。


同部会では、医薬品の費用対効果評価について、増分費用効果比(ICER)に基づいて価格調整を行うこととし、価格調整を行わない領域、ICERに応じて価格調整を行う領域、一定の引き下げ幅で価格調整を行う領域の3領域を設定。過去に行われた国内の支払意思額に関する調査と英国の評価基準を踏まえ、既存薬に対して費用、効果が共に増加する場合、完全に健康な状態で1年間生存期間を延ばすため必要な費用として、既存薬と比べて500万円を超える場合に薬価を引き下げる案を示した。既存薬と比べて1000万円を超える場合は、次回以降に議論する価格調整幅の上限を用いた価格調整を行うとした。

 

また、既存薬と比べて効果が高くなると同時に、費用が減る品目については、費用対効果の観点から活用が望ましいとして、▽比較薬より効果が高いことが臨床試験で示されている▽比較薬と比べて異なる品目か基本構造や作用原理が異なるなど一般的な改良範囲を超えた品目――の一定条件を満たすものについては、価格調整に当たって引き上げを含めた配慮を行う方針を提示した。

 

ただ、支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は、「価格を上げることはないと合意したはず」と異論を述べ、診療側の松本純一委員(日本医師会常任理事)も「主張は理解する」と同意した。

 

これに対して、厚労省は「費用対効果評価なので、必ずしも価格引き下げを前提としていない」と主旨を説明。宮近清文委員(日本経済団体連合会社会保障委員会医療・介護改革部会長代理)は、幸野委員に同意しつつ「異なるアプローチも必要ではないか。医療コストが削減し、患者メリットが大きく、イノベーティブな品目であればインセンティブを付与する仕組みはあっていい」との考えを示し、診療側の万代恭嗣委員(日本病院会副会長)も「いろいろな方策を考えるという意味では、厚労省の案はあり得る」と理解を示した。

 

吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)は、費用対効果評価が保険財政に影響を与える新薬が登場してきたことが背景にあると強調し、「まずは価格を引き下げる方向性だろう」との考えを示した。

 

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出典:薬事日報

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